君が「お月さま!」って見付けてくれた。 「まいにち」の隙間で輝く夜月は、雲を縁取って優しく微笑んでいるみたいだった。
君の中で僕は「ウソツキ」。 僕が「君の為」と想って選んだ言葉は、君の耳に届いているけど。 その言葉が届くまでの間に起こる、僕たちの心の中と、僕たち以外の、全てのことを知ることができないから。 だから、言葉がある。
「自分」の輪郭がはっきりとすればするほど。 それが崩れそうになる時、自分以外の「ナニカ」にならなくてはならない、その瞬間。 僕は無力で、信じたくないくらい、ひどく醜い。
君に「ごめんね」ばかり言わせてしまう。本当は、僕が言わなくちゃいけない言葉なのに。
君はひとつひとつ、階段を上がっていく。君の階段はどんな景色に繋がっているのだろうか。いつか来る、君を見送る日に思いを馳せて、「今」をささやかにお祝いしよう。
何もできなくても。「疲れた」が口癖みたいになっても。君が跳ねるように笑うから。僕は君とのなんの日でもない「まいにち」が大切なんだ。
このわずかな時間で僕は「ひとり」を満喫する。そうしたら、次、君の顔を見た時に、にっこり笑った「君の大好きな優しいママ」で居られるから。だから僕は「ひとりの時間」を大事にする。
君が外の世界で、どれだけがんばっているのか。僕には、わずかにしか感じ取れない。だけど、君を呼ぶ、たくさんのちいさくも大きなその声は、君の積み上げてきた「まいにち」を教えてくれる。
君が望むなら何だってしようって想った。 だから、君が寝ぼけて僕を起こして、君はまた夢の世界に戻ったとしても、「夢の中まで僕を必要としてくれた」なんて。僕もまた、夢を見る。
君が泣いていても何もできない僕を許して欲しい。君が泣くと心臓が痛いんだ。君が「起きて」と言って泣くから、僕は自分の顔を叩いて君を抱きしめることにした。そうだ、僕は人である前に「母」なのだ。「ごめんね。おはよう。」