長谷川ひとね

芽吹いた言の葉、生い茂り詩とならんことを🌿

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星は 名もない人たちに殺された名もない人たち 名もない人たちを殺した名もない人たち

    • あいおもい

      鳥 鳴かず 蛙 鳴かず 濃い桃の空 鎮まりて 窓を慕い ひややかに 入りきて 納まる目なし 床を這い 寝息にかぶさり 連れてゆく 紛う方なき 彼の国(かのくに) 相思い 待ち侘びて 言わずもなが 手を取り目合う

      • いつもの一日

        空が白んだら 鳥が鳴いたら トーストと珈琲 白い月を仰ぎ 花に水をやり 庭を掃き 太陽に月が消され ペイジをめくりめくり 風の匂いが変わるころ 夕焼け窓に背を向け ひっそりと月が佇む 星が存在を 輝かせるころ 瞼は深く閉じて

        • たったひとつ

          キリがない どこまでいっても 何を得ても 満足できない 我儘なの? 贅沢なの? 欲しいものを 間違えているのかな 欲しいと思っていたものは ほんとうは取るに足りないものだったのかも 人と比べながら 焦りながら 喘いで求めていた 取るに足らないことを いつか身体と消えてしまうものを ほんとうに欲しかったのは あなたといること そして あなたでなくては だめだということ 邪魔なプライド 邪魔な常識 何も目指さなくてよかったんだ あなたがいれば それで良かったんだ

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          蒼のとき

          神への敬意 順序よく立ち生える 命の蒼 こんなにも柔らかい蒼が あんなにも強くなる 息吹あふれ 気はいつも天へと 真っ只中にいる者も そうでない者も その目に栄える 蒼を蒼く 一瞬“とき‘’にして 和風月名の詩 皐月(5月) 最終篇

          SNSのある夜

          澄んだ過去の中に入れて いつも眺めていました 止まったままの二人を 育てることの出来なかった 時を 何も変わらず いつまでもそこに在ると そう信じていたから 長い月日にも耐えてきたから 大丈夫だと思って とうとう外に出しました 知らぬ間に時代は 澄んだ過去を 最も簡単に一跨ぎ 二人を繋いではくれたんだけど 今の風に あなたは蝕まれていました 何処へ向かえばいいのだろう 届けられなかった手紙を破いて 悔しがればいいのかな 伏線回収に浸ればいいのかな 慣れないSNSの

          観覧車

          観覧車に乗って 小さくなっていく私を 見下ろしています ゆっくりとした揺れは 過去をキラキラと 降り堕としていきます いつも知らん顔をして 私の横を通り過ぎていく そんな喧騒たちは ここにはもういません 月にとどきそうな予感 優しい夜になりそうです どうか切ない映画音楽を流してください

          明日も風は強いらしい

          商店街の角で 先ほどから 同じ会話を 何度も何度も繰り返している 二人の老婦人たち 自転車のハンドルを 握ったまんまの 立ち話し アーケードの中を 枯れ葉が駆け抜けていく 夕日が 健康な老化を照らしていた 明日も風は強いらしい

          明日も風は強いらしい

          初節句に

          まっちゃまちで 会ったことないお婆さんが 「お顔が良い」 そう言うて見立ててくれたと 父は嬉しそうだった お雛様が我が家に来た日 あれから三十三年 娘は三人姉妹の母となり 父はあの世へ お雛様は 色褪せもせず 今年も微笑んではる 和風月名の詩 弥生(3月)

          ころこぶ

          如月ほど あなたを感じる 雲の切間の  薄っすらとした陽の光は 寸分の狂いもない  采配の中心点で 立ちあがろうとする萌え まだ見えぬ香り 万物が動きだす予感は 透明な花弁をほころばせ ころこばずに おれようか おれようか 和風月名の詩 如月(2月)

          夜に、それは冬の雨

          お気に入りは ドリトス ワインは白 二杯でやめておく Netflixで ドラマを眺めながら 次にヨーグルト 手作りの林檎ジャムをのせて 〆はアレルギーの薬を二錠   外は冬の雨 瞼に聞こえる  平凡な私の 平凡な一日が終わる

          夜に、それは冬の雨

          千代紙

          二人裸で抱き合えば 肌に張り付く  セピア色のポートレートが 千代紙になる そんな冬の夜

          ことほぎ

          大晦日の仕舞い湯の後 ことしと らいねんの狭間で 洗濯物を干す 遠くの除夜の鐘が 百八つを打つころ らいねんは おごそかに ことしになる 月夜の庭にて 新玉の 年の初めの寿ぎを 申し上げます 和風月名の詩 睦月(1月)

          直ぐにお風呂に入れて 寝かせてあげたかった 駅のベンチの下で一夜を明かし 嘔吐物で白いティーシャツを赤茶色に染め 髪はボサボサ所持品は無し 泥酔のはての虚な彼を 警察から呼び出され 車を飛ばして迎えに来たのは 私が彼の母親だから ベンチに置かれた水のペットボトル  ついさっきまで 死が そこにいた 道々抱えてきた怒りは粉砕し心臓が凍りつく お風呂に入れてあげたくて 布団に寝かせてあげたくて 私は彼より小さくなった母だった ずっとこれからも母だった 警官に促され

          確認書類

          マリーアントワネット風の髪型に 長いイヤリングをぶら下げ 老人ホームにいるはずの 二人の伯母がファミレスの席につく 先に来ていた伯母は昔とちっとも変わらない もう一人、知らない女がいる 伯母達は私のことを覚えているのか 確かめようとするが 各々喋りまくっている 相変わらず賑やかな関西弁が飛び交う   伯母達はネイルで煌めく長い爪を上手に絡ませ 互いの手を取り笑っていた ぽつねんとした私は先に来ていた伯母が とうに亡くなっていることを思い出した やがて女は徐ろに書類を広げ

          ニュートラル

          今年を丁寧に終えるため 慌ただしい日々を ニュートラルに 雪まじりの雨に濡れて 北風に吹かれて みんな小さな たわいもないこととなり 冷たい夜空の星屑に キモチは空っぽになる あたらしい朝へ シフトで 和風月名の詩 師走(12月)

          ニュートラル