神話の世界


なんて大層なタイトルをつけたが神様が神話の世界を飛び交い、壮大で絢爛豪華な神と人との話を書くわけではない。期待してる人いたら申し訳ない。
ここでは私が思う神話の世界と描かれ方、そして後世の人の広がり方について思うところがあり書いて行ければと思っている。

神話とは何か

『神話』と一口に言ってもそれぞれの地域の神話ごとに違った特色があるが、一言で言えば『その地域で伝えられたお話』である。
本当は「人々がこうだったらいいなと思って作った創作のお話です」と言いたいお話も中にはありますが、すべてが完全な創作とは言えない神話も数多くあり、また「全部本当にあった出来事なんだ!」と一部過激派の方もいらっしゃるので断定することはできない。
誰かタイムマシンを作ってくれればその検証は出来るのですが、現状では引き出しの中からドラえもんがやってくることを期待するしかない。

神話は実話か創作か

前段と矛盾するかもしれないが私の中では『ある意味実話』と考えている。
もっと細かく言えば『実話をもとにしたエピソード』となっているのではないかと思う。


ひとつ例を出そう。

ヤマタノオロチ退治

日本の神話のなかで有名なエピソードの一つに『ヤマタノオロチ』がある。
原文はこうだ

原文

故、所避追而、降出雲國之肥上河上・名鳥髮地。此時箸從其河流下、於是須佐之男命、以爲人有其河上而、尋覓上往者、老夫與老女二人在而、童女置中而泣、爾問賜之「汝等者誰。」故其老夫答言「僕者國神、大山上津見神之子焉、僕名謂足上名椎、妻名謂手上名椎、女名謂櫛名田比賣。」亦問「汝哭由者何。」答白言「我之女者、自本在八稚女。是高志之八俣遠呂智此三字以音毎年來喫、今其可來時、故泣。」爾問「其形如何。」答白「彼目如赤加賀智而、身一有八頭八尾、亦其身生蘿及檜榲、其長度谿八谷峽八尾而、見其腹者、悉常血爛也。」此謂赤加賀知者、今酸醤者也。
爾速須佐之男命、詔其老夫「是汝之女者、奉於吾哉。」答白「恐不覺御名。」爾答詔「吾者天照大御神之伊呂勢者也自伊下三字以音、故今、自天降坐也。」爾足名椎手名椎神白「然坐者恐、立奉。」爾速須佐之男命、乃於湯津爪櫛取成其童女而、刺御美豆良、告其足名椎手名椎神「汝等、釀八鹽折之酒、亦作廻垣、於其垣作八門、毎門結八佐受岐此三字以音、毎其佐受岐置酒船而、毎船盛其八鹽折酒而待。」
故、隨告而如此設備待之時、其八俣遠呂智、信如言來、乃毎船垂入己頭飮其酒、於是飮醉留伏寢。爾速須佐之男命、拔其所御佩之十拳劒、切散其蛇者、肥河變血而流。故、切其中尾時、御刀之刄毀、爾思怪以御刀之前、刺割而見者、在都牟刈之大刀、故取此大刀、思異物而、白上於天照大御神也。是者草那藝之大刀也。那藝二字以音。

古事記

読めん。漢文。レ点が欲しい。
私も辞書引っ張りながらでないと理解できない。
拙筆で恐縮だが一般的に伝わっている話に合わせ訳すと以下となる。

現代語訳

高天原を追放されたスサノオは出雲の国に降りたった。
そこでアシナヅチ、テナヅチの夫婦とクシナダヒメに出会う。
老夫婦の娘は八人いたが毎年やってくるヤマタノオロチの生贄として食べられてしまい、末の娘のクシナダがもうじきやってくるオロチの生贄とされるという話を聞く。
スサノオは美しい娘が食べられてしまうのは可哀想だと思い、オロチを退治する代わりに娘を妻にもらうことを約束させる。
スサノオはクシナダを美しい櫛に変え、自分の頭に差し込む。
そして老夫婦に八つの門を作らせ、それぞれに強い酒を置いておかせる。
いよいよオロチがやってきて、酒の匂いに引き寄せられそれぞれの首が八つの門をくぐり酒を飲みだす。
強い酒をあおったオロチはとうとう酔っぱらってしまい居眠りをした、そこをスサノオは神剣・十握剣で滅多切りにした。
オロチの尾を斬った際に、十握剣は固いものに当たり刃が欠けてしまった。
尾から取り出した剣を天叢雲剣と名付け、オロチを退治した宝としてアマテラスに献上した。

とこんな感じのお話。
「櫛になったクシナダはそのままなん!?」とか「爺さん婆さんの二人だけで門と酒樽用意させんのエグいな!」とか「生贄は可哀想だと同情して、なら俺の嫁になれは自己評価高すぎだな!」などツッコミどころは数多くある。

このツッコミどころがある、つまり”現実的ではない点”がまさに『実話をもとにしたエピソード』を誇大に表現したことで生まれたギャップなのではないかと思うわけである。

さて上記のヤマタノオロチ退治後、出雲に住み着いたスサノオの息子(だったり遠めの子孫だったりする)オオクニヌシは出雲の地で勾玉貿易で富を成したという話がある。
出雲の国は現在の島根県であり海沿いだ。
海沿いのため海上貿易はやはり盛んなのだろう。
文化として先を言ってた大陸側とも交易を行っていそうだ。

これを踏まえたうえで、きっと現実はこうだったんじゃないかというのを記そう。

はる意訳

スサノオは国を追い出され、手勢と共に出雲の国へ向かった。
そこでは海上貿易を大陸とも行っており、文化が進んだ地であると聞いていたからだ。
毎年大陸から貿易船団がやってくるという噂を聞いたので、どんなものが来るのか楽しみにしていた。
だが出雲の地に着いた一行は、住民の顔が暗いことに気が付く。
聞けば9隻の貿易船団は、現地の略奪品として住民を奴隷としてさらっていくというではないか。

それは聞き捨てならんと一行は一計を案じる。

9隻それぞれの船の乗組員を別々の宿に招待し、そこで酒を飲ませ各個撃破しようという作戦だ。策は功を奏し、見事奴隷船団を退治した一行はどんな商品を持ってきているのか確かめることにする。

そこでは見事な武具が積み荷として積み込まれていたので、試しに自前の剣で叩くと欠けてしまった。
なんと優れた剣だと感心した一行は、祖国への手土産として奴隷船団から鹵獲した武具を国へ送り届けた

ってなところが現実的なヤマタノオロチ退治ではないだろうか。

上記のリアル寄りな話は無論私の創作ではあるが、こういったように様々な神話は基にした実際の出来事を神秘性を持たせ大きく盛って作られた話であると私は考える。

神話の派生

そもそもが人から人へ伝わった口伝であることが多いため、その過程において変遷したり、時代を経て改変されたりすることがとかく多いのも神話の特徴である。

実在の出来事ではなく「こうだったらもっと面白い」を繰り返した結果であり、好意的に受け止めるべきであると考える。
*現代で言えば二次創作などにあたるが、著作権の消滅した二次創作であれば何も問題はないともいえる。

14-16世紀ごろ書かれた『封神演義』の登場人物に那咤という仙人がいる。
この那咤は中国神話の自然の神である四海竜王の一角「東海竜王」を倒してしまうほど強い仙人だ。
そんな那咤だが封神演義発表後の16世紀に書かれた『西遊記』では孫悟空に三度もやられてしまう。
西遊記が封神演義の後乗せを行ったことで、
神話の竜王<封神演義の那咤<越えられない壁<孫悟空
の図式が生まれてしまった。

他者の作品の登場人物を自作品で打ち負かすというのは、現代では禁じ手として見做し酷評へと繋がる行為である。
しかし封神演義の評価も西遊記の評価も高い(西遊記は一段落ちるが)

*近年『チートスレイヤー』が似た行いをやって炎上してましたが、パクられ側の作者としてはたまったものでは無いと思う。

と中国の神話を例にとったが他の地域でも神話では二次創作にて過去の別作者作品をもとに構成されるのは許されるし好意的に受け止められるケースが多い。

神話は”虚”なのか

先に記した通り全てが虚ではない。
きっとギルガメシュはエンキドゥと各地で戦っていたし、スサノオは姉のアマテラスにウンコを投げつけたし、ゼウスは父から王位を簒奪したのだろう。
しかしギルガメシュは200キロもある斧や弓は扱えなかっただろうし、スサノオが髪の毛を投げても草木にはならんだろうし、ゼウスも雷になって空中を飛んだりはしないだろう。

虚実を合わせ持つ神話を紐解き「虚を払ったら実はこうだったんだよ」をお伝えできれば、魅力溢れる世界を届けられるのではないかということでこのnoteを記すことにする。



とまあここまで固く書いたけどぶっちゃけ「神話楽しい」をただただ伝えたいだけです。
現代では数々の神話をもとにした話をミックスされたお話があります。
そこで「あ、この話○○の神話で見たことある」や「この話は元々○○だったのを改変してきたのか」など後ろっ側が分かるとよりエンタメが深く楽しめるので、とてもおすすめです。

テレビ番組見てる時に「あ、この曲○○のゲームのやつだ」って気付いた喜びに似てるかもしれない。
*著者はユニコーンガンダムの曲が流れるたびに喜んでます。


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