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夫と映画と私。

夫の趣味は映画だ
月に2度程行っている
その日行く前にタイトルを聞くものの私は秒で忘れる。洋画のタイトルは覚えられない。

もちろんキャストは同じ顔に見える。イイハゲと悪いハゲの見分けもつかない。たまにイイハゲが裏切ったりするからさらに分からない。

ちゃんと判別できるのはハリーポッターくらいだ。それでも後半になってくると怪しい。双子の見分けは不可能だ。ハリーとハーマイオニーは分かる。ロンは変化しすぎて驚いた。

夫が映画に出かけている間は、私はその間アマプラでアニメやらなんやら聞きながら家事をする
早い話好きなジャンルが真反対なのだ。

結婚7年目にもなると夫婦はお互い自由な時間を過ごしたいものなのかもしれない

初デートは映画館だった
この前「初デートで観た映画覚えてる?」と聞くと
しばらく考えて「なんやっけ?」と言う
これは多分、老いだ 心配になる
記憶力が継続していない

一昨日の晩御飯も忘れるし何なら今日の昼食べたものも忘れている

「海街diaryだよ」と正解を教えると「そうやっけ?」とまだしっくりきてなかった
パンフレットも買ったしテレビ放送した時も一緒に観ている

「見分けがつかないんだよ」
「綾瀬はるかと長澤まさみの違いも怪しい」
絶句だった。

しかも普段忙しすぎて古い記憶はどんどん消えていっているようだ


私はアニメ映画が好きでコナンシリーズは小学生から社会人になっても毎年観ていた 

本当はアニメ映画を観たかったが、付き合いたての大人の女性として是枝裕和監督の『海街diary』を観たいと言ったのだった。

年の差も13歳ある、しっとりとした映画で少しでも大人に追いつきたかった。

「いいね、観に行こうか」
と2人で観た初めての思い出。
今思えば合わせてくれていたのだろう。
夫は普段、邦画は全く見ない。

映画を観た後で、「梅酒作りたくなった、次の季節に作ろかな〜、呑みます?」と聞くと
「僕、下戸なんだよ、一滴も飲めない」

「なんだか意外ですね。じゃぁ梅ジュースにしときます」

「あとしらすも食べに行きたいです」

「はい、行きましょう」

そんな感じの穏やかなお付き合い。


映画を観たあとでそれぞれ買いたいものがあり、一旦解散して買ってきたら再集合することにした
買い終わったら1階の大型の服屋に集合と言って離れた

終わったら連絡するでもいいが、お互いを気にせずゆっくり選んでもらいたいからこの方法を取ることが多い

買い物を済ませて集合場所に着いた
適当に服を見ていると綺麗な横側の人がいた
立ち方もメガネも姿勢もいい
お?と思い目の保養でもするかと横目で見る
見るだけなら浮気ではない

ん?よく見たら彼だった
気が付いた時、途端に恥ずかしくなる
ちょっと離れたら分からなくなり普段と違うメガネをかけてたらまた違った面が見えて好きになる。私は単純だった。
多分、私の方が好きになっていた。

「お待たせしました」と声をかけたら
「何も買わなかったんですか?」と聞かれて
「ちょっと予算が。気に入ったんですけど残念です、ボーナス入ったらまた買います」
「一緒に見に行きましょうか」

そう言ってまたお店に向かう
100%ウールの大判のストールだった
「ちょっと羽織ってみて下さい」

購入前なので遠慮がちに触らせてもらう
「どうですか?」

「とてもよく似合ってますね。少し早いですが僕からのクリスマスプレゼントにしてもいいですか?」
そう言ってレジに向かっていった

プレゼント包装してもらい車まで持っていってくれた。
送ってもらい帰り際に渡されて
「ありがとうございます、大事にします」
職場でも家でも冬場はずっと使っていた
もちろん今も使っている
時々クリーニングにも出している

そのストールも「これ覚えてる?」と聞くと「なんだっけ?」となる。私だけが覚えている思い出だ。


出会いは職場恋愛でありふれたものだった
はじめこそ部署が違ったものの異動があり彼の部署に私が配属された。仕事柄同じ会議に出席することも多くあった。

その職場に長く勤めている大先輩に彼のことを聞くと「女絡みの話聞いたことない」と皆、口を揃えて言っていた。あと「怒ってるところも見たことない」とも。

それなのに付き合ってる期間を含めた約10年で、彼が怒って黙って家から出て行くことが3回ほどあった。大体私が悪い。それなのに玄関にはチェーンをかけてインターホンは切っておく。
「開けてください」と言われて「話し合いもせず出て行ったことを謝ってくれないと嫌です」と答える。

新人の頃、職場で健康診断があった。
職員同士で採血がある、医療福祉職の私たちは採ってもらう側だ。

順番に採っていくが私の血管がどうしても見つからない。こすったり叩いたり温めたりしても全く出てこないのだ。

4回くらい刺したり引いたり針を横にしたりされて「もう健康なんで採血しなくていいです…」と言った。
担当してくれた人が、「ごめんねぇ、イケると思ったんだよぉ」「仕方ないアイツ呼ぼう」と呼び出されて来たのは、まだ付き合う前の彼だった。
思えばこの時から意識したのだと思う。

「どうしたんですか?」
「この子見えなくて4回刺しちゃった、変わって」
「分かりました」
「お手数かけてすみません」

「痛かったですよね、ごめんなさいね」
「一応、腕替えますね」と言って素早く駆血帯を巻かれる。
「手をグーパーしてください、そうそう上手」
「アルコールのかぶれは大丈夫ですか?」
「はい」
「痛みには弱い方ですか?怖くないですよ。僕こう見えて意外と上手なんです」

細くて白い長い指が採血出来そうな血管を見つけてくれた。何も見えないのに。うん、ここでいきますね。

「一瞬痛みますよ。気分悪くないですか?」
「大丈夫です」
「あ、針見れるタイプなんですね」と笑われた

無事に1回で終わった。
「ありがとうございました」
採血担当の看護師さんたちもお礼を言っていた。

「2回刺してダメなら呼んでください。あんまり刺すと可哀想なんで…。今日は割と落ち着いてますから気軽にどうぞ」そう言って足音も無く去って行った。

「あの人どんな高齢の人の細い血管でも取れるんだよ」あとで教えてもらった。

特技らしい。

結婚した後、私に持病が見つかり大学病院で毎月採血がしている。先生からの説明も難しいことが多いので毎月付き添ってくれている。

待ってる間に「どこ取れるかな?」と腕を見せると「ん〜コンディション悪いね。これは難しい。今日はめちゃくちゃ刺されると思うよ。少なくとも僕は担当したくない。」

その日は腕を変えたりさすったりして7回目で採血できた。

また夫と一緒に映画を見にいくなら息子が「映画に行きたい」と言った時になる。そう思ってる。

お互いに趣味も年齢も仕事も違うがなぜかくっついた私たち。

今は息子中心に生活が回っている。
ふと2人になった時には息子の話以外もすることがある。

不思議な縁で結婚して節目には映画があって、これからもそうなっていくと思う。

息子には出来ればコナンシリーズを見に行きたいと言って欲しいと思う。3人で並んで観たい。

#映画館の思い出

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無印良品のポチ菓子で書く気力を養っています。 お気に入りはブールドネージュです。