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書評(国外ミステリ)

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【書評】この本にモラルは存在しない『他人事』(平山夢明)

【書評】この本にモラルは存在しない『他人事』(平山夢明)

ゴミはゴミ箱へ。
人を傷つけてはいけません、まして殺してもいけません。
そんな当たり前が通用しないのが、この『他人事(ひとごと)』という本である。

今回3つのポイントに分けて魅力を紹介したいと思う。

『他人事』のいちばんのポイントは?

「モラル」の「モ」の字もないところ。
無秩序の中に放り出されるかのような感覚に陥り、読んでいくうちにだんだんその世界観が快感になっていくから不思議なのだ。

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[書評]彼女の顔の秘密を知れ『彼は彼女の顔が見えない』(アリス・フィーニー)

[書評]彼女の顔の秘密を知れ『彼は彼女の顔が見えない』(アリス・フィーニー)

まず、秀逸なのがタイトル。
このタイトルを一読して、あなたはどんな内容を想像するだろう?
彼は、本当に彼女の顔が見えないのだ。

物語は冷え切った夫婦関係をもとに戻すべく、妻のアメリアが夫のアダムを誘って郊外の教会へと車で出かけていくことから始まる。
豪雪の中やっと宿泊先の教会に着いたかと思うと、奇妙な出来事の数々が2人に襲い掛かるのだ。

一見、ただの夫婦間サスペンスかと思う。
私も途中までは、

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だれのための幸せの物語?【瞳の奥に】(サラ・ピンバラ)

だれのための幸せの物語?【瞳の奥に】(サラ・ピンバラ)

この物語で幸せになったのって……。

え??



サラ・ピンバラの「瞳の奥に」を読んでいる間中、私はずっと「えー!?」と言っていて、読了しても「えー!?」と言っていて、本のことについても考えてる間も「えー!?」って言っていた。

つまりこの本は「えー!?」と言わせる物語なのである。

何が「えー!?」なのか。

その前に1つ。あなた、この本を読む予定あります?ないなら、この先へどうぞ進んでくだ

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