銀行員の仕事   (営業係)_5_県外店_3

異動で赴任してきた新支店長は、40代半ばの営業畑一筋の出世頭だった。
法人融資を多く手がけてきたらしい。

ある日の昼食後、田中の携帯電話が鳴った。新支店長からだった。
「田中君。今、C社さんにいるんだけど、来れるか?」
C社は預金取引も無い純新規先だ。
「かしこまりました。すぐC社に伺います」
田中は、何の用事だろうと訝りながらC社に向かった。

C社に着くと、社長室に通された。
社長室では、新支店長とC社社長が、2人きりで面談していた。
「おお、来たか。C社さんに1500万円、借りていただくぞ」
田中は、C社社長と名刺交換をした。
「お宅の支店長、強引やな」と言ったC社社長もまんざらでは無い様子だった。

C社は、市内随一の中古車販売店だ。

新支店長は、
「C社さんは、店頭の車の入れ替わりが激しい。仕入資金が必要なはずだ。社長、決算書3期分、銀行でコピーを撮るので貸してください」

新支店長は、決算書をチラッと見て
「年商5億ですか。凄いですね。社長、銀行は、融資する時、会社の事を根掘り葉掘り聴きますが、勘弁してくださいね。明日、1時間程、お時間頂けますか?」
「明日だったら、昼頃、会社にいます」
「では、明日、また田中と伺います。」
と言って田中とC社を後にした。

田中は、
「決算書を見せてもらうまでが、めちゃくちゃ大変なのに。。。新支店長、あっさり決算書手に入れた!?。」
と驚くばかりだった。


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