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春、思い出すのは

「関東になんか絶対住めないし、住まない。地元にずっといるんだろうなぁ。」


そう言っていた、5年前の自分。
私は今日その関東で今年5回目の春を迎えた。

幼かった私は、東京での暮らしを想像したとき「自分には無理。静かに暮らしたい。東京には合わない。」とすべてをシャットダウンしていた気がする。
自分で、決めつけて。何も、知らないのに。


大学も地元から近いところにしたし、1度は就職も地元にした。「関東に行く」という選択肢はこれまで自分の中になかった。


そのときは付き合ってた彼氏もいたし、
祖父母を突然失っていた私は家族を失うことが怖く、両親のそばにいたいとも思っていた。
だから、地元にいるんだろうなぁ、と。
「このままでいいのかな」と思わなかったわけではなかった。でも、踏み出す気持ちはなかった。たぶん、楽だったから。だって、地元にいれば誰も傷つけないし、悲しまない。


社会人一年目は人にも恵まれ、たくさんの経験をさせてもらった。ただ、雇用形態や金銭面ではとてもきつかった。

自分のことが満足にできない、家計を助けたいのにできない。
それが自分の思ってた以上に重く、のしかかっていた。

それをきっかけに関東に出るということを考え始めた。
たくさんの人に相談した。家族、職場の人、友だち…

職場の人には残ってほしいと何度も言われた。
それに当時付き合ってた彼氏もいた。
長かったし、このままいけば結婚かなという感じだったからどうしようかと思い悩んでだ。

ただ、両親は今このときになって関東に出るということに反対はしなかった。
自分で選んだならいいと。あなたが幸せになれる方法を探しなさいと。


正直すごく悩んだ。
後ろ髪を引かれる思いだった。
人を傷つけてしまう、と。


悩んでいたときに大学の友だちの言葉を思い出した。
彼女は卒業したら地元を離れ、別の場所にいくという。
私は地元に戻るつもりしかなかったからほかの選択肢を最初から入れていなかった。

「はるはなんで地元に戻るの?いろんなとこ行きたくない?」
「行きたいけど…両親になにかあったときにそばにいられないのもいやだからなぁ。」

そんな私に対して彼女は、
「『けど』って思ってるんなら1回ちゃんと考えた方がいいかもね。家族に対する思いもわかるけど、いつかそれを理由になにかを諦めたり、思い悩んでたりしたらずっと後悔するような気がするよ。」
「そういうもんかなぁ〜」

バイトの休憩中他愛もない会話の中
たぶん彼女は覚えていない。
そして、私も深くは考えてなかった。


悩んだ。
行くか、残るか。
たった1年での決断は早いんじゃないか。
でも、ほんとは決まってた。
出るなら今だって。


なにに悩んでたかって結局
「人がどう思うか」だったような気がする。
これは当時の私にとってはすごく、大きな問題だった。


最後に私の背中を押したのは
あの他愛のない会話で言った彼女の一言だった。


私は関東に行くことにした。
これは本当に自分の意思で決断したことだったんだと今は思う。
それまでは「自分の気持ち」といいつつ、「相手への遠慮や流された気持ち」が先にきていた。どこか自分の気持ちが欠けてた気がする。


そして何も知らない、
知り合いも誰もいないこの土地で
リスタートをきったんだ。


なにもかも0の状態から始まった
ここでの生活は
自分が想像していた以上に
過酷だった。


それでも、今は
たくさんの人が自分のそばにいてくれる。
離れても応援してくれる人がいる。
好きなことをすることができる。
今の自分を好きでいられる。


頭でしか考えられてなかったあのころ
自分で自分を否定していたあのころ


出てきたことで失ったものもあるけど、
得たものの方が遥かに大きい。


そんなこんなで、5回目の春

毎年、一年前とはちがう自分を発見する。
今年はどんな自分に出会うかなぁ。

明日からまた、新しいスタート

#日記 #エッセイ #ブログ

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