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【詩】凛として

着物を着た祖母の後ろ姿


きちんとした場では
ドレスではなく
着物を着てゆく


丁寧に手入れされた着物は
長く愛用され
いつまでも美しいまま


その心根のまま
私たちは祖母に育てられた


箸の使い方
戸の開け方
座り方
時代は変化していても
それよりも
守り続けられた歴史を
孫に教える


子供たちにとっては
ただ息苦しいだけの
祖母は疎ましいだけだった


今の時代に合っていない教えは
五月蠅いうるさいだけの雑音


年をとっても
出かけるときは
髪を整え
唇には紅をさし
凛とした佇まい


そんな姿さえも
目ざわりに思う


リビングでくつろぐ
私たちには目もくれず
和室で背筋をピンとして
正座をしながら
物を書く


祖母は祖母らしく人生を終える
誰にも迷惑をかけることなく
全てのことをきちんと用意して
残された者に困ることがないように
手紙を残していた


その隣にある日記


そこには私たちへの
愛情があふれ成長を喜ぶ
綴られている言葉



私たちが愛されていたなんて
何もわかっていなかった


残された着物は大事に箪笥にしまってある













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