在間 ミツル

エッセイスト。身の回り半径3m以内で起きたこと、感じたこと、考えたことを綴ります。 お…

在間 ミツル

エッセイスト。身の回り半径3m以内で起きたこと、感じたこと、考えたことを綴ります。 お気に入り記事は有料で公開(不定期)。申し訳ありませんが、諸事情により2024年4月以降当面コメント返し出来ません。

マガジン

  • 夫と私

    多動、整頓ベタ、デベソ、異常な集中力、の夫とのすっとこどっこいな日常です。

  • My Favorite Works

    私の心に響いた素敵な記事。笑いあり、涙あり、感動あり。忖度なし、下心なし、計算なしで私が読み返したくなる作品ばかりです。

  • クラリネット諸々

    愛するクラリネットとの関わりあれこれを綴りました。

  • 忘れられない先生まとめ

    私の出会った個性的で人間味溢れる先生方の思い出です

  • 関東と関西

    関東に住む関西人の感じた事を綴りました。

最近の記事

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海は必ず凪ぐ

ちょっと前まで、私は夢なんて持っていなかった。この歳で夢を語るなんて、バカげたことだと思っていた。そしてどうやって死にゆくか、いかにこの世に未練なく、きれいさっぱり自らの生きた恥ずかしい痕跡を消すか、そんなことばかり考えていた。 世の中は怖くて厳しいもので、生きることは辛く苦しいもの。他人は先ず警戒し、おそれ、避けるべきもの。そんな風に感じていた。 この世は限りなくグレーで、自分はその中で辛うじて生存を許されている存在、ぼんやりとだが、そんな気がしていた。 上手く行かないこ

    • 土禁?

      毎度毎度愚痴らせてもらっているが、夫の部屋は部屋というより今や物置になっている。この家で一番広く十畳くらいあるのだが、足の踏み場もない。 通販で買ったものの空き箱が転がり、何かわからないもののリモコンが無造作に投げ出され、惜しくもゴミ箱にシュートし損ねた鼻紙が二、三個散っている。その真っただ中に大画面のモニター、両脇にはスピーカー、奥にはピアノ、そして仕事の書類・・・とかなりのカオス状態である。何が夫にとって大切なもので何が要らないものなのか、見当がつかないので困る。 掃除機

      • 近所のお馴染み犬

        我が家がこの家に引っ越してきて早くも三年半ほどになるが、未だにご近所の方々の顔はうろ覚えである。 田舎のように自治会活動が盛んなわけでもないし(なんせ世帯数が半端なく多いから無理なんだろう)、学校に行くような子供もいないから、PTAの繋がりなんかもない。隣は何をする人ぞ、状態でずっとやってきている。 最初は少し寂しいような感じもしたが、慣れると妙な近所づきあいをしなくて良いので非常に楽である。年に一度、自治会費の集金に来て下さる班長さんと喋ったり、顔を合わせた時には挨拶を交わ

        • たかがマーチ、されどマーチ

          吹奏楽コンクールの課題曲が決まった。今年はマーチだ。 『マーチだと楽で良い』などという人もいるが、楽団員みんながみんな、そう思うわけでもない。 特にクラリネット界隈では『マーチかあ、吹きっぱなしでしんどいなあ』という嘆きの声が聞かれる。 マーチと言えば『星条旗よ永遠なれ』とか『ワシントン・ポスト』(二曲ともJ.P.スーザ作曲)とか『双頭の鷲の旗の下に』(J.F.ワーグナー作曲)等の有名な曲がゴマンとある。 あまり音楽を知らないという人でも、何か一曲くらいは知っていると思う。

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          小さな家

          子供の頃の私は、随分ひなびたところに住んでいた。家から数十メートルも歩けば、一キロ半ばかり先にある小学校が見える。視界を遮る建物など全くなく、周りは全て田圃だった。 稲が植えてある時期はダメだが、刈り取った後田起こしをするまでの間は、よく田圃を斜めに突っ切って、学校まで近道をして行ったものだった。 子供でも大勢が踏み荒らすとやっぱり田圃にはよくないらしく、時折学校にお百姓さんから苦情がきて、先生から『田圃を通らずに道を通りなさい』なんて注意を受けることもあった。 のんびりし

          『ゴールデン』ウイーク

          夫は使ったものを全く補充しない人である。 石鹸が少なくなっていようが、シャンプーが空になっていようが、自らが補充するという発想がない。 「ないでー」 とこちらに呼びかけて終了、である。 自分も補充することが出来る、という認識がまるでない。意図的にそうやっているのではなく、そういう思考回路を辿るのが夫にとっては自然で当たり前、なのだ。 恐らくは、小さい頃から母親に『はいはい、お母さんがやってあげようね』と言われ続けてきたからに違いない。一人暮らしをした期間もなく、どうしても自分

          『ゴールデン』ウイーク

          ”アンチ”アンチエイジング

          『アンチエイジング』という言葉が好きになれない。歳を重ねることに対する恐怖を感じるからだと思う。 時間の経過と共に、万人は等しく歳をとり、やがては天に召される。その自然の摂理を抗うことが出来ない、悲しく惨いものと捉えることに抵抗を感じるのだ。 特に美容に関して使われることが多い言葉だが、ある一定程度の年齢になってきた人間(特に女性)は、この言葉を意識しないと、『衰えて汚くなっていくことに無関心な人』と自動的に他者から認識されるような気がする。 他者が自分をどう見ようと勝手なの

          ”アンチ”アンチエイジング

          男同士の話

          若い頃の職場の上司に、Kさんという人がいた。内勤の課長補佐で、仕事の出来る人だった。 根っからのスケベで、今だったら完全にセクハラになるような行為を、しょっちゅう私達女子行員にやっていた。すれ違いざまに『オハヨ』と言いながらお尻をスルっとなでるのである。近づいて来るとみんないつも身を躱すようにしてすれ違うように心がけていた。 なのに憎まれない、不思議な人だった。 見た目は映画『ツインズ』のダニー・デヴィートのよう。小柄で頭がやや薄く、太目でもあった。 しかしそんな外見とは裏

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          男同士の話

          ヒロイン気分に夢中

          子供の頃過剰に制限されていた反動か、この歳になって漫画を読むのにハマっている。スマホでは沢山の少女漫画(という呼び方が今や正しいかどうか?)が読めるので、楽しみに一話ずつ読んでいる。気に入って購入した話もいくつかある。 いい歳をして「漫画に夢中なんです」などと公言するのは憚られるが、面白いものはしょうがない。ストーリー展開が凝ったものや、絵が綺麗なものがお気に入りである。 いくつも読んでいると、自分の好きなストーリーや設定に一定の傾向があることに気付く。 先ずは主人公に『か

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          常に神対応な人々

          「もう、あのお客さんなんなの?腹が立っちゃって」 「わかる~何様よねえ」 「ひっどいよねえ」 仕事を終えた後の更衣室では、こんな会話がしょっちゅう聞かれる。愚痴大会に参加こそしないが、どこのレジも大変だよなあ、と思いつつ、聞くとはなしに聞いている。 腹を立ててもしょうがないとは言うものの、どうしてもつい同僚に二言三言、こぼしたくなってしまうのだろう。気持ちは分からないでもない。 しかし我が店には一箇所だけ、こういった愚痴をほぼこぼさない、まばゆい人の集団が存在する。サービスカ

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          幸せの五本指ソックス

          外反母趾に永らく悩んでいた私は、ここ数年五本指ソックスを愛用している。昔は関心が全くなかったので、どんなデザインや材質のものがあるかなんて知らなかったのだが、驚くくらい豊富な種類があり、買う時にはいつも迷ってしまう。 仕事の時に履くものは酷使することになるので、三足いくらでウチの衣料品売り場で売っている安いものにしている。我々従業員は靴下とパンティストッキングは『必需品』とされており、購入する時に社員証を提示すればお値段に関わらず必ず一割引き、という大変お得なシステムがある。

          幸せの五本指ソックス

          何が不適切か

          職場や趣味の集まりなど、多数の男女が同時に顔を合わせる所では、所謂『不適切な関係』のカップルを見かけることが結構ある。 社会的に許されるか、とか倫理的にどうか、とかは、現在の私は一切気にならない。そのことによって周りに迷惑をかけたり、不快感をまき散らさない限り、ご本人たちが好きになさればいいと思う。泥沼に陥ろうが、血塗られた修羅場を迎えようが、私の知った事ではない。それぐらいお分かりの上でそういう選択をしておられるのだろうから、敢えて批判的なことは言う気もない。 特に不快感も

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          溶ける笑顔

          私の父は厳しい人である。でも温かいところもあるし、実は底抜けにお人好しで優しく、涙もろいところもある。でもそれを表に出すのは物凄く苦手な人である。要するにシャイ、ということだ。 子供時代の私は、父のそういう不器用な優しさを具体的に指摘することは出来なくとも、なんとなく肌で感じてはいた。そしてなんとか世間の人にもわかるくらい、父が表面にその本来の優しさを表してくれないものか、と切実に願っていた。 しかし、『家長たるもの、婦女子にベタベタと甘い顔を見せるものではない』という、な

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          マシュマロはこちら

          良いお天気が続き気候が安定してきた休前日、食品売り場で働いていると、高確率でお客様に置き場所を尋ねられる商品がある。 マシュマロだ。 あの、フワフワした、あんまり個性の強くないお菓子は、普段はそんなに売れない。物凄く美味しいとか健康に良いなどの話は聞いたこともないし、子供が大好きという訳でもない。 なのにこの時期だけ、マシュマロの棚は凄いスピードで空になる。 理由が分からず、永らくどうしてなのだろう、と思っていた。 我が家にはそんな習慣はないので知らなかったのだが、どうも皆さ

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          あるご常連

          昨日の朝、いつものように店の中央通路沿いの棚を掃除していたら、 「おはよう。お久しぶりね」 と後ろから声をかけてくれる人がある。 ここ関東に住んで僅か三年目の私に、『お久しぶり』なんて言われるほどの出会いはまだない筈なんだけど、と思いつつ振り返ると、背の曲がった小柄な老婦人がニコニコしながら立っていた。 暫くお見掛けしていなかった、ご常連である。 「あ、おはようございます。お元気でしたか?」 私も手を止めて笑顔で話しかける。かなり小柄でいらっしゃるので、自然に腰を屈めるような

          私なんか病発症中

          今でも私はしょっちゅう、『私なんか病』にかかってしまう。 私なんかたいしたことない。私なんか○○できない。私なんか取るに足りない存在だ。私なんか魅力がない・・・ こういう、鼻水と一緒にティッシュに包んで、くしゃくしゃに丸めてゴミ箱に入れてしまいたいような気分が自分を覆い始めると、実際に色々上手くいかなくなってくる。そして本当に自分のちっぽけさや色々出来なさ、魅力のなさ、を眼前に突き付けられて、自分に愛想が尽きてしまう。 以前と違うのは、ここで沼に落ちていくのではなくて、そう

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