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閏年の前に。【シロクマ文芸部】参加記事。

#シロクマ文芸部  企画内容「閏年」から始まる 参ります。

閏年の前年に、あなたは手の届かない場所へと旅立った。あの日は、腹立たしいほどに雲1つない青空が、ひとりきりになった私の頭上に拡がっていた。北国の秋は、直ぐ後ろに冬が控えている。眩しいほどに差し込んでくる秋の日差しの中、雪虫が乱舞していた。

「ねえ、あなたは知っていたかしら?雪虫、雪蛍ゆきほたるなんて雅な呼び方をしていたあなたは。あの虫はね、アブラムシの一種なんですって。風情も何もありゃしないわ。...…でもね。雅も風情もいらないのよ。人が心を通わすには、別のものが必要だったのに......」

何を呟こうと、既に全ては独り語り、問わず語りになってしまう。ひとりだけになった部屋の夜は、しんとした空気が耳鳴りを起こしそうなほど冷え切っていた。

如月、弥生。もうすぐ冬が終わろうとしている。今年の2月は閏年で、いつもの年よりも一日だけ多い。4年に一度だけ訪れる29日に、私は何をしようか。とりあえず、あのひとが好きだった中華おこわを炊くことは決定だ。

私は静かに立ち上がり、エコバックと財布を手に持った。そうだ、電子マネーも忘れてはいけない。チャージしたばかりなのに、現金買いしたら勿体ないものね。

閏年の2月29日は一週間後。去年と変わるところのない、変わり映えのない日々。ただひとつ、あなたが欠けたことを除いて。


  --Fin--


拙稿題名:閏年の前に。
総字数:556字(原稿用紙一枚半弱)

よろしくお願い申し上げます。

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