【読書メモ】カウンセリングの理論(第1章序論から第3章ロジャーズ)


第1章 序論


第1節カウンセリングの定義

◆カウンセリングの実践家として自分なりのカウンセリングの定義を作らなければいけない。それには正誤はない。自分がクライエントに一貫した反応を示すためのもの。

私なりの定義は、「クライエントの人生を知ることであり、クライエントの理解者としてその自律をサポートするもの」だと思う(今現時点)

◆この本でのカウンセリングの定義は「言語的および非言語的コミュニケーションを通して相手の行動の変容を試みる人間関係」である。カウンセリングの中心概念は「行動の変容」であり、その人を理解することというのは行動の変容の手段。ただ楽しかった、暖かかっただけでは不十分。

◆行動の変容=行動に多様性・フレクシビリティが出て来ること
非言語・言語の重点の置き方は理論によって違うがやろうとしていることは同じ

◆カウンセリングは人間同士の感情交流であり人間関係。どんなカウンセリングも親子関係に似たものがある

第2節カウンセリングの特質

◆心理療法と比べたカウンセリングの特質は対象が多様であり幅広い学問・心理テストなどをこなせないといけないことである=求められるのはスペシャリストよりゼネラリストとしての役割

◆理想は何かひとつのことについてはスペシャリストでありつつ他方ゼネラリストの役割も果たせることである

◆心理療法と比べたカウンセリングの違い2つ目は、対象が健常者であるということ。つまり現実生活に適応する能力のある人の自己実現を援助(=教育)することが主な目的となる

◆日常会話と比べたカウンセリングの特質として「予測性」がある。日常会話はその場の会話が楽しいからしているものであって、それが相手にどういった効果をもたらすかを考えるものではない。一方カウンセリングであh「今、ここ」の感情交流をするとどういったことが起こるかを予想しながらしている。カウンセラーは理論の研究と実践に励むことで理論的に意図された会話をすることができるようになる。


◆教育と比べたカウンセリングの特質として、教育は文化の伝達であり社会化であるのに対し、カウンセリングは特定個人の維持や特定個人の目標達成の機能が強い

◆宗教と比べたカウンセリングの特質として、教義がないことである。人は各自で人生のガイドラインを作る。個人の外的自由(職業選択の自由や科目選択の自由、住居の自由など)と内的自由(心理的束縛からの自由)を最高に価値のあるものと考えている。

第3節カウンセリング理論

◆理論とはある事実を概念化(一般化・抽象化)したものの束である。理論があることで、結果を予測しやすくなり仮説を生み出しやすい。そして現象を整理することができ事実の説明や解釈が容易になる。

ケースカンファレンスはある意味、発表者のケースの中で生じる現象を理論に基づいて整理し、解釈していくことでこの先どうなっていくのかという予測を仮説だてて今後の働きかけの方針を立てる場であると言える

◆カウンセリングとは❶人間とは何か❷性格とはどう形成されるか❸問題行動はどうして起こる❹なおるとは何か❺目標達成のためにカウンセラーが何をなすべきか❻目標達成のためにクライエントが何をなるべきかという6つに対する答えである

◆カウンセリング理論は、同じ理論を用いたとしても、カウンセラーによって違う結果が生じる可能性が高い。これはカウンセラーの性格が違うからであり、カウンセラーは臨床家として自分に合った理論を構築していく必要がある

◆自分なりの理論を構築するには❶便利さ(使いやすい単純なもの)❷守備範囲の広さ(いろんな人生の諸事象に使えること)❸実証性(他人と共有できるもの)が条件となる。

◆既存の理論を忠実にコピーするのではなく、それらを参考にしながら自分なりの理論を持っていくのが実践家として必要なことである。一方で研究者としてはなるべく既存理論に忠実になっていく必要がある。カウンセラーは研究者と実践者としての二面性がある

第4節折衷主義

◆折衷主義とはクライエントとの面接段階に応じて最も適した方法をとる立場のこと。既存の各理論から活用できるものはなんでも使うという立場。

◆熟練したカウンセラーほど学派の相異がなく、クライエントは「先生は私を理解してくれた」「先生は暖かかった」といったリレーションについて感想を述べていた。つまり、どの学派に立つかはさして重要ではなく、クライエントとのリレーションづくりに忠実になった方がいい。

◆完璧な学派が存在するわけではないため、各理論を相互補完して使わなければならない

◆人のこころの悩みは社会文化が変動するにつれて複雑化・多様化している。心の悩みが多様化しているということは、それに対応するための理論もなるべく多くの理論を自分なりに統合する必要がある

第5節折衷主義への反論

◆特定の理論を数十年もかけてマスターしないと折衷主義が扱えないというわけではなく、自分の必要に応じて取り入れるのが良い

◆気が強い人がそれをコントロールするためにロジャーズを学ぶ、気が弱い人がそれを克服するために精神分析を学ぶといった、反動形成が働いているのではないか。理論で防衛している。

◆クライエント中心で考えれば、自分の理論にとらわれたり新しい理論に嫉妬せずどんどん取り入れるべきである。

第2章精神分析理論

第1節精神分析理論の特質

◆骨子は2つ。1つは幼少期の体験が性格を形成すること。2つは無意識があらゆる行動の原動力であるということ。→無意識の意識化が精神分析の骨子

第2節精神分析の人間観

◆人間はイヌネコと同じように本能のかたまり。本能には2種類あって、「生の本能=自己保存本能」「死の本能=自他破壊本能」

◆生と死の2つの本能の調和的共存が好ましい状態

◆生の本能を「リビドー」死の本能を「タナトス」という。

◆リビドーを性エネルギーと解釈されているが、実際はもっと広く生のエネルギーととらえると良い

◆人間はこれらの本能を満たしたいと思う。これが快楽原則である。だが、イラついたからといってすぐに喝を入れてたらうまくいかないので空気を読むなどする。これが現実原則である。

◆人間は現実原則に従いつつも快楽原則を満たそうとする動物である(イヌネコ、子供、幼稚な大人はこれができずに快楽原則に支配されている)

◆理想は現実原則が楽しくなること=現実原則と快楽原則が一致すること=昇華
ex人を殴りたい欲求→ボクシングで満たす

◆成長するとは現実原則に従えるようになるということ

◆過去から影響を受けていることでこれが上手な人と下手な人に分かれる→過去から自由になることが必要であり、それに必要なのが「無意識の意識化」

◆自分は人生でどんな問題に対決せねばならないのかを自覚して生きることが大切であり、悩みが解けなくても良い。=悩むべき問題を悩む人間が良い

第3節精神分析的性格論

◆現実的な判断をする部分が自我であるが、いちいち全てを意識的に判断するのは面倒なのでその一部が無意識化したものが超自我である

◆超自我は養育者の価値観と文化によって形成されるので、養育者や文化が歪んでいると歪んだ価値観を身につける可能性がある

◆エスは自我や超自我のエネルギー供給源である

第4節精神分析的面接理論

◆クライエントの自由連想と分析者の解釈が骨子となる

◆まずは性格分析(どういう性格のバターンを持っているかを分析し洞察させる)をして、その後内容分析(何をどのくらい抑圧しているか、なぜ抑圧するようになったかなど)を行っていく


◆性格分析は感情表現の方法の分析で内容分析は感情の内容の分析

◆感情転移させることでクライエントの新しい人間関係パターンを練習するための練習台になる

◆抵抗(面接を受けたくない、治りたくないという拒否の心理)をうまく処理できれば、深い層の感情が表出されるようになる

第5節精神分析の長短

◆守備範囲が広く、人間全体を捉えられていることは長所と言える。

◆分析者の権威主義や、社会文化的観点が不足していること(この家庭はどうしてこうなったのかなどまでは捉えられていない)が問題として挙げられる。

第三章自己理論

ロジャーズによって提唱された来談者中心療法の基礎理論
精神分析と異なり、カウンセリングと心理療法を同じものと考え、非医者にも心理療法の世界が開かれたことから広く広まった

◆精神分析よりも単純化された理論で、面接回数も少ない
◆患者ではなくクライエントとして横の関係で捉える考え方
◆よくなる力が人間に内在されているという人間信頼感
◆罪と罰という意識のあるキリスト教に対して、審判がない

第1節人間観

◆人間の本質は生物的なもの(有機体)であり、先天的な有機体が後天的な学習の結果である自己を取り入れ統合させている状態がのぞましい人間像

◆有機体の先天的傾向は精神分析の衝動的、動物的傾向とは異なり、「自己実現傾向」である。=よくなる力が内在している

◆ロジャーズは人間には本来智慧が備わっていると考えた→物事を判断するときに、頭ではなく身体で判断した方がいいという考えになる(人から毒されていない純粋な自分)

◆憎悪や反抗は自己防御の結果であり、自己の作用である

◆自己は自分の行手に立ちはだかる外界からのフラストレーションによって「私はこうだ」という思いから生じる自意識

◆自分が自分のことをどう思っているか=自己イメージ であり、自己イメージのことを自己概念という

◆有機体(先天的)と自己概念(後天的)なものが不離不則の状態が理想

自己理論からの性格論

◆人間観といった抽象的なものをカウンセリングで扱うためにはより具象的な性格論が必要となってくる

◆ロジャーズの場合は、現象学、自己概念、自己一致である

◆現象学とは、目に見える客観的な世界が我々を動かしているのではなく、目に見える世界をどう受け取るか、その受け取り方が我々の行動の源泉になるという考え方

◆客観的なものは変わらずとも、自分がそれをどう受け止めるかによって行動が変わる
つまり、自分としての客観的な条件は変わらなくとも、それの受け取り方(自己概念)によって行動が変わってくる

◆自己概念が性格(行動様式)の決め手であるから、性格を変えるとは自己概念を変えるということになる

◆如何にして自己概念を変えるかが中心となる

◆自己概念は他者の評価を取り入れて作ったもの
◆自己概念を変えるというのは怖いことであり、自己概念を変えざるを得ないと思ったときに自己概念の崩壊を防ぐために自己防御が生じる

◆自己防御は2つで1つは歪曲(頭の悪い自分が東大に受かったのは運が良かったのだ)
もう1つは否認(愛情深い自分が人を叩いたのは憎かったのではない。愛するが故だ)

◆自己概念を変えるための原則が自己一致するように変えていくということである。
これが治療目標

◆自己一致はあるがままの自分と思い込みの自分とが一致するという意味

◆あるがままの自分と思い込みの自分のギャップが大きい人が神経症者

◆人がなぜ自己不一致するのか→「ねばならぬ」にとらわれているから
つまり、他者から教わった価値観を疑いもなく信じ込んでいる

◆あるがままの自分を忘却し、願望の自分が本当の自分だと思い込む
→「私は万人に優しい人間である」と思い込むのではなく、「私は本当は自分勝手な人間であるが、周囲によく思われたいから万人に優しくしようと努めている人間である」という自己概念にした方が自己一致が進んでいて粉砕の恐れはない


第3節来談者中心療法

◆自己概念を変えるために自己不一致を自己一致に至らしめる面接

◆カウンセラーとクライエントの相互に防御のないリレーションがある。
このリレーションは、自己概念を突き崩すような恐怖を与えない=この人は自分の味方である、咎めない人であると思うような人間関係を体験させること

◆受容的許容的に聴くだけではなく、積極的に「私は〇〇と感じる」と自己主張する

◆面接初期では外在的事実を語ることが多いが、だんだんと面接後期では感情表出が増大する

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