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ベースとドラムだけのバンドって実際どうなん?Nevrness × Oh! Friends対談

ハルユキ(以下ハ):今回のnoteは、メタルコアバンドSailing Before The Windのベーシスト、ビトクさんとの対談形式でお送りします!
ビトクさんのnoteいつも読んでて、第一線で走り続けているからこそのリアルなコンテンツ、毎回学びになります。今日は楽しみにしていました!

お互いに色々なバンドやプロジェクトで活動していますが、今回はベース&ドラムの音楽をやっている者同士として、ビトクさんのベースソロプロジェクトNevrnessと、僕のやってるベース&ドラムの2ピースバンドOh! Friendsでの対談をオファーしました。


NevrnessとOh! Friendsの音楽的スタート地点

ハ:まずビトクさんがNevrnessを始めたキッカケは何でしたか?

ビトク(以下ビ):Ibanezの6弦ベースBTB806MS発売時に、エンドーサーとしてデモンストレーション曲を書き下ろしたのがきっかけです。

ありがたいことにこの動画(曲)が好評だったので、「需要があるならプロジェクト化しよう」とNevrnessを始めました。理想の音楽を追求するスタイルはSBTWでやっていたから、逆に需要先行の音楽をやってみたくて

ハ:需要先行って面白い着眼点ですね。Nevrnessは僕らと違って、ギターに相当する音は出さずに、あくまでベース1本でリフもルートもメロディも構成しているじゃないですか。The Omnificをリファレンスに挙げたりもされてましたが、なぜあの形態で始めたんでしょうか?

ビ:The Omnificは大好きで当然影響を受けていますが、唯一引っかかるところがあって。楽曲に、シンセが入っているんですよね。(彼らの意図は分かりませんが)いちリスナーとしては、正直「いやリズム隊の音だけで良くない?」と。そのリスナーとしての原体験を踏まえて、Nevrnessは完全にベースとドラムだけで完結させています。仮に他の楽器を入れるとしたら、プロジェクト名義を分けます。ちなみにプロジェクトの命名方法やリリース方法は、このnoteでも言及しています。

ハ:リスナーとしての不満ってすごく分かります(笑)。命名やリリースも含めて、立ち上げにあたって考えることは、やっぱり聴いてきた音楽と、やってきた音楽活動の延長線上にあるなとすごく感じますね。

ビ:ちなみに、当初Oh! Friendsは他の楽器も入れる想定だったそうで。だからバンドプロフィールの自称が、2ピース云々ではなく、「ロックンロールバンド」なのかなと。

ハ:僕の中ではOh! Friendsは、普遍的なロックンロールを鳴らすバンドなんですよ。特にBlack SabbathやLed Zeppelinのような、リフがそのまま曲の骨格になるような音楽で。
そういうロックってギターとベースがユニゾンして同じリフを弾くことが多いじゃないですか。だったらベースから1オクターブ上が出れば、2人でもロックとして成り立つかもと思ったのが最初の発想でした。それで最低限の機材を揃えて合わせてみたら、思いの外上手くいっちゃって。

ビ:リフの美学というか、ユニゾンの美学というか。

ハ:そうなんです。ただ、やっぱりベースの上にギターと歌が乗るという、伝統的なロックの黄金バランスもあるとは思うんですよね。ライブやレコーディングもエンジニアさんには、ギター、ベース、ドラムの3ピースをイメージして音を調整してほしいと、よくお願いしています。


2ピースならではの現象

ビ:2ピースを3ピース的に解釈する発想、言われてみたらそうですね!今までやってきた4〜5人編成のバンドと比べて、2人編成ならではの現象、ありますか?

ハ:びっくりするほどフットワークが軽いし、何よりトライ&エラーがしやすいのがいいですね。実は最初の2曲をレコーディングしたのは、初めてスタジオに入ってから1ヶ月後で。このスピード感は2人組ならではだったと思います。
ただ問題もあって、やっぱり1人あたりの負担は大きいです。金銭的にレコーディングもライブノルマも全部÷2だし、やることの分担も2人力なので。

ビ:全て÷2になるのは大変…。Nevrnessはソロでやっていて、全部÷1人になるから、経費負担の苦しみはよく分かります。

ハ:フットワークが軽くて馬力がないがゆえ、何でも引き受けて首が回らなくなるって状況は避けたいですね。なので小さなトライ&エラーは沢山しても、後戻りが効かない決定は慎重にするよう心掛けています。

ビ:打ち合わせでハル君が言った「2ピース”だから”応援する人はほぼいない」という発言が印象的で。あくまでもいち編成であって、音楽ジャンルとは違いますし。正直2ピース形態を推しても、リスナーの規模(マーケット)は大きくなさそうです。

ハ:例えばお笑い番組でも、2人組の漫才か3人組のコントかよりも、純粋に「その5分間が面白いか」の方がずっと重要じゃないですか。ジャンルや人数に関係なく、ネタが面白くてトークや演技がハマっていれば、誰かが笑ってくれる。
音楽も同じで、曲が良くて演奏がハマっていれば、刺さる人には必ず刺さる。面白みの源泉を分析したら「2ピースだから」という答えに辿り着くかもしれないですが、リスナーが聴くのは源泉よりも、表に出ている魅力だと思うので。だから2ピースという形態を推してもあまり効果はないんだと思います。

2ピースの多いライブ企画や対バンだと、演る方も聴く方もこだわりや愛を持った方が多いので、熱量も高くて結構好きなんですけどね。色んな2ピースと出会いましたが、メロディックパンクやテクノ、グラインドコアなど、それぞれのシーンの中で活動しているバンドばかりだと感じました。


プロモーション論

ハ:Nevrnessのベース&ドラムのインストという区分では、リスナー規模やマーケットの反応はどうでしたか?

ビ:大枠では、想定通りにいきました。例えばSpotifyでは、Toby (The Omnific) の関連アーティスト欄にNevrnessが上位表示されているので。狙ったターゲットにはリーチできているかなと。海外のベーシストともコラボできて、やりたかったことはできています。

ただ、「メタルベースインスト」というジャンル自体が、思ったよりも小さい印象。音楽性的には、フュージョン/プログのサブジャンルにカテゴライズされやすいですが、そういうリスナーにアプローチするには、少々メタル味が強い。もちろんThe Omnific好きには聴いてもらいたいですが、自分が作る曲は、テクニカル系音楽とは、ちょっと違いますし。多数派ではない編成や音楽性でやっていると、プロモーションの方法には悩みます。

ハ:どの面を打ち出すかは、結構悩みますね。僕らも打ち出しどころは今も模索中ですし…
どうやったら応援しやすいバンドになれるかは、常に考えているんです。最近はお客さんが撮ったライブ動画でMVを作ろうとしてますし。画質や色合いがまちまちでも「私もこの場にいたんだ、この曲を聴いたんだ」って思い出が残ると、嬉しいじゃないですか。

最新のOh! FriendsのPVはファン撮影の映像だけで作ってみました


周りからの応援を獲得する方法

ビ:ちなみに地元での凱旋ライブが新聞に掲載されたそうですが、これはプロモーションの一環でしょうか? 僕は生まれも育ちも東京なので、地元の利を活かす発想があまりできなくて…。

ハ:お世話になった方々が元気なうちに凱旋ライブをやりたかったのもありますが、地元の応援の心強さは感覚的に知っていたと思います。子どもの頃、野球や新潟出身力士が勝つとじいちゃんばあちゃんが喜んでいたし、甲子園で新潟代表の日本文理が初めて決勝に行ったときはみんなで一緒に盛り上がってた。そういう原体験はありますね。

一緒に作り上げることそのものが、一番のプロモーションだと思うんです。特に地元の糸魚川はライブハウスも無いほど小さい街なんですが、音楽に理解の深いパブを使わせていただけることになり、地元バンドの音響屋さんに機材の貸し出しをお願いし、一緒になって設営したり。出演者も演歌、フュージョン、ロックとジャンルはバラバラですが、縁の深い方々に出ていただきました。

ビ:ジャンルバラバラでもつながれるのは、”地元”の強みに思えます。

ハ:あとダメ元で地元の新聞社にメールしたら、当日取材に来てくださったんです。しかもライブ後に記者さんが興奮気味に「できるだけ良い場所で載せられるように掛け合ってみます!」って言ってくれて、後日本当に1面に載ったのは嬉しかったですね。上越公演では上越市長さんスーツ姿で来て、最前で手を挙げてましたし(笑)。
バズとか劇的なフォロワー数増加とは遠いですが、各地で着実な応援団を得て、その恩に報いる活動ができれば、もっと「応援しやすさ」を作れると思いますね。

ビ:たしかに!「応援のしやすさ」はキーワードですね。応援してもらえる土台があれば、活動を続けやすくなる。

ハ:そうなんです!絶対的な土台があれば、再生数や動員にあまり左右されずに活動を続けられると思ったんです。土台はお客さんの地盤もそうだし、自分たち自身の音楽家としての地力もそうだし。
例えばビトクさんなら、メタルコアシーンでの認知も、ベーシストとしてのプレイヤーからの支持も絶大なものがあると思うんですが、応援してもらえる土台はどうやって作ったんでしょうか?

ビ:意識的にやってきたのは、徹底したストーリー伝達ですね。自分は何者で、何が好きで、どういう思想なのかを伝える。例えば、これまでCrystal LakeのベースサポートHER NAME IN BLOODのギターサポートをやってきたこと、機会がある度に公言してきました。あの人達のおかげで今の僕があることを伝えたいし、それが、自分のストーリーだから。他の人と被らない背景。

ハ:「自分のストーリー」めちゃくちゃいい言葉ですね!単なる経験で終わらず、ビトクさんの自己紹介も発信も全てストーリーテリングなの、すごく伝わります。

ビ:ベースの2回線(ライブでの音の出し方)をずっと主張しているのも、ある種のストーリーテリングです。2011年のSBTW結成からひたすらメタルコアを研究してきて、2回線出しがベストアンサー。あえて言い切ります。だって、1回線が良いと思っていたら、そうするので。けど、実際に僕がやっている手法は今も2回線。思想をハッキリさせるis大事。

や、思想というと大げさかもしれませんが、ハッキリした意思表示は、応援のしやすさにつながる。「道Aも道Bも良いと思います!」という人、応援しにくくないですか? 「俺は絶対に道Aを進むんだ!」の方が分かりやすい。


「続ける」と「続けられる状況を作る」のは違う

ハ:色んなバンドでベースを弾く中で思ったんですが、「続ける」と「続けられる状況を作る」のは違うんですよね。

ビ:それは具体的にいうと、どういう意味でしょう?

ハ:根性論とか勢いに頼る活動は、無理があるんです。やっぱり人間関係も変わるし、モチベーションの源泉も変わるし。変わらない努力をするより、変わっても倒れないための土台を作りたいんですよね。

ビ:勢いをずっと保つのは、本当に大変です。コントロールできない要素も絡んでくるし。


ハ:なので例えば、僕が最初の1年間で最も優先したのは、ライブや音源を作るよりも、相方の工藤くんとの関係性作りでした。彼は僕の4歳下で、天才的なんですが色々と危なっかしくて(笑)。僕は彼と長くやりたいので、褒めるだけじゃなくダメなことはダメと言う。
そして今までの経験から、大きいステージでは演奏技術の未熟さが命取りになると学んでて。だからきちんとフレーズを練り、しっかり練習する。音楽家としての基本姿勢を作る。
1年目の僕らにとっては、こっちの優先順位が高かったので、SNSをガンガン更新したりライブを身を削ってたくさんやるより、とにかく話し合いと準備と練習にリソースを割いていました。

ビ:あーなるほど! 活動初期に、言いたいことを言い合える関係性を作るのは、めちゃくちゃ良いですね。それは自分も早くから知っておきたかったなぁ…。


限られたリソースの使い方

ハ:ビトクさんはSBTWやNevrness以外でも、noteを更新したり、SNSの数字を高めようと力を注いでいますよね。それも音楽を「続けられる状況を作る」ための活動だと思うんですが、ビトクさんはリソースをどこに割いているイメージでしょうか?

ビ:僕は「暇であること」にリソースを割いています。暇なら、急な案件にも対応できます。事実、僕が今までサポート業を生業にしてこれたのは、暇だったから。で、ここでいう”暇”は、ただの暇ではなくて。”業務をテキパキ行う結果として”、暇になるイメージです。例えば1曲歌詞を書くのに10時間かかるところ、1時間で終えられたら、9時間暇を生み出せますよね。

ハ:たしかに!その9時間が空いているとチャンスにすぐ反応できるし、単純に人より場数も踏めるし、精神的な余裕にも繋がりますよね。

ビ:実際はそんな簡単な話ではないとはいえ、いずれにせよ暇である方が、創作的にもメリットがあるかなと。暇であればあるほど、頭にスペースが生まれて、より直感的な判断を下せる。逆に「やらなきゃいけないこと」で脳内が圧迫されていると、直感的判断に割けるリソースが少なくなる(=感覚のパフォーマンスが落ちる)。パソコンにおける、CPUの負荷的な。

ハ:直感や感覚で判断できるって、音楽家としてすごく大切ですよね。その感覚こそがその人ならではの味になったりするし。
暇であることにリソースを割くというのは、すごく深い言葉に思えます。

ビ:ちなみに限られたリソースをまず関係性構築に使うのは、ハル君が別でやっているデスラッシュバンドMachete Tacticsでも同じでしょうか?

ハ:Machete Tacticsから学んだことはすごく多いですね。メンバー全員が色んなバンドで解散や脱退を経験しているからか、結成時から関係性は無意識にケアし合っていると感じます。

結成当初にリーダーでGt/ Voの嶋崎さんが「メンバーが弾けるように練習させるのもリーダーの責任だし、どうしてもできないなら弾けるメンバーを探すのもリーダーの責任」って言ってて、その言葉がかなり僕の心に残って。Machete Tacticsで学んだことは、Oh! Friends の活動にも相当活きていると思いますね。


今後の予定(最後に一言)

ハ:Nevrnessの今後の予定や、やりたいことはありますか?

ビ:2ndアルバムを出したいとは思ってます。コンセプトはもう考えていて。1stはリードやリフにフォーカスした分、2ndではベースラインの方を動かしたいなと。分かりやすくいうとBUMP OF CHICKENみたいな、動き回る”ベースならでは”のラインを軸に作ってみたい。ハル君は今後どういう予定でしょう?

ハ:Oh! Friends は新曲をリリースしたいですね。レコーディングも佳境に入ったところなので、来年のリリースを楽しみに待っていただけたらと思います!
あと自主企画をやりたいですね。単にやるだけじゃなく、発信も企画内容も含めてしっかりとファンを喜ばせるための活動を、着実に続けていきたいです。


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