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透明な髪

最近、白髪が目立つようになってきた。
普段はそれほど気にならないのだが、髪の分け目を変えると、隠れていた白髪に気付く。

日本語では『白』い髪と形容されるが、ドイツ語ではgraues Haar グレーヘア という。
最近は日本語でもグレーヘアと呼ぶらしいが、言われてみると確かに、白というよりはグレーに近い色のかたが多い。

白髪が気になり始めてからは、美容院でハイライトを入れてもらって目立たないようにしたり、全体を明るい色にしたり、髪を短くしたり、色々な方法を試した。

歳を重ねることに対し、今まであまり抵抗はなかった。
言い換えるならば、若くあり続けたいと願って必死に対策を打つような事は、全くしてこなかった。
しかし、こうして目に見える変化を前にすると、多少は戸惑い、そして悩む。
そんな心のうちをパートナーに話した時に、こんな事を言ってくれた。

こう考えみたらどうかな?
白髪でもグレーヘアでもなく、Ditoの髪は『透明』になってるんだ。
ほら、僕にも透明な髪がある。
お揃いって嬉しいね。
そして、一番大切なことを言うよ。
それは、どんな髪色になっても、君の魅力は変わらないという事だよ。

日本語に訳すと、少しカッコ良過ぎるだろうか?

加齢をテーマにして友達と話すと、歳の割に若く見られる私は、そんな悩みは大した事がないと笑い飛ばされる。
もちろん、私を勇気づけるために、わざと笑い話にしてくれるのは、友達の優しさなのだが。

いくら若く見えても、私だってそれなりに加齢について悩むのだ。
しかしあの日にパートナーから、白髪も加齢もポジティブに変換する言葉をかけてもらい、私は一気に嬉しくなってしまった。

そして、その日から、私は白髪が気にならなくなった。
私は、透明な髪を持っている。
しかも、パートナーとお揃いだ。
白髪を見つけた時、今の私はこう思う。

おっ、今日も綺麗な透明だね。

そして私は今、こんな事を考えている。
パートナーが私にくれた魔法の言葉『透明な髪』。
私もいつか誰かに、こんな素敵な言葉をプレゼントできる人間でありたい。
誰かにとって不安な事、辛い事を、ひっくり返す程のパワーを持つ言葉。
言葉一つで、心が変わる。
そんな魔法の言葉は、きっと、どこにでもあるはずだから。


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