[SEDA]Jasper De Goojier: SEDA – Intent-Based Modular Data Layer. Ep. 538

原文:

もともと、NEAR ProtocolでロンチしたFluxが、SEDAにリブランドしたのでどんな内容であったのかを書き出した

  • Jasper De Goojierは、もともとは大学生だったが、在学中に暗号通貨に興味を持ち投機的な動機で購入。その後、Facebookのデータ分析を行うスタートアップを共同創業するも、APIアクセスの制限に不満を抱き、スマートコントラクトの可能性に惹かれ、大学を中退して暗号通貨業界へ本格的に参入した。Solidityを独学で学び、コンサルティングを行う傍ら、イーサリアム財団の研究助成金を得てPlasmaの研究に従事。その過程で志を同じくする仲間と出会い、刺激を受けた。2018年にハッカソンで出会った共同創業者とSeda protocolの開発を開始し、現在に至る。業界の未成熟な段階からスタートし、技術的な探求を続けてきた経験は、Seda protocolの開発に大きく影響していると言える。

  • Seda protocolは、あらゆる開発者が自由にオフチェーンデータにアクセスできるユニバーサルなオラクルプロトコルを目指している。創業者のJasperは、ビットコインのようなアプリケーション特化型ブロックチェーンから、イーサリアムのような汎用型スマートコントラクトプラットフォームへの進化を目の当たりにし、その先にオラクルの重要性を見出した。現在のオラクルは、中央集権的な企業に依存しており、パーミッションレスな開発を阻害している。Sedaは、誰もが自由にデータフィードを作成・利用できる環境を提供することで、スマートコントラクトの発展に不可欠なインフラになることを目指している。それは、イーサリアムがスマートコントラクトの可能性を切り拓いたように、オラクルの新たな地平を切り拓くことに他ならない。

  • Seda protocolの仕組みは以下のようになっている。まず、ユーザーがSedaチェーン上にデータ収集のためのプログラムをデプロイし、必要なデータをリクエストする。すると、Sedaチェーンがバリデーターとは別のノードから成るオーバーレイネットワークの中からランダムに選ばれた複数のノードに検証を依頼する。選ばれたノードは互いに他のノードを知らない状態で並列に検証を行い、結果をSedaチェーンにコミットする。集まった結果は、Sedaチェーン上でマークル木に集約され、バリデーターによって署名される。この一連のプロセスにより、データの正当性が担保される。署名済みのデータは、あらゆるチェーンから検証可能であり、スマートコントラクトは自身のチェーンに依存せず、外部データを安全に利用できるようになる。

  • Sedaで収集されたデータを、利用したいチェーンに転送するインセンティブ設計にも工夫がある。例えば、清算の機会を狙って第三者がデータを転送するケースでは、清算による利益がインセンティブとなる。あるいは、データを必要とするDApps自身が、独自の動機に基づいてデータ転送を行うことも可能だ。データ提供者が明示的に報奨金を用意することで、外部の担い手を募ることもできる。このように、データ転送には様々な方法があり、ユースケースに応じて最適なインセンティブ設計を選択できるのがSedaの特徴である。インセンティブ設計の柔軟性により、データ転送の担い手を確保しつつ、コストを最小限に抑えることが可能となる。Sedaは、データ収集だけでなく、データ転送においてもパーミッションレスで効率的な仕組みを提供している。

  • Sedaの用途は、価格フィードだけにとどまらない。ブリッジングや言語モデルの利用など、スマートコントラクトを介したあらゆるオフチェーンデータ連携に活用できる。例えば、Sedaを介してブロックチェーンの状態を照会することで、チェーン間の相互運用性を高めることができる。また、GPT-3のような言語モデルをSedaに接続することで、スマートコントラクトからの自然言語処理が可能になる。ただし、言語モデルは非決定論的であるため、Sedaに接続する際には、プロンプトへの署名などの工夫が必要になる。将来的には、ゼロ知識証明との組み合わせにより、プライバシーを保護しつつ、オフチェーンデータを活用するユースケースも考えられる。Sedaは、オラクルの枠を超えて、Web3の様々な領域でイノベーションを加速させるインフラとなり得る。

  • Sedaは、RPCプロバイダーにとっても新たな可能性を開く。RPCプロバイダーは、ブロックチェーンノードを運営し、そのデータをAPIで提供することで収益を得ている。しかし、オンチェーンでのデータ検証に対するニーズは高まっており、新たな収益源となり得る。RPCプロバイダーがSedaにデータを提供することで、スマートコントラクトからのデータ検証が可能になる。これにより、RPCプロバイダーは、オフチェーンだけでなく、オンチェーンの需要も取り込むことができる。さらに、ゼロ知識証明と組み合わせることで、プライバシーに配慮したデータ提供も可能になる。RPCプロバイダーにとって、Sedaは新たな市場を切り拓く存在となるだろう。Sedaとゼロ知識証明の組み合わせは、オラクルの可能性を大きく広げるものと言える。

  • Sedaの開発に至る過程では、楽観的オラクルと集中型オラクルの長所と短所が検討された。楽観的オラクルは、柔軟性が高く、主観的な質問にも対応できる。しかし、異議申し立ての期間が必要なため、遅延が発生しやすい。一方、集中型オラクルは、APIデータに特化することで、高速性と信頼性を実現できる。Sedaは、集中型オラクルの利点を活かしつつ、パーミッションレスな参加と水平スケーリングを可能にすることを目指している。ガバナンスや参加者の管理に伴うオーバーヘッドを最小限に抑えつつ、オラクルの大衆化を実現する。それは、集中型オラクルと楽観的オラクルの長所を兼ね備えた、新たなアプローチと言えるだろう。

  • Sedaトークンは、現在イーサリアム上に存在する。Sedaチェーンのローンチに合わせて、トークンのマイグレーションが進められている。2023年第1四半期末には、バニラCosmos-SDKチェーンとトークンブリッジを実装し、既存トークンの移行を開始する。その後、2023年第2四半期にはオラクル機能を実装したメインネットローンチを予定している。トークンは、Sedaチェーンのセキュリティを担保するためのステーキングに利用される。また、データリクエストの手数料としても機能する。Sedaは、トークンホルダーによる分散ガバナンスを通じて、オープンかつ中立的なオラクルプロトコルを運営していく方針だ。トークンの移行と並行して、エコシステムの拡大と技術の洗練化を進め、メインネットローンチに向けて準備を整える。

  • Sedaは、チェーン抽象化を通じて、ユーザー体験の向上に貢献する。チェーン抽象化とは、ユーザーがウォレットの設定を変更することなく、異なるロールアップ間を自由に行き来できる仕組みのことを指す。現在は、ロールアップ間の移動には、その都度ウォレットのネットワーク設定を変更する必要があり、ユーザビリティの面で課題がある。Sedaは、ロールアップのステートを検証可能なデータとしてオンチェーンに保存することで、ユーザーに代わってクロスチェーンの取引を実行するソルバーの実装を可能にする。これにより、ユーザーはシームレスにロールアップ間を移動でき、DAppsの利便性が向上する。Sedaは、チェーン抽象化の実現に必要な、パーミッションレスなオラクルインフラを提供することで、Web3のユーザビリティ革新を後押しする。

  • Sedaの最大の独自性は、誰もがオラクルに自由にアクセスできる点にある。これまでのオラクルは、中央集権的な企業によって運営され、データフィードの作成や利用にはパーミッションが必要だった。一方、Sedaでは、開発者が自由にデータフィードを作成し、スマートコントラクトから利用できる。この自由度の高さが、イノベーションを加速させる原動力となる。Sedaは、イーサリアムがスマートコントラクトの可能性を切り拓いたように、オラクルの新たな地平を切り拓こうとしている。そのためには、開発者エコシステムの構築が不可欠だ。Sedaは、ドキュメンテーションの整備やハッカソンの開催など、開発者コミュニティの育成に注力していく方針である。また、パートナーシップを通じて、Sedaを利用したDAppsの開発を促進していく。Sedaの成功は、パーミッションレスなオラクルが、Web3の発展にどれだけ貢献できるかにかかっている。

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