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8/16-19 劇場稽古

うっ・・・。
劇場入りしてからのこと、レポートにしようと思っていたのに、いろんなことがありすぎて、現在、本番当日の朝まで更新できてなかった。タイトルの画像まで作ったのに。もったいないので本番レポートのタイトルにも使おう。

水曜日(8/16)に劇場に入って、木、金、と三日間、どんなことをしていたのか。

あ。
セットや音響、照明機材の仕込みなどは、その前々日から夜を日に継いで行われていました。ありがとうございます。
なので役者が入るのを「劇場入り」と言うんだと思います。きっと。

まずはオリエンテーション。
舞台監督ヒデさんによるセットや機構の説明です。
稽古場では再現できなかった明治座名物、回る舞台(盆)。
それを存分に活かしたセットとなっているので、まずみんなで体験してみました。
上に乗った状態で盆が回り始めると、電車が出発する時みたいな感じ。体幹の弱い僕なんかは、よろけて、隣のOLさんの靴を踏んで睨まれる状況です。
回っている盆に外から乗る時は、ランニングマシンに飛び乗るような、ちょっとしたコツが必要になったりします。
後で説明する場当たりでも、この回る盆の扱いは大変そうでした。

稽古場から一貫していることなんですが、舞台はとにかく安全を第一にしています。

薄暗い舞台上で回る盆に飛び乗ったり飛び降りたりする時に、どんなことが起こるのか何度も確認をしてました。
盆が回るということは、その上に載った巨大なセットも回るということなので、ぶつかったりしたら大変です。書いててもヒヤヒヤします。

で、場当たり。ーーー衣装もヘアメイクもして。

舞台には、真ん中をゼロとして、上手と下手に向かってそれぞれ8番まで番号がふられています。実際に書かれています。
合計、17ポジション。

そのマークを基準に、演出席から見ている板垣さんや当銀さんが、役者の位置を決めていきます。
全体の見え方のバランスや照明の当たり方、見切れなどを踏まえて。理屈もあるんでしょうけど、センスみたいなのも多く関係しそうで、これもまた匠の技としか説明できません。

17ポジションと書きましたが、実際はそれよりもはるかに多く、3.5とか、0.75とかあります。5またぎ、とかね。

今、説明しているのは横のポジションです。
これに加えて当然、前後もあるわけです。

世の中、見てみないと知らなかったことってたくさんあるもので、それを書いているレポートなんですが、これもまた一つの深イイ話なんですが。

横にも前後にも無数のポジションがあるでしょ。
それが、このシーンではここ、こういうセリフを誰々が話し始めたらここに移動して、歌の時はここからここに、みたいなのがたくさんあって。

それに、
ではけ、ってわかります? 出たり入ったりすること。出ハケって書くのかな。
舞台袖って幕が何枚もかかっていて、その何枚目に出ハケするかも決まっていて。

だから、薄暗い舞台上で、回るルーレットみたいな盆を予測しながら、2番袖から上手の3.5、緞帳ラインに全力で走り込んでみたいなことが頻発するわけです。

アンサンブルの人たちなんて、いったいいくつの決めポジションがあるんだろう。
これ、ある程度は稽古場でも指示はされますが、最終的には劇場入りしてから決まるんですからね。
役者はセリフをおぼえるだけじゃないんだよ、と低い声で語れると玄人っぽくなります。

余談なんですが、この位置を(大幅に)間違うと、大変なことになる、というのを教えてくれた方がいらっしゃいました。
もしかしたら役者のメンツにも関わるかもしれないので名前は伏せますが。

場面転換のために盆が回った時、あれ、今、何か通った? となった時があって。
本来の決め位置と(まさかの)真反対、使わない盆の面にスタンバったのは◯月さゆさん。照明の当たってない真っ暗の中、老婆に扮した大○さゆさんがたった一人、まあまあのスピードで舞台を横切っていくシュールさ。
本当は大人数で立っている場面だったんですが、たまたま稽古の段取りの関係で、大月さん一人だったから、誰も見たことのない画すぎて、その場にいたみんながポカンとなった瞬間でした。

余談ついでに。
メイクして衣装を着て、そして照明を浴びて舞台に立つ役者さんはみんなキラキラしているんですけど、宝塚歌劇団出身の人ってさらに目の中の星が多めじゃないですか? 美弥さんも大月さんも裕美子さんも。阪急電車のキオスクに売ってるんですかね、星。

レポートに戻ります。

位置決めが決まったら、着替えも含めて3シーンくらいを繋いで行います。
何か修正点があったらシーンを巻き戻して確認します。
そこにしばしば現れるのが時空の歪み。
人によっては、次のシーンでは全く別の役になったりするので、その衣装のまま一つ前のセットに立つことになります。
だから、野比のび太と毛利蘭と影山飛雄が、磯野家の居間でテレビ見てる感じになったりする、これまたシュールな場面が見られるのも、場当たりの醍醐味かもしれません。多分違いますが。

この三日間も、面白いこと、興味深いことがたくさんあって、とても一回のレポートではまとめきれません。レポートをサボるからいけないんですけど。
ここからはいつものようにサクサクいきますね。

明治座の楽屋は畳。
部屋によっては冷蔵庫、電子レンジ、トイレもある。
明治座の三田さんの情報によれば、布団も借りられるらしい。暮らせる。

俺の部屋も用意してくれてるけど、一人でいるのは寂しい。
耕平、航生の楽屋に入り浸ってやる。最初は気を使わせるかもしれないけど、そのうちそういうもんだと諦めるだろう。
最終的に宮さん大堀さん楽屋に入り浸れるようになると、僕もヴァグラントの天下をとったと言えるかも。

信じられない数のワイヤレスのヘッドセットマイク。電池を換えるだけで1日が終わりそう。
電池換え、これも知らない人が多いかもと思うのでレポートすると、家のテレビのリモコンみたいに、半年に一回換えるんじゃないんですよ。もちろん、リモコンみたいに、あれ、チャンネル変わらないな、って蓋開けて電池ぐりぐり回してみたりもしません。毎日、全員分替えます。

卓席近く。
板垣さんが照明の三澤さんに修正をリクエストすると、それを暗号みたいない照明用語に直して、隣の白仁さんに指示。女性の方。すると白仁さんがボタンをたくさん押す音が聞こえてくる。
沖田艦長の指示を、古代進が森雪に伝えるみたい。知ってます? ヤマト。

本当に微調整の嵐。
盆が回るスピード、もしくは見え方が想定していたものと違って、音楽と合わない場合はもちろん直す。音楽を1小節短くしたり(!)。
照明も映像も、微調整に微調整を重ねて。
僕もステージを作る人間としてわからなくもないけど、側で見ていると、そこまでしなくてもと思うこともあるくらい。お客さん、そこまで見てるかなって。
「神は細部に宿る」は僕も心に置いている言葉だけど、まさにそれが行われている。

明治座さんが歌舞伎役者さんみたいな幟を作ってくれる。劇場の表に。俺のもある。スタッフに写真を撮りましょうと言われて、その前でポーズを取る。まんざらでもない。

もね、すい、ほのか、はトリプルキャストなので、稽古をできる回数が限られている。その中でも立派に歌っていて。おっさん、泣けてくる。
当たり前のことながらカンパニーの一員として歌や演技でも、そして可愛らしい笑顔で癒しにもなってくれて感謝。

で昨日。
神主さんに来ていただいて安全祈願祭。
最後のシーンを小返ししてから、1回目のゲネプロ。
無事に幕がおりる。(大月さんもちゃんとした場所にいた!)
舞台の上の役者たちは立派に演じ切っていた。
我々、スタッフ側にはまだ微調整の課題はあったが、それはこっちの問題で、役者がやり切ってくれていることに比べたら大きな問題ではない。
お客さんはそれを見に来てくれている。

ミュージカル制作は一段一段と階段をのぼるように出来上がっていく、と、何度かレポートさせてもらいました。いったいこれまで何段あったんでしょうね。

ゲネプロはその最後の段です。
昨日のゲネが右足、壮一とまゆちゃん。
今日この後の行われるリョウタ、ののちゃんのゲネが左足。
階段を上り切って、顔を上げたら、そこは観客の顔が見える初日です。

本日、ヴァグラント、初日です。

劇場でお待ちしています。





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