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雨のちふたり

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かほとちはるによる、アンソロジーマガジンです。 更新は月に一度。同じテーマでそれぞれに考えたことを綴ります。
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記事一覧

「一度は行きたいあの場所」ワインレッドに包まれながら、幸せのベルを鳴らしたい

「一度は行きたいあの場所」ワインレッドに包まれながら、幸せのベルを鳴らしたい

 昔から、ドレスに強いあこがれがある。というより、子どもの頃はむしろお姫様にあこがれていたのかもしれない。自分に似合うドレスを着ている人は魅力的だといつも思う。

 私もいつか、大切な日にとびっきりのドレスを着たい。そんな幼い頃からの夢は昨年めでたく実現した。

 大学の卒業式。日本では羽織袴で出席する人が多いように、カナダではドレスを着て式に参加する人が多い。もちろん和服も素敵だ。京都で十二単を

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誰にとっても幸せな

 別に「一度は行ってみたい」なんて願わなくても、時がくれば自動的に訪ねることにはなるのだけれど。
死後の世界というものがもし実在するなら行ってみたいと思う。

 天国とか地獄とか、死んだ人は空から見ているとか。そういう話題は嫌いではないし、想像力を掻き立てられるものだけれど、別に心から信じているわけではない。不思議な体験をしたこともないし、死を意識するような経験もないので正直真剣に考えたことがない

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『猫について』全て君が教えてくれた

 我が家の猫は気まぐれで人の言うことなんてまるで聞かず一つもこちらの思う通りにならない。飼い主には太々しい態度なのに、知らない人がくると途端に警戒モードになる。なんて可愛いやつ。
名前はアクアという。去年の3月に生まれたラガマフィンの女の子で、誕生石のアクアマリンから名付けた。
どんな良質なぬいぐるみだって霞んでしまうふわふわの毛並みは白混じりの灰色。手足の先は靴下を履いているみたいに白い。瞳は青

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「犬について」伝えたい、大好きをずっと

「犬について」伝えたい、大好きをずっと

 6歳から18歳まで犬を飼っていた。コナンという名前のミニチュアダックスフンド。人なつっこくて穏やかな性格、ちょっといたずら好きで、でもとっても優しい、フランスパンみたいな形の宝物。

 私の過度な動物恐怖症の克服、それがコナンを迎える決め手の一つになった、というのはずいぶん後になって知った話。確かに当時の私は動物を極度に恐れていた。母曰く、きっかけは2歳の時、保育園の遠足で動物園に行き、のんきに

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「春夏秋冬の冬」マイナス38度の世界で見つけた宝物

「春夏秋冬の冬」マイナス38度の世界で見つけた宝物

 2020年10月、私はそれまで4年半住んでいたバンクーバーを離れ、現在暮らしているクイネルという街に移り住んだ。

 全く予想していない出来事だった。

一通のメール

 バンクーバー市内のLangara Collegeという二年制短期大学でカナダの社会福祉を勉強し、卒業した私は今度は四年制大学の三年次に編入したくて、University of Northern British Columbia

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「春夏秋冬の冬」 何かに足を引っ張られる/優しいコーンポタージュ

 冬という季節は本当に良くない。
寒いし肌は乾燥するし、着るものが多くなるから洗濯物も増える。クリスマスやお正月というビックイベントがあるとしても、冬を好きになるにはまだまだ足りない。
ただ冬がいかに嫌いかという話をしてもつまらないし陰鬱な季節が加速するだけなので、今回は冬にまつわる素敵な思い出を紹介しようと思う。

何かに足を引っ張られる話 「足を引っ張られるからやめなさい」
寒さのせいで足が冷

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「二十歳のあなたへ」 From 佳歩 to 千春

二十歳のちーちゃんへ

 こんにちは、この手紙を書いている現在は2022年、私たちは27歳になっています。

 二十歳のちーちゃんに伝えたいことがあって、今回筆を執りました。

 二十歳のちーちゃんは、苦しんでいると思う。いっぱい傷つけられて、ひどいことを言われて、そんな中でただ絶え続けなければいけない環境に疲弊しているかもしれない。

 でもね、ここから人生は結構変わる、もうすぐ暗闇に優しい光が

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[二十歳のあなたへ], From, 千春, to, 佳歩

 二十歳の佳歩へ、こんにちは。
現在の私は27歳。7年前のあなたに手紙を書いている。
元気にしている?ご飯をちゃんと食べて眠っているかな。あの頃は今より無理をしてしまいがちだったから心配。
私の記憶では、佳歩はあまり元気ではないかもしれない。いろいろあって、疲れちゃってると思う。大丈夫かなんて聞けないくらいに。
こんなことを書くと幻滅されてしまうかもしれないけれど、私は少し安心したの。
大学に入り

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「春夏秋冬の秋」ほろ苦くて、でも愛しい

秋というのは、暑くもなく寒くもなく、集中して何かに取り組むのに適している季節だというのは確かにそうだと思う。だから、読書の秋とかスポーツの秋とか芸術の秋というフレーズが定着したのだろう。

 私にも、全力で打ち込んだ秋というのがある。

 中学3年生の11月下旬、ピアノのコンクールに出た。受験生ということもあり、「ちゃんと9月と11月の模試で、高校の内部推薦に必要な点数を取るならコンクール出ていい

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「春夏秋冬の秋」 気付かされる季節

 金木犀は自分の力で増えることができないらしい。ソースはTwitterなのでどこまで本当かわからないけれど。

自分で増えることができないはずの金木犀が日本の至る所に花を咲かせるのは、金木犀を望む人が植えて増やしたからだという話らしい。
そうだとするならなんて幸せな花なんだろう。。だって金木犀は皆望まれて生まれたということだ。人間の中には望まれずに生まれる人もたくさんいるのに。
あの甘い香りで人間

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「かけがえのないもの」 私らしく生き続けるために

 最近体力の衰えを感じている。
少し早歩きをしたり階段を登ったりすると息切れを起こす。旅行に行くと疲れて体調を崩すことが多くなった。普段より長く歩くだけで筋肉痛に襲われる。
理由は単純明快、運動不足だ。元から運動は好きではないし、テレワークで外に出る必要がないことも体力の低下に拍車をかけていると思う。ここまで書いておきながらとくに改善するつもりがないことが1番の問題かもしれない。
別にそれはいい。

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「かけがえのないもの」休まる+整うという感覚

 カナダで暮らし始めて6年半、確実に向上したのは「セルフケアの意識」だと思う。

 留学を始めた当初、私は結構ボロボロだった。「二十歳のクライシス」と呼んでいるのだが、ホルモンバランスの乱れ、体質の変化、トラウマ級のダメージがのしかかった心の不調等々に日々翻弄されていた。

 例えば、月経不順、月経過多、PMS(月経前症候群)が深刻で、月の半分以上の日常生活に悪影響が出ていた。生理前の頭痛、肩こり

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「春夏秋冬の夏」 あの夏はもう二度と

 今年の夏は短かったように思う。蝉の声は昨年より少なかった気がするし、晴れの日よりそうではない日の方が多かった気がする。
けれど、別に過ごしやすい季節というわけではなかった。気温は順調に過去最高を記録し、熱中症で運ばれる人は跡を立たない。「不要不急の外出は避けてください」という台風の最中のような注意が流れ、ニュース記事を読むだけで汗をかきそうだった。
こんな季節に外に出るなんてとんでもないと思って

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「春夏秋冬の夏」麦茶とラーメンとピニャータと私

 今年の夏は1ヶ月ほど日本に一時帰国した。「日本の夏はカナダと違って暑いでしょう」「せっかくカナダの夏が一番良い季節なのにもったいない」と言われることもあるが、私は日本で過ごす夏休みが好きだ。その中でも、毎回帰国すると東京周辺に住んでいる友人たちの家に泊めてもらいながら1週間ほど「会いたい人たちに会う旅」をするのだが、今回もその期間面白いことが目白押しだった。

グラスに夢中になりすぎて中身の麦茶

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