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我が家の「星の王子さま」

伯父夫婦が関西の方から仕事のついでに少しだけ我が家に遊びにきた。
現在の伯父の奥さんはなんと私の年下(!)だ。

初め話を聞いた時は正直腰を抜かしそうになったが、伯父らしいと言えば非常に伯父らしく、妙に納得もした。
今では二人はとてもお似合いの夫婦で、見ていて違和感もない。

伯父は、私にとって家族の中で感性が一番近く、私の「考え」というよりは「感覚」をわかってくれる人だ。

たくさん喧嘩もしてきたけれど、私が40歳近くになっても未だにこうして忘れた頃にふらりと様子を見にきてくれて、一瞬だけ、本当に一瞬だけ時間を共に過ごす。

私は伯父が小さい頃、彼が本当に「宇宙人」だと思っていた。
伯父が私に言ったのか、私が思ったのか、始まりは定かではないが、
いつの頃か、そんな風に信じるようになった。

伯父は、私がまだ小学生になったばかりの頃に、
サン=テグジュペリの「星の王子さま」をプレゼントしてくれた。

おそらくそれが何かのきっかけだったように思う。

あの本を読んだ時の「不思議な感覚」を今も私は忘れない。
少し恐いような気持ちも抱いたことを覚えている。
当時まだ小学生になりたての私にとって、
内容は少し難しすぎたけれど、

ただ、この物語の世界は、当時まだ父を亡くして日の浅かった私にとって、
「亡くなった父のいる世界」と何かつながっている話のような気がしたことだけはとてもよく覚えている。

そして、この物語の「星の王子さま」のように、伯父は宇宙から来て
今、偶然地球に立ち寄っているだけなのだ、と私は思っていた。

実際、はたから見ると伯父はそういう感じの人生を送っていて、
この本をプレゼントしてくれた前後は、世界中を放浪しているまさに旅人だった。

だから、伯父は宇宙からふらりとやってきた人だという説明が当時の私にはとてもしっくりきたのだ。

伯父は私の亡くなった父と同じ年齢で、父が自死した時もその後のあれこれを私の知らないところでたくさん面倒を見てくれた。

当時はまだあった「父親参観」に来てくれたり、
父の葬儀の時に、お寺でピアノを弾くよう背中を押してくれたのも伯父だ。
この経験がなければ今の私の音楽活動はない。

そう思うと、私の人生の節目節目には、
どこからともなく現れて何かと足跡を残していく。

彼は我が家の「星の王子さま」だ。

山口春奈


父とピアノの話はこちら


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