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フランス モン・サン・ミッシェル 手の届かない場所

初めてこの風景を見たのは、実家のリビングに飾ってあった大きなカレンダーだった。
カレンダー写真の下に、その名前が記載されていた。

『フランス モン・サン・ミッシェル』

何度も繰り返し、幼い私がその小さな脳に刻んだ異国の地の名前。
そして、いつかこの風景を見ようと心に決めた。

その願いが、ついに叶った日。
私達は、パリからの日帰り旅行でモン・サン・ミッシェルに向かった。

ここは島であり、またその上に修道院が聳え立っている。
モン・サン・ミッシェルは、聖ミカエルの山。
修道院だけでなく、その島全体を表す言葉なのだそうだ。

遠くに、カレンダーと同じ風景が見えてくる。
あぁ、この景色だったと、カレンダーのモン・サン・ミッシェルが、脳裏に蘇る。

近くまで来ると、その全景がはっきりと分かる。
まるでバベルの塔のようだ。
この島自体が元々聖地として扱われてきたが、礼拝堂が建てられ、966年に修道院という形で建物の建設が始まったという。

フランス革命時には監獄として利用されるも、後にまた修道院として復活したのだそうだ。
1979年、モン・サン・ミッシェルは世界遺産に指定されている。

グランド・リュ
修道院の麓は、小さな路地にお店がびっしりと建ち並んでいた。
まるで迷路のようだ。

人気のオムレツ屋さんで、巨大なオムレツを頂いた。
ラ・メール・プラール La Mere Poulard

評判通り、フワフワのオムレツだ。
私はキノコ類が入ったソースのオムレツを頂いた。
美味しさについては、評判が分かれるオムレツだと聞いていた。
私達も、意見が二手に分かれてしまった。
どちらがどんな意見だったかの言及は、、、ここでは避けておこうと思う。

オムレツを焼いている様子は、外からもガラス越しに見る事ができる。
たくさんの卵を泡立てている様子は、見ているだけで面白い。

お腹が一杯になったところで、修道院に向けて登り始める。
とても暖かい日で、アイスクリームを片手にのんびりと、坂や階段を登った。
気持ちよく晴れた一日だった。

こちらが、メインとなる付属教会

ラメルベイユの回廊
どこまでも続く回廊の柱が、とても美しい。

修道士の遊歩道
こちらのアーチ形の柱も美しかった。
壁の一部は、岩をそのまま利用しているのだそうだ。

こちらは、かつて食堂に使われていた場所。

西側のテラスに出ると、千潟が確認できた。
このサン・マロ湾もまた、モン・サン・ミッシェルと共に世界遺産に指定されている。

この地は、キリストの巡礼地であった。
干潮時しか、このモン・サン・ミッシェルを訪れることができない。
たくさんの巡礼者がこの地を目指し、そしてその思いを遂げることなく、潮に飲まれ亡くなってしまうことさえあった場所でもある。

一度、道路や鉄道ができたそうだが、潮の流れが変わり環境が変化してしまったという。
そのため、道路は取り壊され、2014年には新たな橋が架けられているのだそうだ。

街に降りて来てから、友達へのお土産に、ラ・メール・プラールのビスキュイや、塩キャラメルを買った。
もちろん、自分へも同じものを買う。
美味しい物は大好きだから。

帰る前に、最後にもう一度、モン・サン・ミッシェルを振り返ってみる。

幼い頃、いつか訪れたいと願った場所は、日本から遥か遠くにある場所だった。
手の届かない場所にある風景。
干潮時しか訪れる事ができないという、その制限された現実が、その場所をより一層手の届かない存在にしているように思えた。

手の届かない場所だと思い続けていた場所を、ようやく訪れる事ができた。

また一つ、夢が叶った。

しかし今、思い出は遥か遠く、もう手の届かない場所にある。

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