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KURIOS 1分間の物語 シルク・ドゥ・ソレイユ

1年ほど前、シルク・ドゥ・ソレイユについて記事を書いていた。

あの舞台を見てから、早4年。
彼らがまた、デュッセルドルフへやって来た!
私は、発売日初日にそのチケットを手に入れた。

今回の舞台名は、Kurios。
この舞台は、劇団にとって35作品目、そして創設30周年を記念し、2014年に制作された作品だという。
ドイツ語訳されているのかと思いきや、全世界での公演がこのKuriosだそうだ。(日本公演ではキュリオス)
これは「奇妙な」という意味のドイツ語。
そして副題が、Kurioustäten Kabinet。
摩訶不思議なものを集めたキャビネット棚、とでも言えるだろうか。
初演から現在まで、世界30都市で500万人以上の観客動員数を誇るらしい。
また、公演の中で最も多くの小道具を使用しており、ショー全体で 464 個もの小道具が使用されているという。
公演時間は二部制で、約30分の休憩を挟み、全2時間半ほど。

舞台説明の意訳をしてみると、設定はルネサンス期。
貴族や商人、科学者達は、美術品や工芸品を収集した。
それらが飾られる場所が、副題にもある『摩訶不思議な物を集めたキャビネット棚』だ。
それらの品々から、まだ見ぬ世界や冒険や、世界中に隠された秘密を思い起こしたのだろう。

主人公ともいえる科学者シークの実験室から、この物語が始まる。
無邪気な心を持つ彼は、目に見えない世界があると信じていて、自分の直感と想像力を信じれば、奇跡を起こせると気付く。
集めた骨董品で新しい機械を作り、そしてこの機械たちに、命が宿るという面白い展開だ。

それぞれのキャラクターの持つ独特な雰囲気、ユーモアがたまらなく面白い。
メインキャラクターの一人であるクララは、池田一葉さんが演じられていた。
日本公演も、池田さんが演じられたそうだ。
池田さんのインタビュー記事はネットにたくさん掲載されているのだが、こうして一人一人のキャストのかたのご経歴やご苦労を知ると、より一層尊敬の念が高まる。

こちらの写真は公演前。
舞台奥から観客席にかけて吊り橋が架かり、観客の数人がこの橋を渡ってくる。
(裏舞台を見学できるチケットなのか、どのような理由なのかは聞くことができなかった)

さて、舞台中央の時計は11:06を指している。

そして、公演開始から時が進み11:09に。

そして、いよいよ11:11分。
蒸気機関車に乗ったキャラクター達が、一気に舞台に飛び出してくる。
11:11とは、幸運を招く時間だそうだ。
蛇足だが、ドイツでは11月11日の11:11分は、カーニバルが始まる時間でもある。

アクロバティックな演技、ネットを使ったアクションなどの演技はもちろんすごいが、仕掛けや舞台装置が圧倒的に美しくて、思わず見惚れてしまう。

全部で11個の演目が披露され(これも11という数字に拘ったもの?)、合間にはピエロ役の演者さんが会場を周り、観客をステージに誘い、面白おかしく誘惑しようとする。

アップサイドダウンと名付けられた演目は、上部が鏡の世界という設定。
個人的には、この世界観が一番好きだった。

衣装もとても面白い。
このネットを使う演目は、ネットは水面、キャストさん達は魚を表しているようだ。
そのため、衣装にはヒレや尾があり、水の上を力強くジャンプする。

舞台には常に音楽が流れ、写真中央の女性がシンガーだ。
何度も繰り返し流れる曲はとても印象的で、頭に残る。
特に、Monde Inverséという曲が記憶に残っているが、今もその曲を聴きながら、この記事を書いている。

途中の休憩でお手洗いに向かったが、後ろに並んだ男性が曲を、ララララ〜と上手に口ずさんでいたので、思わず笑ってしまった。
帰りの路面電車の中でも、楽しそうに歌う人達がいて、ショーの余韻に心地良く浸った。
(ホームページにて試聴できるので、参考までに最後にサイトを掲載します)

念願の一番前の席だったので、キャストさんの表情がはっきりと分かる。
その距離、1メートルほど。
頭の上をキャストさんが飛び越えたり、私を驚かそうと近づいたり、または私に微笑みかけ一緒のリズムで手拍子をしてくれたり、この距離感ならではの楽しみがあった。

そしてこの2時間半の舞台は、11:11から11:12にかけての、たった1分の間に起こった出来事という設定らしい。
最後のシーンで、時計が11:12と表示されるからだ。
だからこそ、最初にわざわざ時計を目立たせるような演出だったのかと納得する。

次々と披露される技に見入ってしまうと、たしかにこの2時間半は、あっという間に終わってしまう。
それほどまでに、魅力が凝縮された時間だと言えるかもしれない。

舞台が終わると、会場全体に拍手が湧き上がり、スタンディングオベーションは、長く長く続いた。

1984年に設立されたシルク・ドゥ・ソレイユは、今年で結成40周年。
この舞台を見る事ができて、本当に良かった。私は一度目の公演よりも更に強く、沸き立つような感動を覚えた。

目に見えない世界がある。
自分の直感と想像力を信じれば、奇跡を起こせる。

演技や芸術的な素晴らしさだけではなく、このような心に残るメッセージが、この舞台にはある。
単純な私は、すぐに影響されてしまう。
今なら私は何でもできる!
奇跡さえ起こせそうな気がしてしまうのだ。

コロナ禍では公演ができず、なんと全体の95%のキャストさん達が解雇されてしまった。
しかし、こうしてまた輝く舞台に立ち、素晴らしい芸術を私達に披露してくれている。
これも、奇跡の一つと言えるのかもしれない。

日はまた昇る。
そう、シルク・ドゥ・ソレイユは、太陽のサーカスだから。

掲載した写真は、自分で撮影したものです。
あらかじめ会場内の案内担当の方に、撮影について確認しましたが、公演中はフラッシュ撮影のみ禁止で、通常の写真は撮影可でした。
短い動画撮影もOKでしたので、観客はそれぞれの形で思い出を残していました。
しかしながら、日本公演ではフィナーレまで撮影禁止となっている事を知りましたので、ドイツ公演のルールを念のため追記させて頂きます。

デュッセルドルフ公演は、4月14日までです。
ご興味のあるかた、そして公演の歌が気になるかたは、是非こちらをご覧ください。

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海外でご活躍されているアーティストには、先日の記事で取り上げた、ドレスデンのバレエダンサー綱木彩葉さんもいらっしゃいます。

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