会話のチカラ
おいでませ。玻璃です。
小学生生活も残りわずか。
卒業前にクラスのみんなに自分用の寄せ書きを書いてもらう。
「中学生になっても遊ぼうね」
「中学は別々だけどずっと友達!」
「これからも明るく元気な玻璃ちゃんでいてね」
などなど、みんなかわいいイラストを描いてくれたりして賑やかでかわいい寄せ書きになった。
その中で、竹内さんこと「おタケ」の書いてくれた言葉に目がとまった。
「掃除の時間に話してくれてありがとう」
「ん?掃除の時間?」
私はピンとこないまま、脳みその記憶の茂みをかき分けてやっとおタケの書いてくれたことを探し出せた。
あれは確か2学期が始まった頃だろうか?
いつもの掃除とは別に大掃除の時間があり、日頃は細かく掃除しない場所を何人かでグループになり掃除する事になった。
私は学校の校舎の裏の狭い裏庭のような場所をおタケと二人で担当した。
おタケは背が低く手足が短い。
言葉もあまりハッキリ喋れなかった。
生まれ持った病気のせいだということは今になってみればわかる。
さらにおタケの家は貧しかったようで、制服のブラウスは黄ばみ、スカートは色褪せていた。
お風呂にもちゃんと入れてなかったのか、そもそもの赤ら顔が黒ずんで、天然パーマの髪の毛もベタベタしていた。
病気や貧しさのせいだとわかっていても、子供というのは残酷なものでそんなおタケを皆からかっていた。
私だって例外ではない。
からかうとおタケは叩いてくる。
手が分厚く小さいので、平手で叩いてきてもゲンコツで叩かれたように痛い。
「もう〜!おタケ痛い!」
「あんたらぁがいじめるからやろ!」
と、おタケも負けてない。
いじめられっぱなしじゃないところが頼もしい。
そんなおタケと掃除でペアを組んだ時、いろんな話をした。
私は誰かといるときに沈黙できないタイプだ。
特に二人きりとなるとコミュ力が爆発する。
「おタケって何人きょうだい?」
「おタケは誰のファン?」
「おタケの好きな食べ物は?」
などなど、どうでもいい事を質問して話を膨らませた。
おタケはたどたどしい言葉だったが、楽しそうに話していたっけ。
もう一度寄せ書きに目を落とす。
ああ、あの時のことか。
私はとっくに忘れていたことだが、おタケにとっては印象に残る嬉しい時間だったのだろう。
読んだ私も嬉しくなった。
この時はいいこととして覚えていてくれたが、もしかして誰かを傷つけたことも私は覚えてなくて相手は覚えていることがあるかもしれない。
そう思うと少し怖くなるが、それでも私の個性でもある”おしゃべりモンスター”をこれからもいい方向に活かせるようにしていきたい。
「会話」の持つパワーを改めて思い出させてくれたおタケ。
今はどうしているのかな。
ではまたお会いしましょう。
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