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グリム童話VI 白雪姫と魔法の鏡 前編

鏡よ鏡よ鏡さん、世界で一番美しいのは誰?
Spieglein, Spieglein an der Wand, wer ist die Schönste im ganzen Land ?

誰もが知っているこの台詞は、グリム童話 白雪姫に出てくる魔法の鏡だ。

白雪姫の舞台と言われる場所は、ドイツに何箇所かあるようだ。
Bad Wildungenという街にもSchneewittchenhausという白雪姫のおうちがあるそうだ。
私は、そんな数ある街の一つ、Lohr am Main ローア アム マインを訪れた。
マイン川沿いのローアという名前の通り、マイン川に沿って街が形成されている。以下、ローアと記載。

私には、白雪姫に少し苦い思い出がある。
何がきっかけだったのかは忘れてしまったが、小学校低学年の頃、友達と話をしている時に、白雪姫の継母の最期について話題になった事がある。

私は、ディズニーより先に、グリム童話に触れた。
私の友達の中には、ディズニーで白雪姫を先に知った子もいた。
私が、「真っ赤に焼けた鉄の靴を履かされ、死ぬまで踊り狂わされた」のだと話すと、友達は、そんなひどい事は無かったと言う。そして、そんなひどい事を言うあなたが怖いと、泣かれてしまったのだった。
幼い私はどうすることもできずに、ごめんなさいと、ひたすら謝るしかなかった。

今だから分かる。
グリム童話は、おとぎの国の夢の話ではなく、子供たちへの教訓の意味がある。
だからこそ、悪いことをしたら罰が与えられるのは当然だ。
グリム兄弟は、何度も改定を重ね、より子供読みやすい話にしていったと言われている。

そんな幼い日の思い出が、はっきりと蘇ってくる。
そして、白雪姫のお城を見に行くと言うと、白雪姫の大ファンなのかと思われるかもしれないが、白雪姫のお話は私にとって残忍過ぎて、好んで読むことをしなかった。

意地悪な継母はよくある話だけれど、殺そうとするなんて、いくら何でも酷すぎる。
白雪姫の死体を欲しいと言った王子様も、正直なところ気味が悪かった。
そして、結婚式の日に、継母に真っ赤に焼けた鉄の靴を履かせ、死ぬまで踊り続けさせるという刑を執行する王子様や白雪姫の行動が理解できず、恐ろしかった。
一番幸せな日であるべきなのに、そこに残酷な死が共なうことに、幼い私は違和感を感じた。

また、白雪姫自身の描写にも、憧れることがなかった。
小人の家を見つけた時は、お腹が空いたと言って、テーブルに準備してあった食事を断りもなく食べてしまう。
食べた後は眠くなったと言って、小人たちの小さなベッドを繋げて、断りもなく勝手に寝てしまう。
白雪姫の行動は納得できない事ばかりで、幼いながらも、あらゆる事に疑問を持ちながら読んでいたのだ。

小人達から、決してドアを開けてはいけないと何度も忠告を受けているのに、言いつけを守らず、騙されて何度も命を奪われかける白雪姫に、幼い私は少しイライラした。

どうして言いつけを守れないの?
どうしてみんなを心配させるの?

本のページをめくる度に、私は白雪姫に語りかけた。
「扉を開けちゃダメ!」

赤ずきんちゃんが、狼にそそのかされて道草をする場面でも、私は同じような事をしていた。

そして、白雪姫が王子様のキスで目覚めるのは、ディズニーだけのお話。
グリム童話では、ガラスの棺を運ぶ時に、使用人がつまづいて棺が傾き、白雪姫の口に入っていた毒リンゴが出てくる。
そんな事で生き返るなんて、嘘っぽくて信じられなかった。
それなら、ガラスの棺に入れる時に出てきてもいいだろう。
毒リンゴなのだから、リンゴの欠片が出てきたところで、すでに体に毒が回っているはずだ。
そんな風に考える私は、少々変わった子供だったのかもしれない。

白雪姫と同じように継母を持つシンデレラが、心優しい少女であり、冷酷な仕打ちを受けていたという人物像であるのに対し、白雪姫はその美しさだけが取り上げられるのも、何だかつまらなかった。
美しいがゆえ継母から恨みを買い、美しいがゆえ小人たちがかくまってくれ、美しいがゆえ王子様に見初められる。
私は、そんなお話は、あまり面白いと思えなかったのだ。

そんな子供時代でも、ディズニーの白雪姫はとても可愛いと思ったし、七人の小人のぬいぐるみをお誕生日プレゼントで頂いた時は嬉しかった。

さて、ドイツには、中世にタイムトリップしたような街がいくつもあるが、ローアもそんな街の一つだ。
フランクフルトから一時間の距離で、こじんまりとした街は、一日で観光するのにちょうど良い。

まずは、街を守っていた城壁の一部を見つける。

城壁、木組の家、細い路地。
前日まで、フランクフルトの超高層ビルの中にいた私は、一気に何百年もの時を遡り中世の街に来てしまった。

ガイドブックにも載っていない、訪れたことがある知人もいない、小さな街。
こちらの噴水は、街の創立600年記念として、1936年に建てられたもの。

噴水の後ろに見える建物はレストランで、こちらで夕飯を頂いた。

こちらの写真の建物は、旧市役所。
新しい市庁舎は、お城のすぐ側にある。

こちらの写真は昔の城塞の一部で、Bayernturm バイエルンタワーと呼ばれている。
40メートルもの高さがあり、ここで見張りをしていたようだ。

そして、街の目抜き通りにある薬局前には、こんなモニュメントが。

ここから童話が始まりました
1986年
白雪姫が、ローア出身であることが、この家で証明されました

なぜこの薬局の建物に、このような文言が残されているのか。
その答えを、後にお城の中でより詳しく知る事になった。

街の中では、至る所で白雪姫を見つけることができる。
公園のベンチに座る白雪姫。

マイン川に注ぐ小さな小川、Keilbach カイルバッハのほとりに描かれた白雪姫。

お土産のモチーフにも、たくさん使われている。フランケン地方のワインは、このような特徴的な形をしている。

街にはたくさんの美しい建物や、公園がある。
こちらは、街を守るように聳えるSt. Michael 聖ミヒャエル教会。

こちらの写真は、旧ギムナジウム(日本の高校にあたる)の建物。

こちらの写真はお城の近くの場所で、1958年ドイツ空軍の輸送機がこの地に墜落し、6人のかたが命を落とした事故があり、その慰霊碑。

すぐ近くには、戦争でのユダヤ人犠牲者のための慰霊碑も建てられている。

どちらも悲しい歴史だが、花々が咲き乱れ、犠牲者のかたを癒してくれているようだった。

街で一番美味しいと評判のケーキ屋さんへ。
評判通り、とても美味しいケーキだった。

昼間はテラス席も店内もいっぱいだったが、こちらは閉店間際の様子。

ドイツのケーキは、倒れていたり、フォークが刺さった状態で運ばれてくる。

木組の建物が並ぶ道を歩いて行くと、お城に辿り着く。

白雪姫とローアの街の関連については、後編にて。


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