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ブログ「My blessed days」

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仕事のこと、子どもたちの日々のこと、私自身のことなどを書いています。
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#エッセイ

「たわし」と祖父

「たわし」と祖父

キッチンで洗い物を終えてシンクをたわしで洗っている時、
私はいつも亡くなった母方の祖父を思い出す。

私は自分の父が亡くなった6歳から、実家を出る15歳までは母方の祖父母と一つ屋根の下で暮らしてきた。

いかにも家長、という風格なのだけどとても優しく、祖父には本当にかわいがってもらった。

祖父は男ばかりの10人兄弟の真ん中で、農家の家から飛び出し、事業を始めた人だった。

そんな祖父は月初めには

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愛はずっとここにあったんだ。

愛はずっとここにあったんだ。

愛はいつでもそこにあった

父が亡くなった時も
私は愛されていないと一人捻くれていた時も
愛はいつでもそこにあった

私の中にもあって
私はいつも愛に囲まれていて
これまでも
これからもずっと囲まれているのに

「愛されていない」と感じていたのは、
私が心を閉ざしていたからだった。

私が自分の愛し方を知らなかったからだった。

「私なんて愛されるに値しない」と
他の誰でもない、私自身が思っていた

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天国へのエレベーター

天国へのエレベーター

寒い冬の朝に私は母から父が亡くなったことを聞かされた。

私が6歳の時だった。

大晦日の日に仕事に行ったきり父は行方不明になった。
年が明け、もう立春も近づいてきているころ、父は変わり果てた姿で家に戻ってきた。

父の元気な姿を覚えていてほしいから、と私と弟は父の最後の姿を見ていない。

父は「行ってくるね」と、当時住んでいたマンションのドアから出て行った。

それが父を見た最後だ。

あの時は

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何を発するかではなく、耳をすませる。

何を発するかではなく、耳をすませる。

私は物心ついた時から歌うことが大好きで、「ハモり」というコーラスの存在を知ってからは、誰かの声に重ねることが大好きでした。

今はソロでも活動していますが、10代から活動しているユニットでも、「ピアノ&コーラス」という立ち位置で、ステージの真ん中から一歩下がり、ピアノを弾き、歌い続けてきました。

一人対一人で声を重ね合うときも、複数人で声を重ね合うときも、

私が一番大切にしているのは「ハモる相

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言葉

言葉

誰かに言葉を伝える時に、本当に伝わるもの。

それはその言葉を選んだ背景だったり、その言葉を使おうと思った動機や気持ちだと思う。

「ありがとう」という一言とっても、

それを伝えたタイミング、
なぜ言おうと思ったのか、

そういう色んなことが「ありがとう」という言葉の中に溶け込んで相手に伝わる。

けれど、相手に伝わることがいつも自分の本心と一致しているとも限らない。

こう解釈してほしい、と受

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写真と過去

写真と過去

実家から送られてきたアルバムの写真を整理している。
両親の子ども時代のものから、今の自分の子どもたちの分まで。
ざっと60年分くらいの記憶を土曜の午後に一気に振り返った。

母は「あんたの七五三は七歳の時だけやったはずやで。」とついこの前話した電話で言っていたけど、写真館で撮った3歳の七五三の写真が出てきた。

人の記憶は、曖昧だ。
写真の中の女の子は、今の私の3歳の娘と瓜二つだった。

30年以

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「名もなき人」

「名もなき人」

子どもたちの通う保育園は市営団地に囲まれるようにして建っている。

「50年前に建てられたときはね、ここは子どもの送り迎えのための幼稚園バスで道が渋滞していたのに、今では訪問介護やデイサービスの車でいっぱいだよ。」

と、以前保育園からの帰り道、道ですれ違ったここで長年住んでいるおばあちゃんが、話してくれたことがあった。

実際、保育園の駐車場から保育園までの百メートルほどの道を歩いていると、出会

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言うことは聞かないけど、やることは真似する子どもたち。

言うことは聞かないけど、やることは真似する子どもたち。

私は子育て7年目、7歳、5歳、2歳のお母さんです。
その傍らでミュージシャンもしています。

長男が1歳半の頃から転勤族になり、東京、福岡、富山、名古屋と地方をほぼ1年半に一度のペースで転勤を繰り返してきました。

そうなると、
幼稚園はどこにしよう?
小学校は?
習い事は?

と子どもの教育について、腰を据えて考えたくても、移動が多いとせっかく吟味したのにまた引越しして一から・・・ということばか

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「しあわせのハンバーグ」

「しあわせのハンバーグ」

私は小さい頃からお母さんのハンバーグが大好きだった。

噛むとジュワッとお肉と玉ねぎのおいしさが溢れ出して、ついもう一個、もう一個と手が出る。

子どもサイズのころん、とした、ぷっくりかわいいハンバーグ。

それは、私にとって「しあわせのハンバーグ」だった。

マヨネーズ、ケチャップ、お醤油、ウスターソースを混ぜて作る家のソースも大好きだった。このソースがある時ばかりは私も苦手だったブロッコリーや

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2200円で買った豊かさ。

2200円で買った豊かさ。

新しいネイルカラーを買った。
植物由来のもので、値段は2200円。

高い?

安い?

私にとっては清水の舞台から飛び降りるレベル!

というのも、私はピアノを弾くので爪を伸ばすこともした事がないし、ネイルサロンにも結婚式の時に一度行ったきり。その時もジェルネイルの密閉されたような閉塞感が耐えられなくなって寝てる間にジェルネイルを手で剥がしてしまってネイリストさんに怒られる始末...

そんな経

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泥棒と祈り

泥棒と祈り

私は父が6歳の時に亡くなってから、二つ年下の弟と、母、そして母方のおじいちゃんとおばあちゃんと暮らしていた。 

当時おじいちゃんは小さいながらも会社を経営していたから、私は片親になったけれど生活には困らなかった。むしろお父さんがいた頃より裕福に暮らせるようになったということをなんとなく子供心にも感じていた。

お父さんが亡くなって数年は、彼の死が突然だったこともあり、転がり込むようにおじいちゃん

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死んだ人たち。生きている私。

死んだ人たち。生きている私。

今年はお盆に誰のお墓参りにも行けなかった。

代わりに、天国にいる私の大好きな人たちの写真を、
自分の部屋の大好きな窓辺の、お気に入りのものを並べているところに飾って、好きな時に話しかけたり、手を合わせたりしている。

そこは家の中で一番綺麗に朝日と月が見える場所だ。

実際にお墓の前で手を合わすことも大切だと思うけど、
私はこの窓辺で思う存分写真の中のみんなの前で、
生きている人にはなかなか見せ

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