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野心ゼロのイラストレーターがなんでオンラインサロンを始めたの?

イラストレーター&コミックエッセイストのハラユキです。

2018年の秋からオンラインサロンを主宰してまして、スタート時にバルセロナに住んでたこともあり「バル・ハラユキ」という名前で、オンライン上の架空のバルという設定でやってます。50人ちょいくらいの、まだ少人数の小さなサロンです。

で、そのオンライン・バルについて、日本に本帰国してから、同業友人知人によく聞かれるのです。

「あれ何なの?」「やってみてどう?」「なんで始めたの?」

これにいつもうまく回答できなくて、でも気になる気持ちもわからなくもないので、noteに書いてみることにしました。



まず、最初に書いておくと、オンラインサロンというと「会費だけで月商◯千万!」「サロン内でビジネスがまわる!」みたいなハデな話が耳に入りがちで、そういうサロンも実際にはあるのでしょうけど、うちのバルとは別世界の話。違いすぎるので、私は普段「サロン」という言葉は使わないようにしてるくらいです。なので、そういうビジネス話だと思ってこのページを開いた人は、ハイ回れ右!早急に離れて~。離れて~。

実際、オンラインサロンという仕組みは、誠実にまっとうにやっていれば基本の手間がむちゃくちゃにかかります。

コミュニケーション能力がかなり必要だし、トラブル対応も必要だし、コミュニティの仕組みメンテナンスも進化も必要。だから、収益が大きいサロンも決して楽に儲けたりはしてないはずです(繰り返しますが、まっとうなサロンならの話)。国内最大級3万人越えのサロンを運営するキンコン西野さんも「カンタンに儲けたい人が手を出しちゃいけないのがオンラインサロンオーナー」みたいなことを言われてた記憶があるのですが、それは私も真実だと思います。特に、会費の安いうちのサロンなんて、私の手間を計算したら、お金的には大赤字です。

あと、オンラインサロン・オーナーというと、野心に溢れまくった人がやるイメージかもしれませんが、自慢じゃないですが(というか、フリーランスとしては大弱点ですが)、私の野心はゼロです。

私は、おいしいごはんを食べて温泉に入ってたまに祭りで踊ったりしてればハッピーになれる人間なので、たとえば「有名になりたい」みたいな「こうなりたい」系の野心がないのです。実際、大学でたあと就職せずにフラフラしていたし、イラストレーターになったのもたまたまの流れだったので、「こんな無計画なイラストレーターが食べていけるほど甘い世界じゃないだろな〜。ま、一人暮らしだし、食えなくなったら居酒屋でバイトしよ!」と思いながらスタートしたくらいです(今考えるとアホすぎて震えるぜ)。でも、なんとか10年以上も低空飛行ながらバイトせずにやってこれて、ありがたいことに著書も出版したりもしています。

……そう書くと、幸運自慢かよ!と思う方がいるかもですが、いちおう性格がかなりマジメなもので、仕事自体には真摯に必死に取り組んできたつもりだし、「こうなりたい」はないけど「これやりたい」は山ほどある人間ではあります。あと、ひとつのテーマにはまるとしつこいくらい追求してしまうので、たとえば、シェイクスピアがこれ一冊でまるわかり!的な参考書イラストを担当したときは、睡眠を削ってシェイクスピア原作を全作読破したし映画舞台動画も見まくりました。そこまでしなくても描けたかもしれないけど、もうそのときはシェイクスピアにドハマリして楽しくなっちゃってたからです。そして自分の出産後は、家事育児分担をテーマのひとつとしてずっと追っているので、それに関してはものすごく真剣に考えてきたし、追求してるうちに、思わず海外取材にも行ってしまったほどです。野心はないですが、好奇心と欲望はむちゃくちゃある人間です。

というわけで、前置きが長くなりましたが、じゃあそんなイラストレーターがなんでオンラインサロンを始めたか、です。

まず、うちのバルの第一の目的は「循環」です。

なんのこっちゃ、というかんじだと思うのですが、それを語るには、バルがどんなものか説明したほうがわかりやすいと思うのです。バル自体はこんな仕組みになっています。

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こんなイメージで、メンバー同士で情報をシェアしあったり、グチが言えたり悩み相談ができる仕組みです。その悩みへのアドバイスも、メンバーの中の気が向いた人が答えています。基本はFacebookです。

そもそもなんでこんな場所をつくったかといえば、私が東洋経済オンラインで家事育児分担とコミュニケーションをテーマにしたコミックエッセイ連載をやっているのがきっかけです。

こういう連載をしているので余計に目に入るのですが、SNSにはワンオペ育児の叫びとかパートナーへのグチとかが溢れています。そこでグチって解決したりスッキリすることもありますが、変な人がクソリプ飛ばしてきてさらに消耗してしまうときもある。

だったら、そういうリスクがなくグチを言える安全な空間を作りたいなと思ったのが、バルをつくった理由のひとつ。

あと、SNSでそういうグチをみているとき、そのグチ内容に共感しつつも、ずっ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜と思っていたのは、

「このとんでもない怒りや悲しさのエネルギー、ただ世の中に放たれて終わるってもったいないな…。なんかいい方向に活用できないものかな?」

ということだったのです。

グチや悩みを安全に発散できて、なおかつ、そのエネルギーの力をどこかに循環したい。

循環といえば、このnoteのページトップの写真は、去年行って感動したアイスランドのブルーラグーン温泉なのですが、ここは地熱発電の際に大量に出る温水を利用した世界最大の人口露天温泉です。火山が多い国なので地熱がある。なので、地熱発電で電気を作る。その過程でどうしても出てしまう温水を使って超巨大なお風呂を作る。世界中から観光客がくる。そこで収益が生まれる。その観光客は気持ちいい…むちゃくちゃすばらしい循環システムだと思いませんか?

このブルーラグーンに比べたら大分ちっぽけな話になりますが、私の場合は、バル収益として得た半分のお金を、年に一回まとめて他団体に寄付しています。寄付先は、家族関係のNPO団体の候補を集めて、その中でメンバーの多数決(いいね!の数)で決めました。バル内で、その細かい収支も全部公開もしています。

つまりは、ある家庭の悩みやグチが、バルを通すことによって、全く関係のない他の家庭を助けるという循環システムです。

他にこういう仕組みのオンラインサロンは聞いたことないですが、私はとにかく循環させたくて、むちゃくちゃに考えて、こういう仕組みのオンラインサロンを作りました。

ちなみに、初年度は養子縁組をサポートするNPO団体「Babyぽけっと」さんに寄付しました。といっても、うちのバルは月会費も500円とサロンにしては安いし(家庭運営の手助けという位置づけなのに、家計に大きく負担をかけるのは違うと思うから)、まだバルメンバーもそんなに多くないので、10万ちょっとの額なのですが…。

小さな団体なので経理がおらず、寄付控除も出せないと恐縮されてしまったのですが(それは正直フリーランスとしては残念ではあるけど)、でもそういうところにこそ寄付できてよかったなあとしみじみ思ったりもしました。

さてさて、そういう仕組みでグチや悩みに対応してきているバルなのですが、先日、興味深いことが起きたのです。

バル内の個人情報は出さないルールなので詳細は伏せますが、少し前にひとつの相談スレッドがたちました。本人は「こんな重い相談申し訳ない」と恐縮している少し複雑な相談内容でした(相談の場所なんだから、恐縮の必要はま~ったくないのだけど)。それを読んで、これはなかなか回答が難しいなあ、じっくり考えてから回答しようかな、と思っているうちに、メンバーの何人かが真摯に自分なりの考えや応援の気持ちをコメントしてくれてました。すると、そのやりとりの中で、さらに相談者の深刻な事態が明らかになってきて、皆がさらにそれに対して建設的な意見を寄せていました。これは呑気に考えてる場合じゃないなと思い、私も自分なりに考えて回答しました。そんな濃密なやりとりの中で、結果的に、相談したメンバーにとってはいろんな発見があって、問題解決に向けた行動にうつることになったようでした。ほっ、よかったよかった…と思っていたら、そんなやりとりの感想として、ある別のメンバーが、

「重い内容からスタートだったかもしれないけど、オンラインでいろんな助け合いのカタチが見れたことでええ世の中やないかという気持ちになれました。よくぞ相談されたと思います」

とコメントしたのです。これは興味深かった。
だって、本人としては恐る恐る相談をしたのに、しかも重い内容なのに、それがまわりまわって、他のバルメンバーをちょっと清々しい気分にさせている。ああ、そんな循環もするんだなあ!というのが予想外の発見で、バルをやっててよかったなあと心から思えた瞬間のひとつでした。

…と、ここまで読むと、まるで私がボランティア精神の塊みたいに思う方もいるかもですが、私はそこまで器がでかくないので、完全奉仕みたいなことはできません。うちのバルは、私にとってもメンバーにとってもwinwinになる仕組みを目指していますそうでないとコミュニティとしてはまわらないし続かないと思うからです。

まずひとつめとしては、バルの収益の半分は寄付しますが、残り半分は、私の取材費や資料費や勉強費の足しにさせてもらっています。

次に、私はバルからたくさんの情報を得ています。他のサロンでは、オーナーが「先生」「カリスマ」的な立場だったりすることが多いですが、私はただの「カウンターの中にいる店長」。私もお酒がわりにたくさん情報を提供してますが、うちの一部メンバーのリサーチ力がハンパないこともあって、それを上回る情報をもらっています。さらに、悩みやグチからは、家庭のこういうところで悩むのだな…という描き手としてのヒントももらっています。あと、これはスタート時にはまったく予想してなかったのですが、バルメンバーがきっかけで、いくつもの記事が産まれたりもしました。マンガにはバルメンバーも登場してもらっています。下の記事です。

あと、この連載が書籍化決定していて今はその作業中なので、その相談をしたり、バル内で書籍のラフを一部公開したりしています。連載の取材先や内容についても相談することもあります。つまり、バルメンバーにむちゃくちゃに頼って仕事をしているのです。

最初のほうに書いたように、私は画力を追求したいというよりも、とにかく自分が興味あるテーマをとことん追求したい。そして追求して得たことをイラストやマンガを使って世の中に発信したい、そんなタイプのイラストレーターです。そして、私にとっては、そういう作業がむちゃくちゃに楽しい。苦しいけど楽しい。私がイラストレーターになったのはたまたまだけど、そういうことができるこの仕事は天職だと今は思っています。

だからテーマ深堀りのための労力は惜しまないけど、ひとりの労力や視点には限界がある。そもそも私は仕事が早いタイプでも器用なタイプでもないから、誰かの助けを得た方が、もっと深い未知の世界に行ける。そこで知ったことを、もっと広く伝えることができる。

特に「家事育児分担&家族のコミュニケーション」というのは、一見、小さなテーマのように見えて、実は国の経済や政治や文化や思想なども大きく関係する複雑な世界です。私ごときが1人で太刀打ちするには巨大すぎるのです。

だから、私は「フリーランスなりのチーム」がほしかった。

お金を得るのが第一目標ではなく、ひとつの循環システムをつくるため、そして私が追っているテーマを深めるため、そして深めて知ったものを社会に広めていくのに、バルを運営活用しているのです。

そして、それをうまく実現するためのキーワードも「循環」だと思っています。

最近は、バルの運営をメンバーの有志に手伝ってもらっていますが、それもちゃんとお礼をする仕組みで考えています。サロンによっては有志が無償スタッフとなる場合もあり、それはそれでアリだと思うのですが、うちの場合はメンバーのほとんどが子育てに忙しいママパパ。その労働力を無料で搾取するのは、バルの趣旨とも矛盾してしまう。ここもちゃんと循環させたい。ここをどう設計するのがベストかな〜と相談しつつ考えています。あと、バルメンバーにも、バルを自主的に活用してほしいとはよく言っています。私もバルメンバーもバルを活用してこそ循環すると思っているのです。

ところで、最近、もうひとつ循環できないかなーというものがあって。

最近バルにも投稿したんだけど、それは、

芸能人の不倫への怒り

です。

むちゃくちゃSNSに溢れてるよね!!

もちろん私もそういうニュースに思うところはあるけれど、そのSNS投稿の数とものすごいパワー見ていると、ああ、このエネルギーをなんか有効に使えないものか…。不倫発電できればいいのに…。とかつい思ってしまう。まあゴシップメディアとかは、その怒りをうまく吸収してお金を儲けているんだろうけど、そういうのだけじゃなんかちょっと悲しい。どうせ循環するなら、いいものに変えてしまいたい…。

世の中にいっぱいいるであろう賢い人たち、何か素敵な循環システムをつくってくれないかなあ?私にはシステムが全然思いつかないけど、不倫への怒りが循環して、たとえば、シングルマザーを救う基金につながるとかだったら最高でないですか?

最後は話がそれましたが、まあとにかく、私がやっているオンラインサロンはこんなかんじですよ〜という話でした。

ちなみに、前にバルの中で、私はこんなコメントをしてます。

「空気感的には、リアルなバルを目指したいのよね。

スペインのバルって、喫茶店と定食屋と居酒屋とバーとファミレスを兼ねたような飲食システムなのです。

つまり、気軽に使えて、居心地よく、敷居は高すぎず、意識の高い人もそうでもない人も、それぞれの使い方ができる。客同士がつながるかどうかも自由。喋りまくる人も黙っている人もいる。声をかけられたくない人もいていい。あちこちで全くジャンルの違う会話が飛び交っている。多少のカオス。ただ、真剣に悩みを抱えて相談している人がカウンターにいるときだけは、皆で誠実に優しく対応できる。アドバイスをしない人も静かに見守る。そんなイメージが理想です」

なかなかにこの理想実現は難しく、ず~~~~っと試行錯誤中ですが、そんな思いでバルをやってます。

あと、もうひとつの理想としては、メンバーを縛らずに、好きなときに入会して、必要なくなったら辞めて、また興味が出たときはふらっと気軽に暖簾をくぐれるようなバルでありたい。なぜなら、私はリアルな飲食店でも客を束縛するような店が好きじゃないからです。

正直に言えば、サロン運営でこりゃ面倒くさいなあと思ったことは何度もあります。でも、始めたことを後悔したことは一回もなくて、今のところやってよかったということ気持ちが圧倒的に強いです。

それは、もしかしたら、私がうち宴会好きだからかもしれない。

うち宴会って面倒くさい部分も気を使う部分もあるけど、なんだかんだで楽しい。相手とのつながりも深まるし、そこから別の縁につながっていくこともある。すごく循環する。そして、外で開催するよりも、もっと密な関係になれる。気を使うことも必要だけど、気を使いすぎたり完璧を追求しすぎると逆に居心地が悪くなりそうなところも似てる気がします。

だから、私にとってのオンラインサロンは、うち宴会の、もっと社会的なバージョンという位置づけ
。だから、これは私の個人的意見だけど、サロンを楽しめる人は、うち宴会を楽しめる人じゃないかな?いい悪いというより、そういう人が向いているシステムなんじゃないかな?とも思っています。


これでうまく説明できたかなあ…。

まあそんなわけで、興味を持った方がいたら、バルのカウンターでお待ちしていまーす。詳細は以下のリンクより。男性ももちろん歓迎です。

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