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(ハワイレコード版)大江千里オリジナル・アルバムレビュー3rd『未成年』

大江千里
『未成年』
1985年3月21日発売

  1. REAL

  2. SEXUALITY

  3. A MOONLIGHT EPISODE

  4. 真冬のランドリエ

  5. もう一度 X'mas

  6. 赤茶色のプレッピー

  7. プールサイド

  8. 渚のONE-SIDE SUMMER

  9. 十人十色

  10. ナチュラル

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個人的に一番聴いた。僕の中での大江千里最高傑作アルバム。世の中の全てのアルバムの中でも、オールタイムベスト30に入るくらい好き。

これまで、大江千里がCITY POPというジャンルに括られる事はあまりなかった。でもこのアルバムは、CITY POPや和ブギー的サウンドが好まれる今の時代の空気感にマッチしているので幅広い音楽ファンにおすすめします。

今の時代の空気感マッチしているアルバムだが、大江千里の音楽はCITY POPブームにのみこまれるような単純なものではない。今までになかった新しいアイデアを持ち込み、信頼できる先輩達に相談しながら、これまで世の中にあったものとは違う表現を模索した結果なのだと思う。

CITY POPは聴き飽きても、大江千里の音楽は聴き飽きない。聴くたび新しい発見がある。サンプリング的手法が一般となった今でも、誰も彼の表現を模倣しきれてないのだ。

また、岡村靖幸なんかのファンもそうだが、当時のファンよりむしろ当時を知らない若いリスナーの方が、その表現を受け止め、新鮮に感じ、僕達が気付かなかったことを受け取っているように感じる。


1st、2ndは大村憲司編曲/プロデュース。対して、この3rdアルバムでは清水信之が編曲/プロデュース担当。全体的にNEW WAVE的ロック的印象がある大村憲司編曲に対し、清水信之の編曲はよりメロウでAOR、BOOGIE的な物が増え、当時よりも今の感覚でしっくりと馴染む。

コンピューター・プログラミングは第四のYMOとも言われる松武秀樹。ギターは元UGUISU/渡辺美里の音楽をサポート/山下達郎からの信頼も厚い佐橋佳幸。ストリングスは金子飛鳥。コーラスはEPO。


シングルは「REAL」と「十人十色」の2曲。「十人十色」はサウンド的にこれまでの路線を踏襲しているようにも感じる。歌詞的にも、ハッピーでキャッチーで王子様的かわいさがあり、この路線の集大成的名曲。「REAL」は学生の感覚やそういった王子様的なかわいいイメージから脱却しようとしているような、次回作からの流れにもつながるような新機軸を提示している。

当時の感覚だとこの2曲を中心によくまとまったアルバムという評価なのだと思う。しかし今の感覚で言うとこの2曲はシングルとして聴きたい。2曲をアルバム未収録にして、AORやBOOGIE的感覚でまとめた「未成年」も聴いてみたかった!


サウンド的にも、これまでも/これ以降もかわりがきかない唯一無二の作品。先端的なイメージの表現で使われる事が多かったシンセサイザーをポップスというジャンルの中にうまく取り込んでいる。

さらっと表面的に聴くと、当たり前に他者がやってる音楽との違いを感じづらい。でも、松武秀樹、佐橋佳幸、金子飛鳥という癖もこだわりもある音楽家達の演奏により深みが増すそのサウンドは細部まで行き届いており、プレイヤーの身勝手なこだわりではなく、大江千里のアイデアを最高の完成品にしようという思いが詰まっている。聴くたびに新しい発見があり、他の音楽との差を感じてしまう。


楽曲について。打ち込みのリズムも入った「A MOONLIGHT EPISODE」は、当時のUSのメロウ・ブラコンサウンドとの相性がよく、今DJでかけるならこの曲では?当時AOR的な楽曲というとベタベタのスロウバラード的な物が多かったが、サザンの「海」なんかとも繋がる感覚で聴ける「渚のONE-SIDE SUMMER」や、「プールサイド」は、今の時代の空気にも合った最高のAOR。金子飛鳥のストリングスを効果的に使用した「真冬のランドリエ」。他にも「SEXUALITY」、これまでの路線の延長的な「赤茶色のプレッピー」、「もう一度 X'mas」。どれも名曲!

(ハワイレコード DJ BOYFRIEND)

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