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今週の読書録(2024.5.14)


時の睡蓮を摘みに

美しい装丁にひかれて手に取った一冊。
アガサ・クリスティー賞大賞受賞作である葉山博子さんの「時の睡蓮を摘みに」は、大戦前後のベトナムを舞台にした作品。

早川書房のページでは、冒頭部分の試し読みも公開されています。

文字を追うごとに色彩や風景が思い浮かぶよう。
現代でもかなり強いタイプに分類されそうな主人公は、当時の価値観では異質の存在。
日本の閉鎖的な価値観から逃れるようにフランス統治下のベトナムに渡り、高等教育を受ける。
成人してから身に着けたなじみの薄い言語を使用した学習の困難さを乗り越え、好きな分野を追求する姿勢。
自身の考えを言語化して臆せず表明する主人公と周囲の男性陣。

途中、語り手の視点が幾度か入れ替わるため困惑することもありましたが、次回作も楽しみな作家さんが増えました。

あたしは、世界の本当の姿を知りたい。
1936年、旧弊な日本を抜け出し、仏印ハノイで地理学を学ぶことになった鞠。三人の男との出会いが、彼女に植民地や戦争の非情な現実を突きつける。運命に翻弄されながらも強くあろうとする鞠の人生の行き着く先は──。

第13回アガサ・クリスティー賞大賞受賞作。

Amazon紹介より

定食屋「雑」

「定食屋『雑』」は原田ひ香さんの作品の中でも食に関する方のストーリー。
人生の岐路に立つ主人公が下町の定食屋で食を通じて、価値観の違いに戸惑いながらも進んでいく。

育った環境が違えば、食に対する考え方やこだわりが異なるのも当然。
縁あって結婚した二人も歩み寄れないこともある。
食への向き合い方の相違から別れることになった主人公。
立ち直るきっかけもまた「食」。

最後は原田さん作品らしい希望と救いがある内容なので、読了感も悪くありませんでした。

真面目でしっかり者の沙也加は、丁寧な暮らしで生活を彩り、健康的な手料理で夫を支えていたある日、突然夫から離婚を切り出される。
理由を隠す夫の浮気を疑い、頻繁に夫が立ち寄る定食屋「雑」を偵察することに。
大雑把で濃い味付けの料理を出すその店には、愛想のない接客で一人店を切り盛りする老女〝ぞうさん〟がいた。
沙也加はひょんなことから、この定食屋「雑」でアルバイトをすることになり——。
個性も年齢も立場も違う女たちが、それぞれの明日を切り開く勇気に胸を打たれる。
ベストセラー作家が贈る心温まる定食屋物語。

Amazon紹介より


令和ブルガリアヨーグルト

「〇〇ブルガリアヨーグルト」と聞くと頭の中で再生されるあるCM。
明治ブルガリアヨーグルト誕生50周年に際し、明治が取材に全面協力したという本作。
宮木あや子さんのお仕事小説の中でも異色の擬人化作品です。

メインキャラクターの片方は何と乳酸菌?!
「吾輩は乳酸菌である。名前はブルガリア菌20388株。」という、どこぞの文豪の代表作のごとき文章から始まるカオスな作風。
最近、「推しを召し上がれ~広報ガールのまろやかな日々~」というタイトルで映像化もされたようです。

ブルガリアや乳酸菌の歴史も小ネタとしてはさみつつ、お仕事小説の要素や時事ネタもからめた内容でした。

連続ドラマ化! あのヨーグルトが題材の、お仕事&推し事小説!

連続ドラマ化!
2024年1月10日スタート「推しを召し上がれ~広報ガールのまろやかな日々~」(テレビ東京)
主演:鞘師里保(さやしりほ)
共演 : 明日海りお 生駒里奈 / 橋本さとし
野村麻純 永田崇人 好井まさお 水間ロン 滝沢カレン バッファロー吾郎A 橋本淳 宇野祥平 中島ひろ子
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商品誕生に秘められたドラマ、新入社員の由寿の奮闘が始まる!

吾輩は乳酸菌である。名前はブルガリア菌20388株。
学生時代に読んだネット投稿小説がきっかけでブルガリア菌が「推し」となった朋太子由寿(ほうだいし・ゆず)の日々を温かく見守っている。
「株式会社 明和」に就職した由寿は、配属となった大阪支店量販部で、阪神・淡路大震災のときに活躍した「おでん先輩」のエピソードを聞き感銘を受ける。
入社して一年後、広報部で由寿は社内報の制作を担当することになり、「明和ブルガリアヨーグルト五十周年」特集のために関係社員にインタビュー取材を行ってゆくのだが……。

Amazon紹介より


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