銀行員の仕事   (営業係)_5_県外店_5

その後、田中は法人融資に積極的に取り組みだした。
決算書も読めるようになっていた。

C社への新規融資実行から1カ月後のことだった。
田中は、支店長室に呼ばれた。
机の上には、A社の融資ファイルが置かれていた。
支店長は、 
「田中君、A社の融資で辛い目にあった事は、融資係から聞いた。が、もう1回、この融資案件、やってみないか?」
と言った。
田中は、
この支店長なら、梯子を外すような真似はしないと信頼していた為
「ありがとうございます。やらせて頂きます」と返事した。
支店長は、田中にリベンジのチャンスを与えたのだ。

田中は、すぐにA社へ向かい、A社社長と面談した。
「ご無沙汰しております。以前は、ご迷惑をおかけいたしました」
「いや、いいよ。気にしないで」
「早速ですが、社長、もう1度、前回のご融資の件、いかがでしょうか?」
「貸して貰えるなら、それに越した事はないよ」
「では、直近の決算書を拝見させて頂いても、よろしいでしょうか?」
「うん。どうぞ」

田中は、その場で売掛金明細の欄を確認した。残念ながら、3年以上、未回収の売掛金は記載されたままだった。
さて、どうしたものかと思ったが、
「では、持ち帰って準備させて頂きます」と言って帰店した。

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