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グリム童話I 最初に

グリム童話は、子供の時から大好きだった。
図書館で片っ端から読み、気に入ったものは誕生日プレゼントにお願いして、宝物にしていた。
本棚が宝物で増えていくのが、何より嬉しかった。

ドイツの伝統工芸品に、錫の飾りがある。
クリスマスツリーの飾り用の小さなものから、部屋の飾りになる大きなものもある。

私は、その一つに一目惚れした。
大学生の時に短期留学していた街Rothenburgで、ふとした時に目にしたものだ。
かなり大きくて、家の形をしている。
部屋のように区切られたところに、それぞれのグリム童話のお話のシーンがある。
こちらが実際の写真。


最初に見かけた時にときめいたけれど、留学中の私には値段が高過ぎて購入を諦めた。
数年経ってから同じ街を訪れた時、この飾りを思い出した。
そこで、同じお店に行き同じものがあったら買おうと決め、そのお店に向かった。

それは、あの時と同じように壁に飾ってあった。
店員の初老のおじさまに、数年迷ったけど買います、と声を掛けたら、きっとあなたを待っていたんだねぇと笑顔で答えてくれた、そんな思い出の品。
私はおじさまに、数年前に留学でこの街に住んだ事を手短に話した。
再度訪れた時には、私の通っていた学校は閉鎖されていたけど、おじさまはその学校の事を良く覚えていた。

また、いつでもいらっしゃい。

おじさまがそう言って大切に包んでくれた飾りは今、自宅の玄関に飾っている。

私のパートナーに、その購入の経緯を話した時に、グリム童話が好きだという事も伝えた。

話は変わって、ある年のクリスマス、私は散々な目に遭っていた。
急性胃腸炎にかかり、一週間入院したのだ。
健康だけが取り柄の私にとっては、初入院。
パートナーの実家でのクリスマスパーティーにも行けず、姪っ子甥っ子にも逢えない。
感染の危険もあるので、お見舞いも禁止。

そんな中、パートナーはずっと私の病室で、面会時間が許す限り、私の側にいてくれた。
感染の危険もあったのに、私をクリスマスに一人にはさせないよと、防護服とマスク、手袋をしたまま、一週間の間、病室で過ごしていた。
良く考えたら、私よりひどい状況かもしれない。

今になって振り返ると、感染やマスクという存在が、今ほど身近ではなかった。
たった二年で、私達の生活環境がすっかり変わってしまった。

そして、パートナーはクリスマスに、グリム童話集をプレゼントしてくれた。
病室で思わず歓喜の声をあげた。
全73話で、辞書くらいの厚さがある。
こんなにお話があるのを知らなかったが、調べてみたところグリム童話は全部で210話あるというので、これでも一部。

——グリム童話——
1812年初版出版
グリム兄弟( Jacob / Wilhelm )によってメルヘン(Märchen 昔話や言い伝え)が収集されたもの。
そのため、物語の舞台となった実際の街が存在する。
次回から訪れた場所の記録。

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