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ピアノが上手な人は、なぜ上手なのか。物理的に考えると?<前編>ーー東大出身の理学博士が素朴で難しい問いを物理の言葉で語るエッセイ「ミクロコスモスより」㉗
「子供に習わせたい習い事」としていつも上位に挙げられるのがピアノです。そのためか、世間には数多のピアノ教室があり、ただ楽しく弾くことを目的とした教室から、最初からプロを目指してスパルタ教育をする教室まで様々です。誰しも最初は練習によってピアノが上手になると信じてレッスンに通い始めるわけですが、そもそもピアノが上手いというのはどういうことを意味するのでしょうか? 「ピアノが上手い」と言われる人たちはたくさんいますが、「どのように上手いか」は千差万別です。例として、20世紀を代
ピアノが上手な人は、なぜ上手なのか-物理的に考えると?<後編>ーー東大出身の理学博士が素朴で難しい問いを物理の言葉で語るエッセイ「ミクロコスモスより」㉘
「ピアノの上手さ」の要素を以下の3分解し、物理的に考察するテーマ。 今回は<後編>です。 ・空間的な正確性 ・時間的な正確性 ・強度的な正確性 <前編>はこちらから 【時間的な正確性】 これは「正確なリズムを刻む」ということではあるのですが、これには「短期的なリズム」と「長期的なリズム」の2つに分類できます。「短期的なリズム」は、例えばスケールやアルペジオの練習のように、すべての音が時間的に均質になっている(俗にいう「粒がそろっている」)状態です。これは「空間的な正確性
理論物理学と実験物理学、あなたはどちらが向いている?ーー東大出身の理学博士が素朴で難しい問いを物理の言葉で語るエッセイ「ミクロコスモスより」㉖
今回は研究&大学院エッセイです🖋 あらゆる科学は、観測事実をもとに仮説を立てて、それを実証ないしは反証することで進歩してきました。リンゴを含め、あらゆるものは手から離すと地面に落ちることから、質量を持つ物体同士は引力を持つという仮説を立て、それが極微な中性子でも巨大な天体でも成り立つことを観測しました。黒体放射のエネルギー分布の長波長側の振る舞いを説明するためには、原子や分子の取り得るエネルギーが飛び飛びである必要がある、という仮説から、光電効果がミリカンにより実証され、量
量子計算ってなに?(量子計算機・量子コンピュータってなに?)ーー東大出身の理学博士が素朴で難しい問いを物理の言葉で語るエッセイ「ミクロコスモスより」㉚
「量子コンピュータ※1」という単語が一般に知れ渡ったのはここ10年程度のこと。IT各社がこぞって量子コンピュータ開発に乗り出し、様々な手法での量子計算の実装が研究されています。大学院で物理を研究しようと志す学生も、人工知能や量子計算といったワードに注目する傾向が多いようです。 しかし、実際のところ量子コンピュータが何なのかを知っている人は限られるのではないでしょうか※2。それを知るために、現在一般家庭に普及しているデジタルコンピューターのことを復習しておきましょう。 コンピ