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お店の匂いと記憶5月18日

足元も見上げた木々も、in-kyoの花壇も。
どこもかしこも緑に溢れている。美しい季節だな。

花壇のことが実はずっと気になっていた。
三春で移転openの際にシンボルツリーになればと、ホームセンターで
買ったユーカリの苗。当時は高さが1mもなかったはずだが、
今ではやや見上げるほど。外からはウインドー越しに店内が見えないくらい葉が生い茂っている。ほんの1株と思って植えたアイビーは、ズルズルと
調子良く蔓をのばして縄張りを広げている。アイビーよりも先に植えていたはずの先輩ローズマリーは、光を求めて花壇から前へ前へと、うねるように歩道にせり出て今にも踏まれそう。
そうなっていることは十分承知していた。知ってはいたけれども、いつどうやって手を入れようか考えていた。草木たちがそんな悠長な私を待ってくれるはずもなく、定休日明けの花壇はここのことろの五月晴れと雨の恩恵で
育ちに育っていた。びっくりした!
これはもうエイヤっと刈りこむしかない!と、開店前に花ばさみを持って床屋さんのように(お隣りは床屋さんだ!)パチンパチンと整え始めた。結局、お店でも家の庭の手入れの延長のようなことをやっているわけだ。

まずはアイビーを少し減らして花壇に風を通し、他の植物に陽が当たるように。ユーカリは高さと広がりを抑えるために枝を切って、切った枝は店内に活けて。魔女の杖のごとく、乾いてごつごつと険しなっていたローズマリーの枝は剪定。渦巻くゴッホの糸杉のように伸びた枝先も刈りこんで。まるで床屋帰りの花壇。一気にすっきりした。ローズマリーはユーカリのように「はい、では花器にバサッと活けて」と簡単にはいかず、さらに整えてひとまず大鉢に活けたり、あっちを向いたりこっちを向いたり言うことを聞かない枝は、輪ゴムで束ねてリボンをかけて、ガーランドのように壁に吊してみた。すると店内がフレッシュなハーブの香りに包まれた。そうそう、家から庭で摘んだミントやレモンバームも持って来ていたのだった。5月らしいスーッと爽やかな緑の香り。

いらしたお客さまにも
「何の香りですか?」とか、「いい匂い~。アロマオイルですか?」と、
なかなか好評の様子。これは今だけの季節の香りだ。
蔵前の頃からよく言われていたことだが、どうやらin-kyoの匂いというものがあるらしい。私はその場にずっといるからもうわからなくなっているのだけど、家の匂いのようなものに近いのかな?
東京の頃からのお客様がたまにふらりと三春のin-kyoへいらっしゃると、
扉を開けた瞬間、「あ、in-kyoさんの匂いだ!」と言って下さることがある。そっか、東京の頃も今も、場所は変わっても匂いは変わっていないのかと。それはなんだか嬉しいな。

私が好きないつくかの(と言っても片手で数えるほどだけれど)お店もその場所の匂いを持っている。それはこんな感じと、匂いを言葉に表すのは難しいのだけれど、あのお店はあんな匂いというそれぞれのイメージは頭の中に沸いてくる。香りと記憶は結びついているということなんでしょう。

刈りこんだ植物たちが無駄にならず、「匂い」という部分に光があたって良かった。