「いつもの資料」はNG!壁打ちは準備で決まる
ビジネスにおいて考えを整理するための「壁打ち」。スタートアップ業界では漠然としたアイデアや悩みを聞いてもらうことで考えを整理し、次のアクションを導き出すミーティングを壁打ちと表現します。
うまく活用できれば事業のステップアップにつながる壁打ちですが、聞きたいことがまとまっていなかったり、必要な情報が不足していたりすると、せっかくの時間が空振りで終わってしまうこともあります。
良い成果を導き出すための心構えや話の組み立て方など、HAX Tokyoが実施してきたスタートアップとの壁打ちの経験をもとに、有意義な壁打ちにするために必要なことをお伝えします。
悩みを冒頭で伝える!事業紹介は要点を押さえてコンパクトに
壁打ちの時間は限られています。数十分から一時間ほどの短い時間で良い成果を得るために、事業紹介の時間は長くても全体の1/3程度で収まるようにしましょう。可能であれば、事前に資料を共有し、壁打ち相手が手元で確認できる状態にしておくと効率的です。
事業内容の全てを満遍なく伝える必要はありません。冒頭で「ここに悩んでいる」と伝えた上で、悩み事の周辺情報を意識的に盛り込むことで、壁打ち相手もその内容にフォーカスできます。重要でない情報を漫然と話したり、資料を見返したりする無駄な時間が生まれないようにしましょう。
NDA等の関係で伝えられない情報は資料に含めないことが重要です。ですが、あまりに情報が少ないと、相談相手にとってはアドバイスのしようがありません。守るべき情報と共有可能な情報をしっかり区別し、共有できる情報のみを持って壁打ちに臨むようにしてください。
「目標・過程・課題」のセットで悩みの原因を明らかにする
解決したい課題が明確な場合、下記のように情報を整理して壁打ちに臨むことで、相手側の理解度が高まり、より実情に沿ったアドバイスをもらえる可能性が高まります。
目標:何をやろうとしているのか
過程:何をやってきたのか
課題:何で困っているのか / 立ち止まっている場所
いきなり「立ち止まっている場所」から説明されても、前提条件がわからなければ有益なアドバイスができません。課題のみならず、必ず目標と過程もセットで伝えましょう。
目標:何をやろうとしていてるのか
いわゆるピッチ資料のような構成を参考に、「解決したい顧客の課題」「課題解決のためのプロダクト」「顧客の規模感とコミュニケーション状況(市場とトラクション)」「解決することで想定できる売上規模」を書ける範囲で言葉にしてください。
VCや協業先とのやりとりで使うスライドがあればそれでもOKです。創業前のスタートアップはこうした資料が手元にないかもしれませんが、自分のやりたいことやプロダクトの性質を考え、箇条書きレベルで良いのでまとめておきましょう。
ピッチの構成や盛り込むべき情報がよくわからない場合は、こちらの記事を参考にしてください。
過程:何をやってきたのか
顧客探しやコミュニケーション、製品開発、チーム作りなど、目標達成のためにやってきたことを整理して教えてください。こうした過程は通常、一般的なピッチでは重視されないかもしれません。
しかし、うまくいかなかったことや中断してしまったことの中にも、現状の課題解決につながるヒントが含まれている可能性があります。ピッチで伝えていることと実情のギャップなど、試行錯誤の結果などもぜひ教えてください。
課題:何で困っているのか / 立ち止まっている場所
製品開発で困っているのか、顧客開拓で困っているのか、別の何かで困っているのかなど、自分たちが課題だと認識していることを整理して教えてください。
壁打ちを進める中で、スタートアップが課題と捉えている内容と別の箇所に問題が見つかることもあります。資金調達の問題を掘り下げたら顧客定義に行き着いたり、チーム作りの相談から製品開発の見直しに繋がったりと、目の前の課題の裏により大きな課題が根ざしているケースは珍しくありません。
資金調達や量産依頼がうまくいかない場合、断られた理由を全て説明してもらえるとは限りません。相手側に悪意がなかったとしても、うまくいかない原因が明示されず、課題の核が見えづらくなる状況もあり得ます。医師に相談して体調不良の原因を突き止めていくように、困りごとの原因を客観視する場として壁打ちを活用しましょう。
「モヤモヤしていること」を言語化する
課題が明確ではない状態でも壁打ちは機能します。冒頭で「モヤモヤしていることがあって…」と前提を伝えれば、聞く側も課題解決から共感モードへと心を切り替え、相談者に寄り添うことができます。
解決できそうだけれど糸口が分からない「モヤモヤ」や、すぐに解決できない課題にストレスを感じる「愚痴」など、悩み事や相談にもさまざまな種類があります。自分で課題を言語化できているのか、解決可能かどうかといった軸で、悩みの種類を分けてみると良いでしょう。
また、人に話をすると強制的に言語化が進むため、モヤモヤした状況が整理されていきます。相手と共感しながら悩みを一緒に考え、手触り感のあるものや解決可能な課題に変換していくことも壁打ちの使い方の一つ。漠然と困っている時や、物事がスタックしている時にこそ、壁打ちの機会を使うこともおすすめです。
取材・文:淺野義弘、編集:シンツウシン
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HAX Tokyoでは、グローバル展開を目指すハードウェア スタートアップや、これから起業を目指している方向けのカジュアルな壁打ち会を実施しています。
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【相談できることの一例】
資金調達を成功させるためにピッチ資料を改善したい
開発 設計など製造面での課題があり相談にのってほしい
PoCの良い進め方、いいプロトタイプ(MVP)の作り方を教えてほしい
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なお、HAX Tokyoへのエントリーやお問い合わせも、こちらの相談会でお請けしています。詳細は下記サイトからご確認ください。
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