湊川晴斗

童話作家を目指して、賞に応募する生活です。

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  • 童話

    自作童話ですが、習作です。上手くなるためには書くしかなく、投稿生活を乗り切るための土台となる作品を集めました。未熟なものもありますが、ご一読いただければ嬉しいです。

  • ショート・ショート

    ショート・ショートを集めました。ここの作品はどちらかといえば大人の方向けに、ちょっとブラックなものも含めて書こうと思っています。

  • 投稿生活こぼれ話

    童話作家を目指す日々で起こったこと、思ったことを書いていこうと思います。

  • 読んだ本・レビュー

    読み終わった本のレビューを書きます。本のタイトルの前に、絵本や小説などジャンルをつけますので、気になったものを読んでいただければと思います。新たな本との出合いにつながれば嬉しいです。

  • 詩は自分の気持ちに一番近い表現です。ちょっと暗い感じのものが多めになると思いますが、どこか引っかかるものを覚えて下されば嬉しいです。

最近の記事

童話『アリ、そしてキリギリス』後編

 虫の音楽コンテストには多くの歌自慢の虫達が集まっていました。キリギリスだけでなく、コオロギ、鈴虫、ウマオイ、松虫。どの虫もコンテストに向けて練習してきたのでしょう。歌も演奏も、みんな上手です。でも、とキリギリスは思いました。アリは自分が一番だと言ってくれた。自信をもとう。ここで弱気になってはいけない。 「次、野原から来たキリギリスさん」  いよいよ自分の番です。キリギリスは自分の歌を、目を閉じて聴いていたアリを思い出しました。今も彼が聴いてくれている。そう思うと緊張がほどけ

    • 童話『アリ、そしてキリギリス』前編

      「仲間がみんな一生懸命働いているのに、君はいいのかい?」 「いいのいいの。それよりもう一曲聴かせてよ」  太陽の下であちこち歩き回って食べ物を巣に持ち帰る仲間を横目で見ながら、一匹のアリが大きな葉っぱが作る涼し気な陰で、友達のキリギリスの歌と演奏を聴いています。 「そうかい? じゃあ、この歌を聴いておくれよ」  キリギリスの奏でるバイオリンと澄んだ声が、風に乗って流れます。 「なんていい歌なんだろう」  アリは目を閉じて、うっとりと耳を傾けています。 「ねぇ、アリ君」とキリギ

      • S.S.『風は知っている』

         晴れ渡った空の下、私は石畳の坂を上っている。前にこの道を歩いてから、二十数年の時が流れている。  丘の上まで来て、大きく息をついた。ここは私の一番好きな場所だった。見晴らしが良く、空の広さも感じられる。遠くに見える街。流れていく雲。時間とともに色を変えていく空。見ていて飽きなかった。  若い頃はよくここへ来たものだ。つらいことや上手くいかない時は、いつもここへ来ると慰められた。風に包まれていると不思議と心が落ち着いた。姿は見えないが、風が一緒にいてくれるような気がしたのだ。

        • 画像遊び

          子供の頃、馴染みだったキャラをモデルに、画像を作って遊びました。 いろんなサイトで素材を見つけてきて、組み合わせて遊ぶ。これが意外と楽しいのです。今回の素材のほとんどは、いらすとやさんからですが、canva の無料素材も使ってます。ヘッダーを作る延長でしょうか。世代の違う方には分かりにくい所もあるかもですが、お楽しみいただければ幸いです。 巨大ヒーローもの 常に怪獣の後ろに回って戦う戦士。というか攻撃は絶対背後から。 戦士の名は、ウラトルマン! 普段は刑事として証言やアリ

        童話『アリ、そしてキリギリス』後編

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        • 連作ショート・ショート『鼻たれ神』シリーズ
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        記事

          童話『クスノキの鐘』後編 

           雨に打たれ、風に葉を揺らしても、クスノキの幹はどっしりとして動かず、枝ではたくさんの鳥達がひっそりと身を寄せ合っていました。静まり返った鳥達の頭の上で雷が鳴っています。 「クスノキのおじいさん、強いね。こんなにすごい嵐なのに、ビクともしないや」とカラスの子が母親に言いました。 「そうね」と母ガラスは子ガラスを羽で包み込みました。  丘の上に白い光が瞬き、少し置いて雷がとどろきました。今までで一番大きな音に地面が揺れ、その揺れはクスノキの幹から枝を伝い、鐘を揺らしました。錆び

          童話『クスノキの鐘』後編 

          童話『クスノキの鐘』前編

          「そろそろ巣立ちかね?」  梅雨もそろそろ終わりに近づき、空は何日かぶりに晴れ渡っています。丘の上のクスノキは、カラスのお母さんに声をかけました。数年前からカラスの夫婦はクスノキの枝を借りて巣を作り、子育てをしているのです。春に少し葉を落とすものの一年中緑の葉を茂らせる上に、丘の上のクスノキは幹も太く、四方に長い枝を伸ばしているので敵から見つかりにくく、巣を作るには最高の場所でした。 「そうですね。もういつでもって私は思ってるんですけど」  カラスのお母さんは、あちらこちらの

          童話『クスノキの鐘』前編

          昨日上げたS.Sは訂正したいので下書きに戻しました。スキつけて下さった方、読んで下さった方、申し訳ありません。

          昨日上げたS.Sは訂正したいので下書きに戻しました。スキつけて下さった方、読んで下さった方、申し訳ありません。

          童話『星の子の冒険』 後編

          簡単な前編のあらすじ 空から野原に降りてきた星の子。夜露のようにきらきら輝く星の子は、花や虫達と友達になりますが、その様子をカラスがじっと見ていました。  カラスは光るものが大好きです。巣の中にガラスや金属でできた光るものをいっぱい集めています。星の子はそのどれよりもピカピカしていて、欲しくてたまらないのです。  カラスが急降下しようとした時、笛の音が流れてきました。カラスは慌ててブレーキをかけ、羽をばたつかせて高く昇り、地面の虫達は草の陰に隠れ、鳥達は飛び立ちました。人間

          童話『星の子の冒険』 後編

          童話『星の子の冒険』 前編

           春の終わり頃のことです。東の空から昇ってきた月の明かりが野原に降り注ぎ、草花の葉っぱが宝石のように輝きました。まるで野原が星空になったようです。もちろん本物の宝石ではなく夜露が光っているのですが、草花は大喜び。 「ほら、大きな指輪みたい」とタンポポがギザギザの葉についた夜露を嬉しそうに見ています。 「私はティアラを載せたみたい」とカラスノエンドウが小さなピンク色の花についた夜露を落とさないように気をつけながら言いました。  花が咲かない草も、花が終わって葉っぱが出始めた木も

          童話『星の子の冒険』 前編

          S.S.『アウトテイク』

          「Take1」 a.m.1:30. 時折車が追い抜いていく以外、人気のなくなった通り。歩道を歩く自分の足音が闇に吸い込まれるように消えていく。 背後からスピードを出した車が迫り、追い越しざまにライトが歩道にうずくまっていた黒猫を照らした。瞳が青と黄色に光り、猫はオレの目の前を横切って車道に飛び出し、そのまま渡り切って闇の中に消えた。 あの黒猫も孤独な身か……というより前を横切られた……。不吉な予感。よくないことが起きる前兆。ふとそんな思いが頭をよぎる。 迷信だ。後戻りはしない

          S.S.『アウトテイク』

          たまさか

          たまさか 1、たまたま 2、めったにないこと あるnoterのコメント欄で、これはどうなんだと思うものを見かけました。詳しくは書きませんが、乏しい読解力のくせに思い込みが激しく、他のコメントに攻撃的。ネットあるあるです。でもそれだけだったら、気分は悪いですが記事にはしません。 作者の努力という言葉が引っかかったのです。笑うしかありません。どんなジャンルの作品も簡単にはできません。でもあくまで努力は舞台裏にあるもので表に出せないものであり、作者の努力が想像できることも感動の

          記憶の蓋

          昔が甦る 現実との違和感 記憶は五感とつながり こうじゃなかったと 異を唱える 人も、物も、同じところに留まらないのかもしれない。 良くも悪くも時とともに変わってゆくのだろう。 これもその一つなのかも。 なんか味が薄くなったと思ったのです。 久しぶりでしたが昔馴染みのおやつ。関西人のDNAに吉本新喜劇が刷り込まれているように記憶に定着した味。その記憶が、薄っと訴えてきました。 元々味覚が鈍く、何でも普通においしく、マズいと感じることはそうそうないのですが、そんな僕が違和感

          花曇り

          今日も散歩に行ったら桜が満開でした。 桜はここでおしまい。今年の花見は充実してました……これで? という声が聞こえてくるような。 いかがでしたか? また散歩にお付き合い下さいませ。

          R.I.P.

          27クラブをご存知でしょうか? 27歳で命を落としたミュージシャンやアーティスト達のことです。ご興味のある方は調べてみて下さい。著名な人物が多いです。 この記事で取り上げるのはミュージシャン、ピート・ハム。バッドフィンガーのリーダーですが、どれぐらいの方がご存知でしょうね。 1975年4月、彼は自ら命を絶ち、27歳で世を去りました。 悲劇のグループといわれるバッドフィンガー。その理由を知りたくて読んだのが上の洋書(僕のは紙の本)。僕の英語力では正しく読んだと思えないし、もの

          花散歩

          ずっと部屋に籠っているとくさくさしますので、少し散歩してきました。 天気がいいのでトレーナー一枚でしたが、それでも汗ばむぐらいの陽気。この間まで寒いって言ってたのに春ですね~。でももう少しすれば、暑い。まだ4月やのに、なんて言うようになるんでしょうね。 また散歩にお付き合い下さいませ~

          S.S『下車前途無効』

           ふと思い立って旅に出た。目的地を決めず、路線図で最初に目についた駅までの切符を買い、電車に乗った。  馴染みのある景色、住み慣れた街を後に、初めての、再び来るかどうか分からない街を一人電車に揺られていく。同行者がいてはなかなかできない、こういう気ままな旅がいい。  車窓を流れる風景を見ながら、ふと惹かれたら降りる。切符には下車前途無効と書いてあるので料金が多少惜しくはあるが、ぼくは行き当たりばったりの旅が好きだ。  散策してみると思ったほどではないこともある。直感など当てに

          S.S『下車前途無効』