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「人生の引き算」をはじめる

新しく何かを始めようと思うと、だいたい足し算になってしまう。ダイエットのためにジムを契約したり、英語のために英会話レッスンに申し込んだり、その先には忙しい日々が待っている。特に都会は選択肢が多いから、ぼーっとしていると、どんどん足し算された人生になってしまう。

でも、これって結局、他人の欲求でしかない。本当に瘦せなくてはいけないのか? 本当に英語を話せなくてはいけないのか? 腹落ちしていないまま「なんとなく良さそうだから」と始めてしまう。そうして日々を慌ただしく過ごしているうちに、本当ならずっと優先させたいと思っていた「旧友に会う」「絵を描いてみる」「コンサートに行く」などの時間がなくなってしまう。

確かに痩せていれば格好良いし、英語が話せればモテるだろう。でも、それだけが人生じゃない。私個人の話をすると、着痩せして見える人が、プールで脱いだ時にお腹が出ていると「か、かわいい……」とときめいてしまう。逆に腹筋がバキバキな人は苦手だ。バッタの腹のようだし、一緒に食事をしていても、つまらなさそうだから。

英語をうまく話せる人は、近くに日本人がいても、好んで外国人を話し相手に選ぶ傾向がある。特に男性には、日本人の女性と話す時よりも、外国人と話す方が愛想がいい人が多い。これをやられると、薄ら寒い気持ちになり、かえって印象が悪くなる。

他にも、世間では良いとされている月イチの美容院通いも、私はどうかと思っている。男性が髪を短くしたり、髪を染めたり、それって本当に必要なんだろうか? 私はロン毛が好きだし、男性の白髪に、ものすごくグッときてしまう。セクシーだし、豊かな内面が体現されているように思えてしまう。

このように、人の価値観なんて様々だ。私のように、太っていたり、英語が話せなかったり、白髪の方が好きな人間もいる。世の中では、どうしても声が大きい人の発信が注目されてしまう。インターネットで目につくように、会社同士が札束で殴り合っている状態だから、自分が本当は何を求めているか分からなくなるのも、仕方ないと思う。

だから、今こそ足し算をやめて、引き算をはじめたい。ジムも英会話も、気の進まない飲み会も、全部やめてみる。休日の化粧や週末の自炊のような「ちょっと無理しているな」と思うような些細なことでもいい。4月が新しいことをはじめる月なら、5月はやめることをはじめる月だ。暇が怖い人も、大丈夫。人間は時間ができると、自然と意外と何をはじめる生き物だから。

貯金の目標をやめることも、私はいいと思っている。何歳までにいくら貯めなきゃいけないとか、そんなこと知ったこっちゃない。その時には、日本円の価値も変わっているし、自分の収入だって変わっている。家族構成だって変わっているかもしれない。月にいくらかNISAやiDeCoといった投資に回しておけば、あとは好きにパーッと使っていいと思う。

引き算をして、何もかもなくせばいいというものではない。ミニマリストが推奨されているけど、ずいぶんと味気ない人生だと思っている。「これは自分にとって必要だ」と思うものは、もちろん残すべきだ。私にとってそれはマッサージである。2日に1回のくらいのペースで行っている。毎月、家計簿を見ると、ショックを受けるくらいの金額を使っている。それでも自分が癒されていることで、子どもたちに優しくできるから、引き算の結果、残すことになった。今まで行っていたジムや語学学校のお金をそっちに充てているから良いや、と思うようにしている。

他人と話していても、足し算してやっていることについて語る時の顔より、引き算されて残されたものについて語る時の方が、生き生きとしているように見える。みんながそういったことを話す世の中になっていくといいなと思っている。マッサージ代の請求に、頭を悩ませながら。

最近行ったマッサージで、特に良かったのはここ。名古屋だし、週末は1日2組しか受け入れていないけれど、足を踏み入れた空間から、素敵な空間が広がっている。

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