起業して1000万円を手にして不幸になった元タクシードライバーの話 その1「不良東大生の価格と手にしたもの」


 こんにちは。こちら、中村慎太郎。

 2年浪人をして東京大学に入ったあと11年在籍し、宮沢賢治とアワビ類の研究をしたあと、フリーライターとしてお金にならないJリーグの記事を書き続け、本を出したことで毎年印税が入る。旅とサッカーのウェブマガジンを個人事業として運営していたが、それでは暮らせないので書店員をやったあと、タクシードライバーとしてコロナ禍の東京を走り続け、株式会社西葛西出版を創業して、代表取締役社長となった者。

 今は、日本を徒歩で一周しながらサッカー観戦をする企画を立ち上げた。結果的にテストとなったのは静岡県の徒歩横断。2児の父。趣味は釣り、バードウォッチング、異世界系漫画、猫、お酒。

 うるさい……、経歴が圧倒的にうるさい……。自分でも嫌になるくらい人に説明するのが大変で、「え?タクシーってどういうこと?」と聞かれるとそこで話が止まってしまい、先に進まなくなってしまう。

 これがぼくの人生。今日のコラムでは、私の人生をお金という意味から再構成してみよう。お金というよりは資産と負債というべきか。

 詳しいプロフィールは↓にまとめているが、未完。

 さて、それでは人生の終始を振り返ってみよう。

 誕生から高校卒業まで。アルバイトは禁止だったこともあり、終始は大きくマイナス。ただ、これは両親の「負債」、あるいは投資としてのマイナスと考えるべき。子供という存在は、自分の人生を中心にみたときは「負債」になる。毎日のようにお金が飛んでいくし、いくら払ってもお金は返ってこないからだ。もちろんこれは日本社会の特徴で、歴史的にみると、子どもは5,6歳まで育てれば労働力になりえるので、少し状況が違う。

 愛する子供に対する出費は痛くないというのは心情的な問題で、「家族の経営者」という視点からみると、簡単には回収できない投資であることは間違いない。議論はあるようだが、「負債」というべきだろう。

 『金持ち父さん 貧乏父さん:アメリカの金持ちが教えてくれるお金の哲学』というベストセラーがあるが、この本の趣旨は、「お金を産んでくれる「資産」を買うべきで、お金を産まない「負債」を買うべきではない」というものだ。

 貧乏父さんは、収入があっても負債ばかり買ってくる。例えば、レクサス、ゴルフクラブ、高価な時計、レコード、ウィスキー、ステレオ、ゲーム機などです。これらは買った瞬間に中古品となり価値が下がっていくため、負債と言える。キャンプ道具や釣り道具も見事な負債ダ。

 ただし、キャンプ道具を使ってYoutubeコンテンツを作り、道具代よりも稼げるようになった場合には資産と考えていい。

 そういう意味では「憧れのマイホーム」も負債といえる。新築の家を3000万円で買っても、それ以上で売れることはなく、買った瞬間に3割引くらいの値段になってしまうからだ。

 一方で、Youtuberの吉田製作所さんがロマン溢れる1億円のマイホームを建てたのだが、これはコンテンツのネタを提供してくれるので、とんでもない負債であると同時に資産でもあるといえる。

 

 何か買う際には、その買い物に心の底から満足しているかどうかで決めることが多いはずだが、それは「経営」という視点からいうとどうでもいい話となっている。「経営」において大切なのは、お金を産む仕組みを作っていくことで、社長や社員がいくら満足しようが、お金が出ていく一方のものを買うわけにはいかない。

 もっとも、福利厚生という考え方もあり、会社の構成員の満足度を高める「投資」をすることで、人材関係のコストを削減するという考え方もある。そのあたりのノウハウはまだないのだが、零細企業の段階ではどれだけ福利厚生を充実させようが人はいなくなっていく気がする。大企業に太刀打ちできるわけがないからだ。大事なのは志を持ってやっていくこと!!
 
 というわけで以下の本。この本、実は読んでいない。というのも、いろいろなところで趣旨が紹介されているからだ。そんなことじゃいかんよなとは思うものの、多分この先も読まないような気がする。

 というわけで、中村家の家計を圧迫しつづけた負債のトップランナーの慎太郎くん、両親はお金を回収できる日が来るのだろうか。そのあたりを具体的にみていきたいと思う。

【誕生から大学生まで】

 高校までにかかる教育費は540万円程度とのこと。すべて私立に行った場合には1600万円だそうだ。ぼくの場合は、学費が公立並みに安かった私立安田学園高校にいっていたので、540万円でいいと思う。 

【保存版】教育費はいくら必要?幼稚園から大学卒業までにかかるお金をFPが解説

 細かく計算していこうと思ったのだが、永遠に終わらなそうなので、別の資料ではレジャー費や食費なども含めて、22歳までの金額がざっくり掲載されていたのでこちらを採用する。すると、2600万円くらい。

子育てに必要な費用ってどのくらい?0歳~22歳までの合計金額とは

 ぼくの場合は浪人を2回もしている。ということはプラスで2年間負債をしていたことになる。なので、1年浪人をすると、予備校の学費などが200万円くらいはかかるはず(高い!)。夏期講習などをとりすぎるともっといってしまうはず。いや、300万円くらいみておいたほうがよさそうかな。

 親が「絶対にダメ!」というので浪人できずに、滑り止めに設定していた大学に進学したというのはよく聞く話だけど、今もし子供に浪人したいと言われたら「絶対に無理!」と言うしかない。だって、払うお金が物理的に存在しないから。自分が親になってわかる両親の偉大さであった……。

 さて、無事合格したあと、ぼくは大学の学部に7年間もいました。なので、どんぶり勘定ですが3500万円としよう。

 28歳までに3500万円!!

 これが中村慎太郎の制作費(まだ大学院があるんだけどね……)。完全に35年の新築ローンを組む価格だが、年利がかかるわけではなく、28年かかっていたと考えると、私は紛れもなく家——。自分は家だったのだ。ちなみに妹も似たようなキャリアを歩んでいるので、両親は2人あわせて7000万円を約30年で払ったことになる。1年あたり230万円。

 ……。恐怖しか感じない。

 さて、22〜28歳はアルバイトをしていたし、東京大学の学費は年間53万円だったと思うので、東大ジプシー生活はそこまでお金がかからなかったはずだ。そして恩恵も大きかった。

 単位を取るのはとても苦手であったが、文理問わず、ありとあらゆる種類の講義に2、3回だけ出ることを繰り返していたので、兎にも角にも教養が付いた。ぼくが東京大学を志したのは、扱っている学問の幅が日本で一番広く、選択肢が大きいことであった(1浪で慶応と早稲田と上智に落ちたことが一番の要因であったが)。この時の「東大つまみ食い体験」によって、「教養という資産」を大きく伸ばすことができた。おかげさまで物書きをやっていられる。

例えば静岡県について書こうと思うとき、「地学(地形とか地層とかの話)」「歴史学」「食品衛生学」「地域文化論」「文化人類学」「生態学」「天文学」「海洋物理学」「水文学」「水産学」「経営学」「哲学」「倫理学」「宗教学」などの視点を入れることができた。どういうことかというと……。

・地学
静岡県の地層、伊豆半島や富士山の成立、土壌の組成など。

・水文学
静岡県を流れる川と農業用水について。また適正な農作物について。

・歴史学
日本史のエピソードいっぱい。

・食品衛生学、経営学
どうして、さわやかのハンバーグは静岡県限定なのか

・海洋物理学 水産学
駿河湾の海底地形と湧昇流の状況(要するに深海からあがってくる栄養塩たっぷりの海水)、および漁業

・文化人類学
日本の地域を「似たようなもの」とまとめずに、詳細に比較検討しながらその実態を浮き上がらせていくという、中村が最も得意とする手法。

・アワビ学
直接は関係ないのだが、アワビ類5種の比較がテーマであったため、比較するのがとても得意で、上記の文化人類学的なアプローチにいきている。実は比較するのは、知的な意味でとても難しい。

・哲学
日本人にとって富士山とは何か。静岡県の人にとって富士山とは何か。日本にとって静岡とは何かと根本を問う思考ぐせ。

・倫理学
文章を書くのは哲学ではなく倫理の問題。

・天文学
富士山の上で星を見ていた(薄め)。

 このように、色々な角度から文章のテーマを選ぶことができる。なので、見る人が見ると、ぼくの文章はとてもカラフルで華やかに見えるはずだ。逆に、ぼくに言わせればだが、どんなテーマでも同じアプローチしかできない著者は少し地味なイメージになる。

 というわけで、東京大学に潜伏した11年間は、物書きをしていくという一点に限っては、かなりのボリュームの「資産」となっている。しかも……。この投資をしたのが自分ではなく両親というのがポイントだ。

 嫌な言い方をすると人のお金を使って、利益だけが得られたのだ。これは親の愛情という以外に形容できない何かで、こういったことに恩義を感じていたので「早く孫の顔を見せる」ということに目指した。

 完成に時間がかかった負債、慎太郎君が、稼ぐ仕組みを確立するまえに子どもを作ってしまうのは、お金という意味ではとっても大きなマイナスなのだが、孫の笑顔はそれなりに両親の幸福に寄与しているとは思う。孫などいらぬ、見たくないという人もいるだろうし、孫によって人生が肯定されたと感じる人もいるだろうし、このあたりは好き好きであろう。

 というわけで、せいぜい親孝行を続けていくことと、次の世代である孫、つまり自分の子どもをしっかり育てていくことに注力したい次第である。

 最後に長い学生生活を通じて、ぼくが手にした「教養」について語る。「教養」とは専門的な言葉を駆使して小難しいことを語ることではない。抽象的な事柄、難解な概念であったとしても、自分の中に一度いれて、理解して、子どもでもわかるような平易な言葉になおすことだ。

 何でも理解する力、インプットする力。誰にでもわかるように発信する力、アウトプットする力。この両面が問われる。そしてぼくは、そのための修業を30歳ちかくまでやっていたということになる。

 結構な完成度になったとは思うものの、今は1000万円くらいの借金を負っていて、毎月月末になると頭が痛くなる。様々な支払いをどう処理するか。場合によっては頭を下げて借金をしないといけなくなるかもしれない。

 これだけ苦しい理由は「人に払いすぎた」ということに尽きる。とはいえ払わないと人は幸せになれないわけだ。人の幸せを優先した結果、自分が不幸になる。これが今のぼくだ。もっともお金を払ったことで、人が幸せになったとは言えず、むしろ払っている額面が多い人ほど不満をぶつけてくる。

 なんという不幸なのだろうか。娘に洋服を買ったりディズニーランド連れて行ったりすることができず、相棒の副社長には十分な報酬が払えない。どうしてこんなことになってしまったのか。ここから立て直すことはできるのか。

 制作費3500万円の高級執筆マシーンである中村慎太郎くんは、果たしてお金の世界を制して、幸福になれるのだろうか。

 もちろん、今が幸福だという理屈をつけて、自己洗脳していくことはできる。自己防衛機制(自分を守るための反応)に合理化というものがあって、今の自分は間違っていないと理屈をつけることは可能だ。

 だが、お金がなくて、子どもに習い事もさせられない状況は非常に心苦しい。

 さあ、どうする。

 どうやってこの危機を脱するのか。

 どうすれば幸せになれるのか。

 いったいお金はいくらあったら幸福なのか。

 
 次の記事では、大学院とお金の話を詳細にしようと思う。そのあとは、みんな大好き、貧乏ライターの台所事情の話。書店員のお金の話、タクシードライバーのお金の話。経営の話へと移っていく。その間にお金について思いついたことがあったら、ミニコラムにしていこうと思う。

 このコラムは、毎日noteにエッセイを連載している松永ねるさんの素敵な文章を読んで、物書きなら書かないと駄目だ!!資金繰りのことばかり考えていると脳が死んでいく!!と、心が叫び始めたことから書き始めた。毎日は難しいかもだが、少しずつ書いていこうと思う。


 全身全霊をかけて作った本です!良かったら読んでください!!弊社のサイトからご購入いただけるのが一番嬉しいです。どのくらい嬉しいのかはそのうちこのコラムに出てきます(あんまり込みいったお金の話をするときは有料にさせてもらうかもですが)。




文章や音声コンテンツが面白いと思った方は、是非サポートをお願いします!コンテンツづくりのための経費や投資に使わせて頂きます。用途については不定期でnoteに公開します。