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【詩】凪の海

幼子が木の下で泣いている

モノクロの写真を切り取るように

その姿は波の音

気持ちの糸を震えさす

自分を見ているようで


寂しい訳じゃないのに

これから自分がどこに行くのか

怖くて切なくて

膝を抱えて泣いていた


月が顔を見せたら

どこかに連れていかれる

そんな気がして


見えない何かに怯えていた

見えないから怯えていた

姿かたちの見えぬ不安は

心と体を覆いつくし

恐怖を呼んで

隅に隠れた


あの時

あなたが私を見つけて

月の明かりの優しい歌を歌って

手をつないで

歩いていなかったら

私はこのまま迷子


月の明るさと太陽の話

空と雲の話

生きることの話

童話のように

木陰の下で話を聞く


私は幼子の顔を見て

安心するように

手品でキャンデイを出す

泣いてもいい

笑ってもいい

夕日がきれいな海に行く


波の音は穏やか

手をつないで

一緒に凪の海を見る

こうして私は幼子を

助けているのではなく

自分を救っている

私は幼い日の自分を見る











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