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【ミニ社長塾 第25講】財務が難しく感じなくなるシンプルな思考法

おつかれさまです。
中小企業診断士で、社長の後継者に【徹底伴走】するコンサルタントの長谷川です。

今回のミニ社長塾のテーマは「財務」。タイトルは『財務が難しく感じなくなるシンプルな思考法』です。

以前にも「財務」について解説した記事をお届けしましたが、改めて大事なテーマですので切り口を変えて今回の記事を書きました。

第25講のミニ社長塾も、どうぞよろしくお願いいたします!

1.財務は得意ですか? 苦手ですか?

先日、19期生の1年間に及ぶ社長塾のプログラムが修了したばかりですが、今は来月からスタートする21期生の受講生に対する入塾前面談を行っています。

この面談は社長塾の入塾に対する合否を決めるようなものではなく、あくまでもマインドセットが目的。この経営塾は1年間の長期間にわたって受講いただくので、ゴールセッティングや受講するにあたっての懸念点や不明点などを予め解消すべく、面談を実施させていただいております。

その中で、受講いただくうえでのご自身の課題や気になる講座などをお聞きするのですが、多くの方が挙げられるのが財務です。この塾に期待されるのは「決算書が読めるようになること」であり、「経営指標から分かることを会社の意思決定に活かしていきたい」というところです。

これは受講される社長の後継者や幹部の方はもちろん、送り出す社長や会長の方にとっても同様です。「アカウンティング(会計)+タックス(税務)=アタックス」という名前を掲げている自分たちにとって、この期待には身が引き締まります……。

以前、【ミニ社長塾 第19講】数字で経営を語る人が持っている、財務に対する考え方は「財務はスキルなので、やれば身につきます」と私は言いました。

このことは決算書が読めるようになることや会社の意思決定に数字を活かしていくことについて、一朝一夕では身に付きません。「慣れ」が重要なんです、ということを伝えたくて書いた記事なのですが、結構大事な考え方だと思います。

財務が苦手……という方は少なからず「数字」に対する抵抗感があるのですが、経営者が見るべき数字は一円単位ではありません。経営の意思決定には○○万円や○○百万円といったザックリとした単位の数字で見ていきますので、細かな数字のズレは気にせずに多少大雑把でも実は大丈夫だったりします。

(ただし、金額が大きいので、ここで見誤ると取り返しがつかない場合も多分にあります。「慎重かつ大胆に」といったところです。)

また、これまでの学校教育では微分積分などややこしい計算式を以って数字を見ていましたが、経営ではほぼ使いません。使うのは四則演算までが基本です。

普段見ている決算書の形は支払う税金を見るためのもので「会計」の領域です。そのため、財務と会計を混同しているために財務は難しいものという「思い込み」があると思います。そういう点でも、財務に「慣れ」ることは苦手を克服するために大事なことだと思います。

2.経営者が持つべき「財務」のあり方

決算書は「経営者にとっての通信簿」という表現があります。経営者以外の方々は社内に評価者がいますが、経営者の成果を評価する方は基本的に会社にはいません。外にいるお客様が評価し、売上という数字の結果で表れます。

この時、経営者の皆さまに注意していただきたいのは、多くの評価を得るべく「売上重視」に走ることです。売上の獲得のためには少なからずコストがかかります。コストは自分たちでコントロールできますが、売上はお客様からの評価ですのでコントロールができません。「利益=売上ーコスト」ですので、売上<コストとなった時、赤字になってしまいます。

また、財務の視点で見ると経営は「調達→投資→回収」です。投資が嵩んで思った以上に回収できなかった場合、次なる投資のためには必要以上の資金調達が求められる可能性が出てきます。そうすると、借入金に頼る経営になってしまいます。

この状況を避けるために、まず考えなければならない「財務」のあり方は「会社を絶対につぶさない」です。会社がつぶれる状況はシンプルで、返さなければいけないお金が返せなくなったときです。そして、この状況を避けるために「手元にどれだけ多くのキャッシュ(=お金)を残しておくか」が大事になります。これが、社長塾でお伝えしている「財務アタマ」の本質です。

財務アタマは、大きく4つの切り口があり、それを更に16項目に分けて整理しています。

決算書が読めることや、経営指標を見て経営の意思決定を行うことは「やり方」の話で、一番大事なことは「会社を絶対につぶさない」ためにどのような数字にしていくか、ということです。そのためには「売上重視」よりも「利益重視」であるべきですし、追うべき数字は会社に残るお金である「付加価値額」です。

ただし、会社のステージによっては「売上」を追い、シェアを取った方が経営を安定化させることに繋がる場合があります。いずれにしても「会社を絶対につぶさない」ために数字をどうするか、という財務の「あり方」が大事になってきます。

3.財務アタマが伝えているポイント

財務アタマは、「会社を絶対につぶさない」ために、財務をベースとした経営における思考力のことです。そのために、「手元にどれだけ多くのキャッシュ(=お金)を残しておくか」を常に意識しておかなければいけません。

財務アタマで分類されている16ある切り口は下記のとおりです。ポイントも一言でまとめていますので、併せてご確認ください。

私たちは、全ての中小企業がベンチマークすべき代表的な会社を「強くて愛される会社」として呼んでいます。そのような会社は財務アタマに優れています。

例えば、直近で視察させていただいた鹿児島県にある「マコセエージェンシー」という会社(総合広告代理店事業)は、オリジナルの会葬礼状などで①高付加価値主義と②値決めの主導権を持っています。また、グリーフサポートセミナーベーシックコース資格習得者や日本語検定資格保有者などが多数在籍しており、社内教育も含めた社員力の強化に③戦略経費を使っています。

他には、全国1,500を超える葬儀社がオリジナルの会葬礼状を導入しており、これは⑤ストックビジネスや⑥顧客の分散と多様化に繋がっています。

ご遺族の心をカタチにする、というコンセプトは全従業員に浸透していて(⑨経営目標の設定)、会葬礼状の依頼から原稿の納品までが1時間程度という他社がまねできない圧倒的なスピード感で対応しています(⑩人の生産性重視)。

社長は、人間の不幸の感情の寄り添った仕事に一生懸命な社員の皆さまのために様々な福利厚生や制度構築に注力されておられ(⑪社員への利益還元)、不幸ではなく幸福な場面でも寄り添ってもらえるようにと、ブライダルに関する事業を開発、開始されたそうです(⑧長期思考)。このような経営の全体感については⑬ROA思考や⑯財務自立主義が基本で、キャッシュフローを意識していることが分かりました。

この事例のように、財務アタマの切り口がストーリーのように繋がっていることが理想的です。皆さんの会社の財務アタマの状況はいかがでしょうか?是非、上記の表を参考に、見直していただきたいです。

ここまで読み進めていただけたのであれば『財務が難しく感じなくなるシンプルな思考法』が何か、というのは分かっていただけていると思いますが、それは「手元にどれだけ多くのキャッシュ(=お金)を残しておくか」です。

決算書は色々な情報を教えてくれます。単純に売上がどうか、利益が出ているか、だけでなく、3期分繋げれば経営の流れを掴むことができますし、業界平均や競合他社の経営指標と比較すれば、ビジネスモデルの良し悪しを見ることもできます。

しかし、大事なのは「会社を絶対につぶさないこと」で、そのためには「手元にキャッシュが残っている」状況ならばつぶれることがありません。ここをまずは強く意識し、経営を行っていただきたいです。

今回の記事が、皆さまの経営にお役立ていただけますと幸いです。
次回の【ミニ社長塾】も、どうぞよろしくお願いいたします。

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