田中(元地方銀行員)

元、地方銀行員 40代、中学生の子供1人

田中(元地方銀行員)

元、地方銀行員 40代、中学生の子供1人

記事一覧

銀行員の仕事   (番外編)_0_4_スーパーカブ号

田中は、大学4年生時に中型バイクの免許を取得した。 内定を得た地方銀行人事部担当者から、125cc以上のバイクの免許を、取得するよう連絡があった。 ならば、いっそうの…

銀行員の仕事   (番外編)_0_Excel_1

田中はEXCELに関心を持った。 本部から配布された決算書分析ソフト(EXCEL)は、非常によく出来ており、セルの計算式を見る事でキャッシュ・フロー計算書に対する理解も深…

銀行員の仕事   (営業係)_5_県外店_7_信用保証協会

ある日、信用保証協会の職員2名が、支店に挨拶に来た。 田中は、応接室で、支店長、融資係、営業係とともに名刺交換を行った。 信用保証協会の職員は、 「融資案件を、積…

銀行員の仕事   (番外編)_0_3_支店長のタイプ

支店長のタイプは ①自分が先頭に立って皆を引っ張る ②休まず、遅れず、働かず の2つに分けられる。銀行は減点方式の人事考課なので ②のタイプの支店長が存在する。 …

銀行員の仕事   (営業係)_5_県外店_6

田中は、A社の企業要録を見ながら、何か突破口が無いか考えた。 A社は、従業員5名程の小規模な家族経営の会社である。 田中は、A社社長の奥様(専務)が、毎月、5万円…

銀行員の仕事   (営業係)_5_県外店_5

その後、田中は法人融資に積極的に取り組みだした。 決算書も読めるようになっていた。 C社への新規融資実行から1カ月後のことだった。 田中は、支店長室に呼ばれた。 机…

銀行員の仕事   (営業係)_5_県外店_4

C社からの帰り道、田中が運転する車の中で 「決算書の分析資料作成しといて」 と新支店長がいった。  ※決算書の分析とは、税理士が作成した決算書を「自行の貸借対照表、…

銀行員の仕事   (番外編)_0__2_転勤

銀行員は、転勤が多い。 だいたい3年で転勤になる。 ちなみに、事前の打診は無い。 年2回(2月、8月)の人事異動が発令されると、1週間後には、新任先に異動している。  …

銀行員の仕事   (営業係)_5_県外店_3

異動で赴任してきた新支店長は、40代半ばの営業畑一筋の出世頭だった。 法人融資を多く手がけてきたらしい。 ある日の昼食後、田中の携帯電話が鳴った。新支店長からだっ…

銀行員の仕事   (営業係)_5_県外店_2

翌日の朝礼終了後の、「支店長、融資課、営業課で行う融資進捗会議」で田中は、A社への1000万円の融資実行予定日が、1週間後である事を、報告した。 田中にとって、初の新…

銀行員の仕事   (番外編)_0__1_コミュニケーション能力

田中は、生来、おとなしく、寡黙な性格だった事もあり コミュニケーション能力が低かった。 大学のゼミの面接で、教授から 「君は、感じが悪い」 大学の同級生から 「お前…

銀行員の仕事   (営業係)_5_県外店_1

その後、田中は、県外の支店に転勤になった。 地方銀行は、地元の県以外にも支店がいくつかある。 県外店の仕事は、法人への融資がメインであり、年金獲得のノルマからは解…

銀行員の仕事   (営業係)_4_年金獲得_2

なぜ年金を他行から変更してもらうの か? 偶数月の15日は、支店がお年寄りで あふれる。年金支給日だからだ。 口座に振込まれた年金を引き出すため である。 ※当…

銀行員の仕事   (営業係)_4_年金獲得

年金は、昔、60歳から支給されてい た。 今は、65歳かららしいが、田中が年金 を受給するのは、まだまだ先の話であ り、あまり実感がない。 営業係の田中の1日の大半…

銀行員の仕事   (営業係)_3_期日管理

地図を見ながら辿りついた 1軒目の訪問目的は、300万円の定期預 金の期日管理だった。 田中はバイクに乗ったまま、家の表札を 確認した。 ※期日管理とは、定期預金の…

銀行員の仕事   (営業係)_2 _訪問準備

1週間後、鈴木主任は県外に転勤して行 った。小学生のお子さんは、2回目の転 校らしい。(何か意図があるのだろう が、人事移動は何故か転居を伴う。) 朝礼後、田中は…

銀行員の仕事   (番外編)_0_4_スーパーカブ号

田中は、大学4年生時に中型バイクの免許を取得した。
内定を得た地方銀行人事部担当者から、125cc以上のバイクの免許を、取得するよう連絡があった。
ならば、いっそうの事、「中型バイクの免許を取っておこう」と考えたからだ。
普通自動車免許は、大学1年生の夏休みに取得済であった。
「なんで、銀行員にバイクの免許がいるのか?」
田中は、少し疑問を持ったが、経済学部の4年生は、授業が少なく暇であった。

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銀行員の仕事   (番外編)_0_Excel_1

田中はEXCELに関心を持った。

本部から配布された決算書分析ソフト(EXCEL)は、非常によく出来ており、セルの計算式を見る事でキャッシュ・フロー計算書に対する理解も深まった。

そして
「日々の管理資料の作成」をEXCELで行う」事を思いついた。

土、日曜日を活用し、EXCEL関数により「訪問日誌、ネタ管理表、期末融資平残予測表」を作成した。

※ネタ管理表とは、「新規融資」「既存融資先へ

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銀行員の仕事   (営業係)_5_県外店_7_信用保証協会

ある日、信用保証協会の職員2名が、支店に挨拶に来た。
田中は、応接室で、支店長、融資係、営業係とともに名刺交換を行った。

信用保証協会の職員は、
「融資案件を、積極的に行いたいので、よろしくお願いします。ファックスでの事前協議も大歓迎です」と言った。

田中には、追い風となった。
信用保証協会付の融資案件は、融資回収が不可能になった場合、信用保証協会が全額、代位弁済してくれる。よって信用保証協会

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銀行員の仕事   (番外編)_0_3_支店長のタイプ

支店長のタイプは

①自分が先頭に立って皆を引っ張る
②休まず、遅れず、働かず

の2つに分けられる。銀行は減点方式の人事考課なので
②のタイプの支店長が存在する。

②のタイプは、融資係、本部、出身で、年功序列の結果、支店長の椅子が回って来た人。基本的に支店長室に引き込もったままだ。

①のタイプは営業畑出身で、自ら支店長の椅子を勝ち取った人。支店が混雑する月末などは、自ら窓口に座る。積極的に営

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銀行員の仕事   (営業係)_5_県外店_6

田中は、A社の企業要録を見ながら、何か突破口が無いか考えた。
A社は、従業員5名程の小規模な家族経営の会社である。

田中は、A社社長の奥様(専務)が、毎月、5万円の定期積立を数年間継続していることに気がついた。
「これだ。A社の業績は、良好とは言えないが、A社とA社社長一家を合わせて考えれば、A社には、毎月5万円以上の余裕があると言える」
 ※ナニワ金融道(青木雄二著)の中で「積立は金融機関への

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銀行員の仕事   (営業係)_5_県外店_5

その後、田中は法人融資に積極的に取り組みだした。
決算書も読めるようになっていた。

C社への新規融資実行から1カ月後のことだった。
田中は、支店長室に呼ばれた。
机の上には、A社の融資ファイルが置かれていた。
支店長は、 
「田中君、A社の融資で辛い目にあった事は、融資係から聞いた。が、もう1回、この融資案件、やってみないか?」
と言った。
田中は、
この支店長なら、梯子を外すような真似はしない

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銀行員の仕事   (営業係)_5_県外店_4

C社からの帰り道、田中が運転する車の中で
「決算書の分析資料作成しといて」
と新支店長がいった。
 ※決算書の分析とは、税理士が作成した決算書を「自行の貸借対照表、損益計算書」に転記し、自己資本比率等を算出する作業のことである。当時、本部が作成したEXCELソフトが、支店に配布されており、EXCELに数字を打ち込めば、「貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書」を自動で作成してくれた。

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銀行員の仕事   (番外編)_0__2_転勤

銀行員は、転勤が多い。
だいたい3年で転勤になる。
ちなみに、事前の打診は無い。
年2回(2月、8月)の人事異動が発令されると、1週間後には、新任先に異動している。
 ※人事異動発令日のみ、風の噂で店内に広がる。夕方、全行員の人事異動発令がファックスで支店に送られてくる。
自分の名前があったら転勤だ。
この時は、全員、仕事にならない。
ファックスを目を皿のようにして見ている。
 
人事異動があると

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銀行員の仕事   (営業係)_5_県外店_3

異動で赴任してきた新支店長は、40代半ばの営業畑一筋の出世頭だった。
法人融資を多く手がけてきたらしい。

ある日の昼食後、田中の携帯電話が鳴った。新支店長からだった。
「田中君。今、C社さんにいるんだけど、来れるか?」
C社は預金取引も無い純新規先だ。
「かしこまりました。すぐC社に伺います」
田中は、何の用事だろうと訝りながらC社に向かった。

C社に着くと、社長室に通された。
社長室では、新

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銀行員の仕事   (営業係)_5_県外店_2

翌日の朝礼終了後の、「支店長、融資課、営業課で行う融資進捗会議」で田中は、A社への1000万円の融資実行予定日が、1週間後である事を、報告した。
田中にとって、初の新規法人融資獲得となるはずだったが。。。

支店長から
「A社へは貸せない」という発言があった。田中は、耳を疑った。と同時に、頭を何かで殴られたかのような、強いショックを受けた。
「しかし、A社社長には、融資を約束してきました」
「田中

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銀行員の仕事   (番外編)_0__1_コミュニケーション能力

田中は、生来、おとなしく、寡黙な性格だった事もあり
コミュニケーション能力が低かった。

大学のゼミの面接で、教授から
「君は、感じが悪い」
大学の同級生から
「お前、初対面の人から、感じ悪いって言われるやろ」
入行して、住宅ローンの受付窓口に座っていた時には、先輩行員から
「田中君。家はお客さまにとって、一生に一度の買い物だ。もっと感じ良くしたら」
と言われた事があった。

田中は、ずっと無表情

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銀行員の仕事   (営業係)_5_県外店_1

その後、田中は、県外の支店に転勤になった。
地方銀行は、地元の県以外にも支店がいくつかある。
県外店の仕事は、法人への融資がメインであり、年金獲得のノルマからは解放された。
田中は、営業課に配属された。

転勤初日、入れ替わりで県内店へ転勤になった先輩行員と、引継ぎで顧客訪問を行なった。
ほぼ、法人先であり、担当エリアは広く、車で営業活動を行う。
1日の訪問件数は10件程度であった。

まず驚いた

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銀行員の仕事   (営業係)_4_年金獲得_2

なぜ年金を他行から変更してもらうの

か?

偶数月の15日は、支店がお年寄りで

あふれる。年金支給日だからだ。

口座に振込まれた年金を引き出すため

である。

※当時は、クレジットカードを持っている人の方が珍しかった

田中は

「年金を獲得しても、すぐ引き出される

のに。年金獲得の労力は、何の為だろ

うか」と疑問に思っていた。

預金残高の多い、いわゆる富裕層の

人々は、年金をすぐ

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銀行員の仕事   (営業係)_4_年金獲得

年金は、昔、60歳から支給されてい

た。

今は、65歳かららしいが、田中が年金

を受給するのは、まだまだ先の話であ

り、あまり実感がない。

営業係の田中の1日の大半は、前述した

期日管理と年金の獲得だ。

半期(6か月)ごとに、本部から

支店にノルマが通知される。

当時は、年金獲得が最重要ノルマであっ

た。

本部から紙ベースで、顧客情報一覧が送

られてくる。

その中から、自

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銀行員の仕事   (営業係)_3_期日管理

地図を見ながら辿りついた

1軒目の訪問目的は、300万円の定期預

金の期日管理だった。

田中はバイクに乗ったまま、家の表札を

確認した。

※期日管理とは、定期預金の満期日前に顧客を訪問し、書き換え用の伝票に、判子を押印してもらい定期預金証書と一緒に預かって帰り、支店内で預金係に、定期預金証書の期日を1年先等に書き換えて貰い後日、顧客に「定期預金証書と、利息(現金)、定期預金継続のお礼の粗

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銀行員の仕事   (営業係)_2 _訪問準備

1週間後、鈴木主任は県外に転勤して行

った。小学生のお子さんは、2回目の転

校らしい。(何か意図があるのだろう

が、人事移動は何故か転居を伴う。)

朝礼後、田中は昨夜、自宅で書いてき

た「訪問日誌」を、営業チーフに提出

し、バイクで営業活動に出た。

「訪問日誌」は、鈴木主任から引き継

いだ顧客情報ファイル(紙)を元に、

昨夜、

帰宅してから、2時間程かけて作成した

ものだ。

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