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カラメルタタン講座 5月3日

りんごや梨の花ってなんであんなにかわいらしいんだろう。
桜にも似たそれらの花は見上げるのではなく、木が目線に近い高さだから
白い花が満開になると、果樹園が一面の白い花畑のように見える。
もうかれこれ20年以上前に目にしたその景色、あんざい果樹園のご家族との出会いがきっかけで、福島へ通うように来ていた私。それが、今こうして
福島県で暮らしているのだから、人生何が起こるかわからないものだなぁ。
だから梨やりんごの花が咲くこの季節は私にとって特別なものになっている。あんざい果樹園のりんご畑の向こうには、吾妻連峰。この冬は暖冬だったから吾妻小富士に残雪はなく、雪うさぎの姿が見えないのが寂しい。

さて。
今日はあん果樹の嫁・たべるとくらしの研究所の安齋明子さんによる、
ふじりんごを使ったカラメルタタン講座に参加した。
これまで何年にもわたってビンものの「カラメルタタン」そして販売すれば即完売してしまう絶品「タルトタタン」を作り続け、看板商品のひとつとして販売してきたアッコちゃん。その作り方、レシピを講座として公開するというのだから太っ腹にもほどがある。

講座ではりんごの品種の違いによる特徴と、それによって扱い方を変えるポイントもわかりやすかった。様々な品種に出会って作り続けてきた果樹園の嫁ならでは。これは単なるお菓子作りの教室ではなく、まさに「講座」だ。
そのポイントを知っているか知らないかで、「失敗したら嫌だな」とか、「美味しくできるだろうか」というお菓子作りへの苦手意識が変わりそう!と思わせてくれる内容。ハードルが下がってヒョイッと飛び越えられるような気がしてしまうから不思議。
アッコちゃん(明子先生)のデモンストレーションで、カラメルの色、香りの変化、バター有・無、カットの大きさの違いなども最後の試食で美味しく味わいながら各人が自分で確かめて。帰りにはすぐに復習できるようにと、講座で使ったものと同じ、ふじりんごをゴロゴロとお土産で持たせて頂いたのだ。

と、これだけでも十二分に贅沢で楽しい内容だけれど、そこにはもっともっと深く熱い思いが込められていた。あん果樹をはじめ、ふじりんごは福島でも多く生産されているりんごの品種。季節になれば福島では食べられるのがあたり前、家にあるのがあたり前の果物。それもこの数年続く猛暑・暖冬などの気候変動の影響や後継者不足による果樹園の閉業などなど。
栽培自体も難しくなっている上に、形や色が悪ければハネモノとして価格を下げて販売するか、廃棄となる現状。それが年々深刻になってひょっとすると今あたり前に食べられている果物が食べられなくなるかもしれないということが、なかなか一般的には意識されていないのではないだろうか。

そもそもジャムなどのビンもの、タルトタタンなどのお菓子といった加工品をアッコちゃんが作るようになったのは、大事に育てられても様々な理由で廃棄されてしまう果物を少しでも救い、美味しく食べて欲しいという思いからスタートしている。
が、ひとりの力ではどうにも限界がある。消費する側も一緒になって、しかも美味しく楽しくそれぞれが「家庭の味」を作り上げられたら、少しずつでも何かが変わるのではないだろうか。という草の根活動として踏み出した一歩がこの講座なのだ(と、私は理解したけど合っているかな?)
だからこれまで積み重ねて編み出したレシピやポイントも惜しみなく公開。たぶんそれでも数を作り続けてきたアッコちゃんのタタンの美味しさに
敵うものはできないに違いない。(ハナから戦わないしね)

この講座によって、これから福島産のふじりんご(他の品種も)が1つでもこの土地で無駄なく美味しく家庭のおやつや朝食で食べられるようになったら素敵なこと。
となると、視界を広げれば、りんごに限らずその他の農作物への意識も変わって来ることでしょう。他のりんごの産地に派生したっていいワケだし。むしろそうなれば尚更良いのだし。
大きな声をあげるのではなく、小さくても少しでも、自分たちのやり方でアクションを起こしていくアッコちゃんと伸ちゃんは、いつもまぶしくカッコいい。それがたべけんの哲学かもしれない。

5月3日(金)今日も五月晴れ!最高気温19℃最低気温8℃
講座が終わった後は、久しぶりにあん果樹で晩ごはん。東京から大沼ショージくん、幸せそうに記念撮影を終えて晩ごはんまで作ってくれた加藤夫妻も一緒に9人で食卓を囲む。20年前も訪れる度にこんな感じで大勢で食卓を囲んでいたが、お庭の改装もし、アースオーブンもゲストハウス「jikka」も調理室も整って、進化が止まらないあんざい果樹園とたべるとくらしの研究所。ま、眩しい!