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元カノの結婚式に参列した女の話

※これは2年くらい前にはてブロで書いたものとだいたい同じ話です。 

はてなブログでは「僕」と書いていて、こちらで「わたし」を使うのは、向こうは脳内をほとんどそのまま文字起こししている文章で
こちらは約2年後に「読んでから書き写している」文章だからです。
わたしの脳内でわたしは「ぼく」なのだけれど、液晶の活字で見るとなんだかノイズなのよね。不っ思議〜。

数日前に『永遠なるものたち』を読んでnoteを書いたあと、
「『あれ』が悲しくなかったことが、noteで述べたことの最たる例ではないかしら?」と思い出したのでほとんどコピーアンドペーストの同じ話をします。


exの挙式に参列するのって、どうよ


Twitterで『元カレに結婚式の招待をされかけた』みたいな話を見かけました。

結婚式に呼ばれて行った元カノを思い出しました。

宇宙でいちばん可愛い女の子だと思っていたし、今でも彼女のことを宇宙でいちばん可愛いと思っています。

付き合ったことがあるのはその子一人ではないけれど、わたしが「元カノ」と言うときは大抵彼女のことです。

彼女についてはブログ以外でも何かにつけて話しています。それはそれは本当にキュートで美しいすてきな女の子だった! 特別に大好きだった!

フッたときも、フッてからも、めちゃくちゃ好きでした。

未練たらたらのクズみたいな書き振りだけれど、誤解しないでほしいので弁明させてください。
(クズであることは否定しないが、)未練があるわけじゃないんだ。

高校のクラスが一緒になって、同じ駅でも違う路線で帰るから、わたしは使いもしない東西線のダイヤを覚えたりした。卒業してからの方が親密で、彼女はなんにもない田舎で大学に通うわたしに会うために貴重なバイト代なんか使ったりして、優しさと気障と健気と臆病と、どう捉えたとしてもわたしは彼女のそう言う部分だって愛おしいと思っていた。柔らかくて滑らかで、体温は低めで、睫毛が真っ黒で、横顔を見つめていると涼やかな造形が格好良くて、口を開けて笑うと小柄なのによく響く声で、歌が上手で、わたしほどではないがなかなかの癖字で、理想家で、努力家で、シアトリカルな気障さを貫き通す気合を持った、カタバミの実みたいな女の子。

これらは当時のわたしが恋人を愛おしく感じていた見方を書いた文章であると同時に、
今でもこんな風だった彼女のことが大好きだという文章です。

めちゃくちゃ好きだったけど、めちゃくちゃ好きなまま、別れ話をしました。

(わたしがどれだけ酷かったかっていうのは、彼女がどれだけ素敵な女の子だったかっていうのを分かってもらわなくても書けます。

だらだらと書いたのは惚気です。リライトするにあたっても削る気にならなりませんでした。冗長だって分かってるけどさ、でも、好きな子の話、したいじゃん。)

わたしが彼女をフりました。
実際に通話した時間は覚えていないけれど、かなり長くSkypeを繋いでいた記憶があります。

わたしは彼女が言う「大好き」を信じられなくなって、わたしのやり方で伝える「大好き」を受け取れない彼女に不満をおぼえるようになって、話して、交際関係ではなくなりました。

端的に言えば、わたしは彼女と性的な触れ合いをしたかった。
もっと身も蓋もない言い方をすれば、ヤらせてくれない彼女が不満で、フッた。

彼女は肉体関係抜きでも特別な感情を抱ける人間らしく、わたしは恋した相手とはセックスもしたくなる生き物でした。

そりゃなかなか上手くいかないはずよね。

ベロチューへの嫌悪感が唇の固さで分かるって、彼女と付き合って初めて知りました。

知ってた?


地獄みたいな百合作品でありそうな展開じゃないすか
知らんけど(知らんけど)

今でも彼女のことが大切です。
彼女もたぶん、わたしのことが嫌いになったわけではないと思います。思いたい。

別れてからしばらくして、彼女には彼氏ができ、のちに入籍します。

式場の下見にも行きました。
旦那さんの都合がつかないが披露宴のメニュー確認は誰かと一緒がよくて、と彼女は私に言いました。(わたしはその真偽を追及せず、言われたま捉えています。まじで。)

結婚式の彼女は本当に本当に綺麗で、その場の全てから愛されて見えた。穏やかそうな新郎に笑いかける横顔を見ました。やっぱり睫毛が真っ黒で、陶器みたいな肌にうっすらラメをのせて、緊張しながらも幸せそうに見えました。

友人代表はわたしでした。
完全にサプライズで指名されたせいで、可愛げのないリアクションだった気がします。覚えていないけれど、たぶん「は?」とか。

お色直しのための中座で、わたしは彼女をエスコートしました。ウエディングドレス姿の彼女が隣にいるのは非現実じみていて、実は今でも少しだけ疑っています。本当に可愛い女の子でした。

式場のスタッフさんがにこやかに案内していて、旦那さんと選んだドレスを着ていて、階上には新郎新婦の幸せを願う参列者が何人も来ていて、そこは彼女への好意しかあらわされていない空間でした。
こんなに嬉しいことが他にあるでしょうか。
息が詰まって、鼻の奥が勝手に塩辛くなります。

大好きな女の子が真っ白いドレスで階段を降りていくのを手伝ったあと、控室に向かう前に我慢できず抱きついてしまいました。

補正のボーンがあったのか、そもそも伸縮しない生地なのか、花嫁衣装の硬い感触を覚えています。コルセットとか入ってたのかな。

なんでそっちがそんなに泣くの、と笑いながら抱き返してくれる彼女の手ばかり柔らかかったです。

地獄みたいなとは言ったものの、
むしろ絶頂みたいな、そういう瞬間

好きな子がたくさんの参列者に幸せを願われていて
その中でも特別の役割にわたしを選んでくれた、
それが喜ばしくないはず無いと思いませんか。

元カノの挙式で友人代表に指名されたことは、誇らしく幸福な思い出です。

悲しむ方が難しくって、わたしにとってペーソスはやっぱり遠いままでした。

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