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翳し、散る。弾ける。

1. 散る。

 彼の写真を月に翳してみる。
 朧気にも、その心を見透かせないかと考えていた。

 誰でも包み込んでしまうような優しい雰囲気に小さじ一杯の哀愁。周囲の人を一目で惹き付けてしまう彼。

 真面目で寡黙。容姿端麗だが伏し目がちな彼。

 眼鏡の奥の彼の眼は、よく見ると微かに昏い。
 水底のように。宇宙のように。
 見れば見るほど深く、そこには未知の世界が広がっていた。

「…。」

 月の光が眩しい。
 結局その日、彼の心やその未知に潜む何かを見ることは叶わなかった。

 いつか知れたらいいのに。
 淡い期待は誰にも言わず、星とともに夜空へ散らした。

2. 弾ける。

 太陽に彼女の写真を翳してみた。
 彼女のほうが眩しく見えるのは、きっとこの眼鏡のせいだ。…知らんけど。あんま自信ないけど。

 裏も表もない、というのは彼女のことだと思った。
 どこまでいっても真面目でポジティブな彼女。
 優柔不断なところもあるが、それを含んでもなお真っ直ぐに目を見つめてくる彼女。

 彼女の眼は澄んで明るい。
 春の日向のように。鳥が巡る青空のように。

「…。」

 さっき買ったサイダーをひとくち飲む。
 気づけば炭酸は抜けて、ぬるくて甘いジュースになっていた。

 彼女への淡い期待は心の中でしゅわりと弾けて、青く爽やかな音を立てていた。


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