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血統書付き洋梨体型こじらせおばさんが、ジムにいきなりダッシュした日【洋梨夫人のダイエット日記vol.2】

筋トレする!
決意を新たに、高らかと宣言したのは良いものの…

な…

あれなんだよな…
筋トレってさ、
筋肉太くなって、
結局見た目デカくなるっていう印象というか経験しかないんだけど…
な…
どする?


子供の頃から、いかんせん下半身がかった。
生まれた瞬間に祖父が何度も
「おい、この子は大丈夫か?これは…普通……か?」
と出産を終えたばかりでヘトヘトな自分の娘(私の母)にしつこく確認したらしいくらいには
太腿がミシュランのキャラクター、ビバンダムくんだった。
本気で孫の行く末を心配して、何度も何度も小声で確認したらしい。

そして初めて、
「あれ?私のフトモモちょっと人よりもくない?」と私が自覚したのは、
保育園の年長の終わり。
運動会で友達達と並んで撮った写真が入っている卒園記念のアルバムを見ている時だった。
まさかの6歳。
それ以来30年以上も、自分の腰から下に太い脚がついているのが普通という認識で生きてきた。
活発で常に何かしらのスポーツをしていたから、それはもう下半身がしっかりしていた。
小中高とスポーツをして汗を流してもずっと脚がかったんだから、
運動は無意味と、大学からは運動をやめた。
食事制限ダイエットなんかをしてみたりもした。
でもやっぱり脚はいままだった。
何にも効かない。
全く人生はフェアじゃない。

見かねた祖母が
下半身がしっかりしとるのは良いことだよ。
丈夫で、長生きで、働き者の、安産体型だ!」
って慰めてくれたこともあった。
ねえねえ、
そうはいってもばあちゃんさ、
今のトレンドは細身なのよ!
戦後の産めや増やせやの時には重宝されたかもしれない安産体型って
今じゃそんなに価値ないどころか、
おしゃれな服をちっとも着こなせなくて、
こんなんじゃ彼氏なんかできなくて、
パートナーがいなきゃ結婚、出産にたどり着かないし、
せっかくの安産体型も、使われなければ宝の持ち腐れ。
そんな中で、まさかの丈夫で長生き働き者!
長く孤独な働き蟻で、最期孤独死の未来しか見えないんだが…
と思いつつ
ばあちゃんに目をやると、
見事に同じ洋梨体型。
その横で作業をしている母もこれまた見事に洋梨体型!
おいおい、突如登場!逆マトリョーシカ!
パカパカおんなじタイプのヒトガタ、いっぱい出てきたな。
世代ごとに身長は伸びているものの、体型はあっぱれ同じ。
つまり私は、血統書付きの”タイプ洋梨”なんだ。

それでもそれなりに
なんとかしようとあれこれ中途半端にやった。
けれど、体重が減ると、ついててほしい胸の肉だけはどんどん落ちるから、
その痩せた上半身とやや小さめの顔面が
さらに下半身を強調していくという悪循環。
なんという地獄のスパイラル!
痩せれば痩せるほど下半身のバランスがズドーーーン!
で、嫌になって、やめちゃって、リバウンドでズバーーーン!
箇所箇所で爆弾が着火して、悲鳴が聞こえる。

「なんでこんな体型で生まれてきてしまったんだ!!」
と怒りなんて湧いたって、
誰のせいにすることもできない。
だってさ、”洋梨”を辿れば確実に先祖に行き着く。
確かアダムとイブって、リンゴを食べて楽園を追われたはずだけど、
きっと私のルーツを辿ると
「ダメ!」って言われてるのに、
隠れてしこたま洋梨貪り食って、神の逆鱗に触れて、
下半身に肉がつく呪いをかけられた、後先考えないやっちまえ精神を持った
ミスXがいたはず。
そしてそいつはもちろん今この世にいないんだから先祖って呼ばれてる。
イタコでも使ってその先祖召喚して散々文句ぶちまけて責任追及したところで、
めっちゃ祟られそうだし、
仕返しに、フトモモ倍返しの刑とかに処されたら
それこそ本当の地獄。

もちろん
母と祖母は恨む対象なんかじゃない。
寧ろ、同じ”チーム洋梨”として慰めあって、助け合って行きたい間柄。
姉は基本同タイプだったはずなのに、思春期に超過激ダイエットをやって、
色々なものの犠牲と代償の果てに、
異常レベルの根性で下半身まで痩せ尽くしたインポスター。
彼女が持っていて、私が持っていないのは
何がなんでも確実に最後までやり切る、グリッド力。
彼女はその異常レベルの根性と執着心とグリッド力で
なりたい人生をめっちゃ切り拓きまくった民。
めっちゃ尊敬してるけど、
正直、うまく足抜けしやがって!
って思ってるから
チーム洋梨からはキッキングアウト済み。

そんなこんなでここまできたから
当然やさぐれてるし、普通にこじれてる。
可愛い筋トレ系ユーチューバーが脚やせの動画内で
「下半身は大きな筋肉が集まっている場所だから、意識して鍛えましょう!痩せます!」
とかキラッキラな笑顔で言うと、
「知ってるよ。あなたは、結局体重の減りと共に下半身だってちゃんと痩せてくタイプでしょう?そんなのお見通し!」ってわめく。

「昔は下半身デブだった」って言うダイエット系ユーチューバーには
「証明しろ!あんたの先祖の脚の太さのファミリーツリーでも作って証明しろ!こっちは呪われた洋梨体型一族出身だぞ」って逆ギレる。

「たくさんワークアウトして縮んだ筋肉を伸ばさないから太くゴツくなっていってしまいます。ストレッチをいっぱいしてほぐしましょう」って言うヨガ系ユーチューバーには、
「生まれてこの方ずっと太くてゴツいんだが、伸ばす暇もないくらいにずっとゴツくて太いんだが。
お腹の中にいる時から、めっちゃ負荷をかけまくって筋トレして、縮こまったままだったんだな、私。すごくない?」って誰も得しない謎マウントをとる。

下半身には
どうやら地雷が埋まってる。
誰も触れてはいけない危険地帯。
決して掘ってはいけないマインフィールド。
で、そんなふうにアンタッチャブルな左右両太ももに
いろんなものを詰め込みながら詰め込みながら
丹念に丹念にここまで成長させたのだが、
そのせいで、
子供達を数メートルもバイーンって跳ね飛ばしてしまう兵器が出来上がってしまった。


ねぇねぇ、そろそろ気付いた?
時間いっぱいたっぷり使って、
頭の中の思考グルグルばかりで、
痩せる努力をしているような気だけは大きくなっちゃって、
ほんの一ミリだって体を動かしていないこと…

って声がする。

ハッ!?

指先ピコピコ動かしてPCで検索してるだけで、
実質消費エネルギー0。
結局、粘土コネコネチマチマやってるのと同じ。
怖い怖い怖い…
管理庫行きしたポリマークレイの、執念深いしつこい生き霊に憑かれてたみたい。


だから、
とにかくもう
我が家のエリアにある
ジムって呼ばれてる場所に、いきなりダッシュした。

続く

心地良いプレッシャーをありがとうございます!もっと面白くなるかどうかは、あなたにかかっていると言っても過言ではないのです!今後も、”全力の合いの手”をよろしくお願いいたします!