鬼に憑かれた青年のお話
こんにちは。
たつみはやとです。
今回は私の体験談とフィクションを交えたストーリーをお話ししていきます。(体験談をもとに書いておりますが、登場人物設定などはフィクションです。)
ぜひ最後まで読んでみてください。
とあるところに19歳の青年がいました。
彼は美しく、交友関係にも恵まれていました。
しかし、肝心の彼自身はそれに気がついていませんでした。
いつも心の中で(なんて自分はダメなんだろう、なんで醜いんだろう)と悩んでいました。
彼はその悩みを解消するために自分を受け入れる努力もしていましたが、根本的解決にはなりませんでした。
なぜなら、彼が目を向けるべきは自分で自分を受け入れることではなく、周りからの称賛を受け入れることだったからです。
しかし、彼はそれに気が付きませんでした。
彼は自分を受け入れるために未来へと進んでいきましたが、ある日精神を崩してしまいます。
そして、彼は働けなくなり家に籠るようになりました。
そんな生活が少し続くと弱りきった彼の心の中にとある声が聞こえました。
👹(お前は我々に支配された)
次の瞬間、彼の心の中に白い鬼のような顔が浮かび上がりました。
それからというもの彼はその声に苦しまされることになります。
👹(君に非常によく似た人物が居るんだが、その人物のことを知りたくないかい?)
👹(君はイエスキリストを信じるかね?)
そのように彼を誘惑するようなことばかりを鬼が言ってくるのです。
段々と彼は憔悴していきました。
そして彼は、自分の中の鬼にとあることをお願いしてしまいます。
👨「おい鬼、A子(彼の好きな人)を俺のいうことをなんでも聞くように俺に惚れさせろ」
それを聞いた鬼は満面の笑みで呟きました。
👹(クズがぁ)と。
次の瞬間彼の脳裏に「死にたい!!」と叫んでいるA子の映像が流れました。
ことのまずさに気づいた彼はすぐさま願いを取り消しました。
が、時すでに遅し。
鬼はつぶやきました。
👹(お前は明日の朝鏡を見て後悔することになる)と。
彼はその言葉の意味がわかりませんでしたが、次の日鏡を見にいきました。
すると、そこに映っていたのは昨日よりも美しさを失った外見でした。
彼はそこで初めて、自分は本当に取り憑かれたんだということを自覚し自分のしたことを恥じました。
そこから彼は常に不安に苛まされます。
それから少し経った日、彼は不安に耐えられたくなり再び鬼にお願いをします。
👨「俺の外見はこの先元に戻るのかを教えてくれ!!」
それを聞いた鬼はこう言いました。
👹(今我慢すれば容姿は元に戻り、それどころかさらに美しくなるぞ)
それを知った彼は喜びましたが、何かを察します。
👨「まさか…また容姿は」
👹(当然だろう)
すぐさま鏡を見にいくと、彼はさらに美しさを失っていました。
比較的短めだった首がさらに短くなり、顎は突き出て、頬には余計な皺が刻まれていました。
彼は失望しました。
彼の1番の精神の支えだった(外見、自信、自分らしさ)を一度に失ってしまったのです。
さて、青年は二度鬼の罠にハマり自身の強みを失ってしまいます。
しかし本当に辛いのはそこからでした。
鬼は青年の行動を支配し始めます。
青年が好きなご飯を食べようとすると、
👹(それ以上飯を食えばまたお前の顔を変える)
と、脅しをかけます。
青年が絵を描いたり、読書をしようとすると、
👹(それ以上やったらお前の顔を変える)
と、不安を煽ってきます。
なので、青年はどんどんと何もできなくなっていきました。
それどころか、鬼は青年の人間性すら否定し始めました。
👹(お前は自分が善人だと思って生きてきただろうがそれは違うということが証明されたな)
👹(お前はもうなんの取り柄もないクズだ)
青年が何かを頑張ろうと意気込んでいると、
👹(その顔で何をやっても無駄でしょ?)
と青年の失敗を持ち出しやる気を削ぎます。
ある日、真冬に青年が風呂場でシャワーを浴びていると鬼はこう囁きました。
👹(シャワーの温度をいちばん低くして、冷水を浴びろ)
👨「そんなことはできない、こんな季節にそんなことをしたら死んでしまう」
👹(もしやらないなら、お前の顔を奪う)
青年はその言葉に怯え、渋々冷水を浴び始めます。
短時間でとてつもない苦痛が体を襲い、青年は風呂場を出ようとしました。 が、
👹(今やめたら、顔を奪うぞ)
その言葉に怯み、青年はその後もずっと冷水を浴びていました。
結局母親が帰ってくるまでの数時間の間、ずっと冷水を浴びていたため彼の体には相当の負担がかかっていました。
その姿を見た青年の母親は彼を入院させます。
しかし、入院先でも鬼の要求は変わりませんでした。
👹(トイレの水をすくって浴びろ)
👨「そんなこと看護師さん達に迷惑をかける。できるわけない!」
👹(それ以上口答えしたら顔を変えるぞ)
彼は看護師さんの目を盗んではひたすら自室のトイレの水を浴び続けていました。
長い時は4時間もの間冷水を浴び続けていました。
が、ある時鬼からの冷水浴びの要求はぴたりと止まりました。
それから数ヶ月青年は回復していったのですが、再び鬼からの要求が始まりました。
👹(飯を一切食べるな)
👨「少しくらいは良いだろ?( ; ; )」
👹(は?何言ってるんだ。一切食べるなと我々は言ったんだ。
もし少しでも食べたなら、お前の顔を奪わせてもらうぞ)
青年はとうとう固形物を口にできなくなりました。
1ヶ月間、栄養剤と水分だけの生活が続きます。
家族は必死に彼に食べ物を与えても、彼は鬼の要求に従うしかなかったのです。
そんな青年を見た家族は、青年を助けようととある神社に連れていきます。
その神社に着いた途端、鬼達が騒ぎ始めました。
👹(お前、今すぐ帰らないとタダじゃおかねぇぞ)
👹(こいつに希望を持たせるな なんとしても我々がこいつを支配しなくては)
しかし、青年はそんな鬼達の声を無視しました。
すると、その神社の中で青年は何者かの声を聞きました。
❓「あとは全て託すよ」
そして、青年は誰かに肩を叩かれたような感触を感じました。
後ろを振り返ってもそこには誰もいませんでした。
その体験は彼にとって特別なものになりました。
青年にとってはじめて神の存在を感じられた体験だったからです。
そこから徐々に青年は自信を取り戻し始めます。
そして、青年の信念は
優れた存在になることよりも善き存在になることのが大事
というものに変わりはじめます。
その後も青年は約4ヶ月間固形物を一切口にせず、体重は169センチ39キロまで減りました。
青年の周りの人たちはもう諦めかけていました。
しかし、ある日青年は急にご飯を食べられるようになります。
そう、鬼による行動制限がなくなったのです。
彼は鬼の呪いから解かれました。
(鬼が彼から離れたわけではありませんが)
青年は涙を流しながらご飯を食べました。
そして、そのあと鬼によって青年の行動が制限されることはもうありませんでした。
鬼達の行動制限から解放された彼ですが、喪失感からは抜け出すことができていない状態でした。
彼にとって一番の楽しみだった外に出かけることは一番嫌なことになっていました。
さらに、街を歩けば必ず綺麗な人が目に入ります。
そういう人を見るたびに彼は(俺もあんなことをしなければ今頃…)と自分の中で勝手な妄想を広げて傷ついていました。
外へ出るたびに彼は大事なものを失ったという現実を突きつけられているように感じました。
しかし、幸いだったのは彼がコミュニティに入っていなかったこと。会社にも学校にも習い事にも行っていなかったこと。
もしコミュニティに通っていれば毎日現実を突きつけられることになったでしょう。
それでも引きこもっているとはいえ、生きていれば人と顔を合わせないといけないもの。
入退院生活を繰り返している間家族達は自分に尽力してくれたけど、友人達は変わり果てた自分を見て愛想を尽かすのでは?
友人たちの反応が変わることを彼は一番恐れていました。
しかし、それは彼の妄想でした。
友人たちは彼と笑顔で接し続け、彼のことを気にかけ優しく見守ってくれました。
その中で彼の中の偏った価値観が剥がれていきます。
今まで自分は何かをしなくちゃ自分には価値がないと思っていた。
今、実際に何もできない状況になってしまったけど、周りの人たちは俺を助けようとしてくれてた。
もっと明るい方を見ていれば良かった。
自分特有の良いところを見てやれば良かった。
周りからの善意に気づいていれば良かった。
そんな風に彼は、自分の中の大切なものに気づき始めます。
結局彼にとって大切だったのは、
できない自分を許してやること
ということだったのです。
できないならやらなくて良いのです。
無理にそれをやる必要はないのです。
そこは人を頼れば良いのです。
それを彼はその体験で学んでいきました。
彼にはまだ残っているものがあります。
家族も、友人も、新しい縁も、これからの楽しみも。
過去の経験をどう生かし、次に繋げるか。
それこそがより良い未来のために彼が今できることなのです。
彼は自分の体験を生かし、喪失感で苦しんでいる人たちの助けになりたいという意志のもと、再び夢に向かい始めました。
「貴方の夢を追いかけてください
絶対に諦めないで」
おしまい。
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