パブコメ03

基本的に民間法制審議会家族法制部会(部会長:北村晴男弁護士)作成の試案を支持する前提のもと、以下において、法務省法制審議会家族法制部会の中間試案に対して意見を述べる。
それに先立ち、まずは自らの基本的な考え方と、それに至った背景として自身の経験事例を述べることする。

【意見の骨子と基本的な考え方】
・原則共同親権・共同監護(共同養育)とすべきである。
別居に際しては共同監護計画を策定し、策定されるまでの暫定措置としては、原則として夫婦が平等に分担することを定めるべきである。
・上記養育計画を不当に履行しない者は民事・刑事の両面から厳しく追及(即ち、親権資格を剥奪するとともに未成年者略取・誘拐罪に問う)するとともに、その手続きのハードルを可能な限り下げるべきである。
・諸々の判断基準を予め公正かつ詳細に明確化しておくことで、家庭裁判所がそれに則って整斉と執行できるようにし、その裁量余地を極力限定すべきである。これにより、家事司法全体の限りある人的リソースの保全に繋がるとともに、“各事例の個別具体性に照らした総合的判断”の名の下で行われるブラックボックス的な根拠不明の自由裁量、ひいては不当な性差別・人権侵害が横行する無法地帯と化している現状が是正される。
「子の最善の利益」は第三者がその場その場で主観的に判断すべきではなく、結論ができる限り均質になるようにすべきである。
・当然に、上記改正は、改正前に離婚・監護権指定等の法律行為をした者にも適用可能とすべきである。
・これ以上、国の司法に子らと別居親の人権を侵害する行為を容認し続けるべきではなく、 ましてやそれに拍車をかけるような法改正(例えば、上記の本質的問題を解決しないまま金銭債権の執行力のみを強化して連れ去りの動機を助長する等)は回避しなければならない。私とその子らと同じような思いをする不幸な親子が今後この国に発生しないようにするための立法上の手当を、この機会に確実に講じておく必要がある。
・なお、DV・虐待は刑事事件として取り締まりを強化するべき問題であり、それを防止しきれていない現状を単独親権制度によって補完しようとするのは筋違いである(寧ろ、後述する私自身の事例においては、現行制度によって子への虐待が助長されている)。

【意見の背景となる自身の事例】
私の配偶者(妻)は、子の妊娠中も中絶を望みつづけ、出産後も「自分は子供などいらなかった。欲しいと思った人間が自分で育てればよい」という発言と子らへの虐待を繰り返しており、毎週のように私やその親族に面倒を見させていた。そして、保育園や私・親族に預けている間に、既婚者である愛人と日常的に密会していた。
私は、この不貞行為の証拠をおさえたうえで、子供を身の安全を確保するため子らを連れて、冷静に話し合いをするために一旦別居を開始したが、配偶者は、自身の不貞行為を把握されていたことを知った直後、ただちに子らを連れ去った。また、子らの将来資金を蓄えていた共同口座からは勝手に全額が出金されていた。
その後、なんとか配偶者を説得して子らを取り戻したのち、当事者間で直接離婚協議を行った。が、配偶者は予てから離婚を望んでいたため、自ら真っ先に離婚を提案してきた(証拠収集の過程で、不貞相手との再婚を望んでいるようで、そうなれば私とはできるだけ関わりを持ちたくない、と自身の友人に打ち明けていたことは知っていた)。
私としては、親権は自分が持ちたいというのが唯一の希望条件であったが、それ以外のことについて左程拘りはなかった。
また、たとえ婚姻関係を解消し私が親権を獲得したとしても子供にとっては唯一の母親であるため、面会交流には最大限応じるつもりであったし、私が親権者として子のすべての面倒を見ることで虐待がなくなるのであれば、同居を再開してもよいと考えていた。
また、養育費も相場を下回る最低額でよいと考えており、配偶者も親権譲歩に合意していた。
ところが、相手方に弁護士が入った途端、配偶者は一転して親権を主張し始め、子の監護・引渡し請求を申し立てた。これを受け、協議による合意の余地は最早ないものと悟った私も同様に代理人を立て、離婚調停を申し立てた。
調停が開始するや、一方にしか認められない親権を巡り、互いの非難の応酬が瞬く間にエスカレートしていき、当初当事者間で協議していた間には存在していた「夫婦としての関係は終わっても、子供の唯一の父親・母親としてのパートナー関係は維持し、互いに協力していこう」という機運は跡形もなく消失した。
子の引渡し・監護権指定調停において、家庭裁判所調査官のとりまとめた調査報告書は「母性優先の原則」に従った結論ありきで、私の方が保育園の忘れ物が多かったことなど些細な材料を殊更に取り上げる一方で、「継続性の原則」や虐待の事実はまるで考慮せず、(私に親としての大きな問題はない、との前置きはあるものの)親権は配偶者に属すべきと結んだ。その後開催された期日において、「今この場で調停に合意しなければ、調査官調査の内容に従って審判を下す。審判になれば、おそらく面会交流は最低限となるだろう。もう閉所時間なので直ちに結論を出すように」と裁判官と配偶者代理人、さらに当方代理人の三者から急き立てられ、私自身も保育園の迎えの時間が迫っていた為熟慮の余裕もなく、月2回の面会と引き換えに、私のほうで監護していた子らを相手方に引き渡すことに合意した。
なお、裁判官も調査官も何故か全員女性で構成されていた。こうして、某月の末日、子供たちは、生まれ育った町や家を離れ、0歳から通っていた保育園も強制的に退園させられることとなり、数年間続いた父親との生活には終止符が打たれた。
配偶者は調停期間中、「婚姻費用の暫定払いさえすればいくらでも面会交流を実施する」と述べていたが、引渡しの翌月、配偶者は一切の面会交流に応じなかった。
また早速、婚姻費用の分担請求を裁判所に申し立てた。
代理人から諫言を受けたのか、そのさらに翌月から3ヶ月間は断続的に面会交流が行われたものの、その間も婚姻費用調停が自らの思うように進捗しない事への苛立ちから、事前予告なく一方的に面会の約束が破棄されることがあった。
また、子らは面会のたびに「ママに階段から落とされたんだ」「ママに首ぎゅー、ってされたの」等といって私に痛ましい傷跡を見せてきた。(写真・動画は撮影したものの、配偶者は子らに対し監護状況を私に話さないよう厳しい箝口令を敷いており、私がこの事実を調停の場で訴えれば、私に打ち明けた子らが報復を受けるのが目に見えているため、正面から主張する事もできずにいる) そして帰り際には毎回、「ママのおうちいきたくない」「もっといっぱいおうちにいたい」と言っていた。
さらにその後、配偶者(の代理人)は「過去分まで遡って婚姻費用の暫定払いをしない限り子供には会わせない」「配偶者は相手方との協議自体に強いストレスを感じており、凡そ話し合いの余地はない」等と主張し始めた。
私は当時、直近にかかった家族の手術代のため資金が不足しており、今は全額には応じられないが支払可能な最大額を順次払うと提案したが、「不貞行為の相手男性から受けた示談金があるなら全額支払える筈である」「こちらの要求する額全額を暫定払いしなければ子供に会わせることはない」と述べた。
その後、歳月の経過とともに資金が再び蓄えられ、要求額全額を支払うことができるようになったが、それまでの経緯から、無条件で配偶者の要求に従ったところで、現行制度のもとで面会が履行され続ける事は到底望めないため、現行の法制度で私が持ち合わせているほぼ唯一のカードともいえる婚姻費用の暫定払いを有効活用し、子らのためにも父親とその親族の愛情を受ける機会を担保しておきたいとの思いから、間接強制規定だけは結ばせてほしいと要請したが、「そちらからの条件の提示は一切認めない。無条件でこちらの条件を飲まなければ面会はしない」との回答であった。
家庭裁判所には、調書の定め通りに面会交流を実施せよ、という至極当然の事を直ちに配偶者に指示して欲しいと考え、面会交流の申立てをしようとしたが、それに先立ち先ずは履行勧告の手続を踏まねばならないとの事であった。
当初、面会履行勧告も面会交流申立も代理人に委任しようとしたが、面会が一度でも達成されれば高額な報酬金を支払うという契約条件だったため、結局代理人を通さず、専門知識がない中なんとか独力で調べながら手続を実施した。
ようやく一定期間をかけて面会履行勧告と面会交流の審判申立てを行ったものの、結局、履行勧告には何ら実効性がないため当然配偶者からは無視され、審判申立ては裁判官の権限で付調停とされた。
聞くところでは、面会交流調停で審判が下されるまでに1年以上を要する事例もあるという。
また、間接強制の申立も行いたかったが、「最高裁判例に照らすと債務名義が確定的ではない(日程と面会時間は決まっているが、時刻が決まっていない)」として、弁護士には受任頂けなかった。
子の引渡し条件で面会条件を決めた際、裁判官と当方代理人からは「特に時刻を定めず柔軟に調整できるようにしておいた方が、きっとご自身のためにもなる」と言われ、それに応じたが、まさかこのような形で面会交流の障害になるとは、法律知識に明るくない私には到底予期することができなかった。
一方で、僅かばかり実施された面会においても、配偶者は「12時開始でなければ面会に応じるつもりはない」と言っていたため、結果として、時刻を特定しなかったことによる私のとってのメリットも一切なかった。
それでも、望み薄ながら、間接強制についてもいずれ独力で申立てを行いたいと考えているが、申立手続には(その家庭裁判所で調停合意し、調書謄本を受領しているにもかかわらず)調書正本の送達と送達の証明書が必要であるとされ、その正本送達に1ヶ月以上かかるなど、家庭裁判所の協力も捗々しくない状況である。
こうした状況の中、私が感染症による体調不良の為已む無く欠席した期日において、離婚調停・婚姻費用調停は不成立との決定が下され、婚姻費用調停のみ審判へと移行した。
配偶者が「婚姻費用を自主的に支払わなければ子供には会わせない」と主張し続ける中で、婚姻費用調停不成立の判断が下されたということは即ち、仮に将来的に面会交流が実現するとすれば、私が無条件で暫定払いに応諾するケースしか想定され得ないが、その可能性はないとの整理が為された、ということである。
従って論理上、婚姻費用調停が不成立となったことは、同時に面会交流調停も不成立となることを意味するはずであるが、何故か面会交流調停については不成立とはならず、次回期日は2ヶ月後に設定された(子の引渡しを決定した期日は前回期日の2週間後であった)。
また、「そもそも調書で定められた面会交流は無条件に実施されるべきものであるため、当初申請通り審判に移行して欲しい」と家庭裁判所に書面で上申したが、結局反応すらなかった。
このように、家庭裁判所は調書で定めた事項を履行させる措置にはほとんど動かない一方、母親側に親権・監護権やそれに紐づく金銭債権を獲得させることには、矢鱈と機動性を発揮していた。
たとえその母親が、子供を何処かしらに預けて自らは不貞行為に耽り、家庭を崩壊させておきながら謝罪の言葉もなく、一銭の慰謝料も支払おうとはせず、悪法の下で奪い取った子らの親権を利用し、婚姻費用という形で不貞相手が私に支払った示談金を自分に還流させようとし、更にその子らを日常的に虐待する――そのような母親であっても、である。
このような機関が、一度も目にしたこともない子供の「最善の利益」なるものを好き勝手に代弁し、多くの無実の子供とその片親の人権を蹂躙している、というのが私の目に映った本邦の司法現場の実態であり、それは他の様々な経験者の話を聞くところ、何方も似た境遇のようである。
そして結局、配偶者が「婚姻費用の暫定払いをしない限り子供には会わせない」と主張し始めてから現在まで、子らとは手紙などの間接的なものを含め、一切の交流は実現できていない。
私は、配偶者に夫婦として裏切られただけでなく、子を人質にとして金銭まで強請られ、さらに国の司法制度・司法機関までもがそのような配偶者に加担するこの状況に望みを絶たれ、毎日、自死の手段を考える日々が続いている。
当然、このような状態では仕事などまともに遂行する事はできず、産業医からはうつ病の診断を下され、現在、勤務先と休職の準備をしている所である。
今般の法改正によって、いつかまた子と会える日が来るかもしれないという一縷の望みと、その時に自分が元気にしていなければ子が哀しむという自戒によって、辛うじて生を繋ぎ止めている。
しかし、今般の法改正によってもこのような現状が改善しない、あるいは悪化することが確定すれば、後生子らと会う事もないだろう(仮に再会できたとしても、その頃には一定の年齢に達した後で、私との記憶はほとんど残っていない、或いは配偶者に洗脳され私に対する恨みを胸中に抱えた、他人行儀の子供たちと会うことになるだろう)という事を考え、おそらくいずれは自死を選択する可能性が高いと考えている。  

【中間試案における個別の案・考え方に対する意見】

(前注1)について
・「親権」という用語の見直しをするか否かはさておき、親としての権利義務の内容がどのようなものであるかという実質的な規律を整理する必要がある点について異論はない。
・「面会交流」という従来の概念は、共同親権
・共同監護制度においてはなくなるものである。

(前注2)について
・DV・虐待事案を考慮すること自体に異論はないが、そのようなケースは少数派であり、その救済の為に多数の親子が犠牲になるようなことは決してあってはならない。
DV・虐待の被害者救済は別の法令・措置によって確りと保全すべきである。
・DV・虐待の立証が難しいことを理由に、退避手段確保のための単独親権制度維持や子の連れ去り容認を主張する意見もあるが、主従が倒錯している。寧ろ、同居親またはその新たなパートナー(いわゆる継父・継母等)による虐待事例は少なくなく、共同親権・共同監護制度が導入されれば、そのような虐待行為が他方親の目によって牽制されるとともに、虐待が実際に発生してしまった場合においても、子が安心して退避できる先を確保することにつながる。
・一方で、「DV・虐待を主張した者勝ち(経済的利得も獲得可能)」という状況、さらにそうした法制度の欠陥を悪用し、DV・虐待を捏造(それを助言する弁護士も一部存在する)する者が続出している状況は、ただちに是正すべきであるが、それには、DV・虐待に該当する基準をある程度客観的に定義すべきである。そして、存在しないことの証明(「悪魔の証明」)はほぼ不可能である以上、事実の立証責任を被害者側(児童虐待の場合は加害者以外の配偶者)に求めるべきである。
・抑止的な観点からも、虐待加害者の親権は制限すべきであり、現在でも、児童虐待があった場合の親権停止
・喪失が一応定められてはいるが、【自身の事例】にて上述した通り、有効に機能していない。この点、改正後は実効性を具備した規律にすべきである。
・なお、「配偶者からの暴力」(夫婦間の問題)と「父母による虐待」(親子間の問題)はある程度区別したうえで、規律を検討するべきである。

第1 親子関係に関する基本的な規律の整理
1 子の最善の利益の確保等 本文(2)について、「父母が履行すべき義務」のなかに、「両方の実親とのつながりを維持できる環境を確保すること」を明確に含めるべきである。

第2 父母の離婚後等の親権者に関する規律の見直し
1 離婚の場合において父母双方を親権者とすることの可否
・【甲案】を支持する。
(注)については、改正前に離婚した父母にも適用すべきである。
・父母の一方のみを親権者とすることは、父母間協議の過程で徒に夫婦間の対立を先鋭化させ、子の利益を損なうことにつながる。法制審議会においても、家庭裁判所の人的リソースが限られていることを理由に、離婚後に父母双方が親権を行使することに反対の意見を挙げる委員がいたが、親権者・監護者を決める為に夫婦間に不必要に高葛藤状態を作り出し、何か月もかけて結論ありきの形式的な調査を行うことで、親子分断に勤しむ時間と労力があるのであれば、先ずはそれを削減した方が良い。
2 親権者選択の要件 【甲①案】を支持する。但し、父母の一方のみを親権者とする場合については、父母間の協議のみで認めるべきではなく、選択の要件や基準を定めたうえで、最終的には裁判所で判断あるいは許可を行うべきである。裁判所を介さず父母間協議のみで一方のみを親権者に指定することを可能にするのは、父母間の実力行使につながる虞があるため、避けるべきである。
・【甲②案】は本諮問の背景ともなっている国内外からの批判に耐えうるものではなく、【甲③案】は、上述した【自身の事例】を踏まえ、家庭裁判所に“個別具体的”な判断をさせるべきではないと考える。

3 離婚後の父母双方が親権を有する場合の親権の行使に関する規律
⑴監護者の定めの要否
・【B案】を支持する。
但し、親権に監護権を包摂させ、「監護者」という概念自体を廃止すべきである。この場合、父母双方の合意または一定の要件に基づいた裁判所の判断によって、一方の親のみが監護するとなった場合にのみ、当該一方の親がいわゆる従来の「監護者」に相当する存在となるが、かといって他方の親は「監護権」まで喪失することにはならない(逆に、監護権を喪失している場合は親権も喪失している事になる)。
現実的には、当該他方の親が子の監護を一切希望しない代わりに、相場を大幅に超える多額の生活費を当該一方の親に対して負担するという形態について、子育てに専念したい当該一方の親も納得している、といったような、父母双方の利害が一致しているケースが想定される。
・(注1)は①の考え方を支持する。また、「主たる監護者」なる概念は定める必要がない。監護の分担については、対等な父母間の協議・合意によって、具体的な監護計画を策定すべきである。争いがあれば、原則として父母間で均等に分担することとする。
主たる監護者は、この監護計画策定の結果として(過半を分担する親に)定まるものであり、敢えて「主たる監護者」なる概念や規律を設けることで法令を複雑化したり、その立場を巡った争いを惹起すべきではない。「監護者」や「主たる監護者」という概念がなければ、「父母の双方が親権者となった場合の『監護者』や『主たる監護者』の権利義務の内容」や、「父母の一方が親権者となって他の一方が「監護者」と定められた場合との異同」といった整理の必要もなくなる。
・もし仮に「監護者」の概念を継続または「主たる監護者」を新設するのであれば、性差別・性的分業を促進し、養育費・婚姻費用を目的とした連れ去りで悪用されることも多い「母性優先の原則」と「継続性の原則」は、明確な根拠にも乏しいため廃止すべきである。

⑵監護者が指定されている場合の親権行使
・アについては、(1)で上述した通り、監護権は親権に内包され「監護者」概念を廃止すべきという意見ながら、ここでは便宜上、共同監護計画において監護時間を100%分担する者を「監護者」と看做す。その前提に基づくならば、仮に父母間の合意によって一方の親が100%単独で監護する計画を策定した(「監護者」になった)としても、他方の親も身上監護に関する権利義務を有し続けるものと考える。
・(注2)の各考え方について、特に異論はない。
(注3)については、イで【β案】を支持している訳ではないが、「親権者の一方が子の最善の利益に反する行為をすることを他方の親権者が差し止めるための特別な制度を新たな設けるべきであるとの考え方」には賛同する。
・イでは【γ案】を支持する。
(注4)の「親権の行使に関する重要な事項について、父母間に協議が調わないとき等には、家庭裁判所が、父又は母の請求によって、当該事項についての親権の行使内容を定めるものとする考え方」も特に異論はない。

(3)監護者の定めがない場合の親権行使
・アについては、父母が共同して親権を行うのを原則とすることに異論は無いが、「父母の一方が親権を行うことができないとき」というのが片親による不当な実力行使の建前として利用されないよう、具体的に状況を特定しておくことが必要である。
・(注5)に特段異論はない。
・イについては、「父母間に協議が調わないとき又は協議をすることができないとき」には、重要な事項かどうかに関わらず、当該事項について家庭裁判所は「父母の一方に決定を委ねる」か「自らそれを定める」規律を設けるべきである。
・(注6)は、親権の中に身上監護に係る事項が含まれる点において、(注4)とやや事情が異なる。
子の財産管理のみに執着する親というのは極めて例外的であり、多くの親にとって身上監護に係る事項が関心の中心を占める。さらに、身上監護に係る事項には、双方の価値観・信条に関わる問題や、定性的で解が一意に定まらない問題が多く含まれるため、父母間で意見の対立・衝突が起こる可能性が財産管理に係る事項よりも遥かに高いと云える。そうした中、何を以て「親権の行使に関する重要な事項」とするかを客観的に規定することは極めて困難であり、それぞれの父母間で、どの事項について父母どちらに拘りがあるというパターンも百者百様であろうから、予め時間的な余裕をもって(別居・離婚の時点で)父母間の協議で個別の事項ごとに決定者を定めておくべきであると基本的には考える。
・「時間的な余裕をもって」と述べたのは、たとえ「重要な事項」であったとしても、時限性の高い事項は、一方親が単独で決定せざるを得ないことも多いからである。そして、たとえその一方親の決定が実力行使で強引に実行された場合でも、原状に戻すことが不可能であったり、子の利益に反してしまうために、既成事実化することが往々にしてあり得る。
・「親権の行使に関する重要な事項について、父母間に協議が調わないとき等には、家庭裁判所が親権の行使内容を定めるものとする考え方」については、仮に家庭裁判所がバランサーとして適切に機能するならば、その問題が定量的・直線的で、父母ともに極端な意見を持っている場合などにおいては、「家庭裁判所が親権の行使内容を定める」ことが子の最善の利益となる可能性もあり得る(たとえば、中学生の子の月の小遣いを父親は5万円とすべきと考え、母親は500円とすべきと考えているケースで、家庭裁判所が5,000円という判断を下すことも可能、など)が、最終的にどちらの親の意向も実現せず第三者によって決定されるとなれば、そもそも「親権」の意義が不透明になる虞もある。

⑷ 子の居所指定又は変更に関する親権者の関与
・子の居所はほぼ全ての親にとって最も重要な関心事であり、これについては、原則として父母双方に対し平等に認めるべきである。
・まだ共同監護計画が策定できていない段階で監護時間の配分を定めるにおいては、【Y案】【γ案】②のアプローチとなる。
父母間で協議が調わず家庭裁判所が定める場合は、必ず均等(50:50)またはそれに近い形(たとえば、父親が父:母=30: 70を主張し母親が父:母=20:80を主張するなら、30:70の方が採用される)になるよう決定する。
・すでに共同監護計画を策定している場合において、一方の親が監護すると予め決められている期間・時間における当該一方の親を「監護者」と定義するならば、その期間・時間においては監護者(当該一方の親)が期間単独で居所指定権を有することとなる。その意味においては、【X案】のような規律だとも云える。

4 離婚後の父母の一方を親権者と定め、他方を監護者と定めた場合の規律 ・監護権は親権に内包されるべきとの前提のもと、本規律は不要と考える。

5 認知の場合の規律
・【甲案】を支持する。
父の認知の時点で父母双方が親権を持つ規律とし、婚姻関係がある上記2及び3と同様の規律を設ければよい(敢えて異なる規律を設ける意義が見当たらない)。

第3 父母の離婚後の子の監護に関する事項の定め等に関する規律の見直し
1 離婚時の情報提供に関する規律
・【甲案】を支持する。
【父母の双方】が離婚後の子の養育に関する講座を受講したことを離婚の要件とすると、講座受講協力と引き換えに離婚を急ぐ相手から有利な条件を引き出そうとするケースも考え得る。
そもそもこれは子の養育に関する講座であることから、離婚という夫婦間問題の要件にすべきではなく、講座を受講しない親には親権(監護権を含む)資格を認めない、といったアプローチが妥当であると思料する。
・また、協議離婚か裁判離婚かに関わらず、夫婦関係もしくは家庭生活を解消する際には監護計画の作成を義務付けるべきであり、この監護計画が真に子の利益に適った内容となることを担保するために、講座の受講を義務付けるべきである。

2 父母の協議離婚の際の定め
⑴子の監護について必要な事項の定めの促進
・【甲②案】に近い考えだが、「親子交流(面会交流)」という概念はそもそも単独親権・単独監護を前提にしたものなので、これを「共同監護計画」と置き換える。
すなわち、共同監護計画の策定を離婚(協議か裁判かを問わない)の要件とする立場である。
・共同監護計画の策定においては、父母の監護時間の分担は原則平等としつつも、父母の収入差のために費用負担割合に差が生じる場合、費用負担割合の大きい方の親が希望するならば、その差の程度に応じて監護分担時間を減じることができるような規律を設けるのがよい(但し、費用分担にかかわらず監護時間は平等とするというのがあくまでも原則)。
監護時間が平等なら費用分担も平等とすべき、との意見も予想されるが、その場合一方の親の収入が少ない又は存在しない場合には子が貧困に陥ることになる。
・一方で、現行の養育費算定表も算定根拠が不明確であり、養育費による破綻者も一定数発生しているなど支払継続のフィージビリティに疑念が持たれることから、その算定根拠を示すとともに、収入変動時には機動的に費用分担を調整できる仕組みや、給与所得者と自営業者の取扱い格差を是正する措置等を含め、費用分担の枠組み自体を再考すべきである。
・監護計画の作成にあたり父母の協議が整わない場合も、原則として上記規律に即して半自動的に決定すべきであるが、特別に考慮を要する事情がある場合は、家庭裁判所が予め定められた基準や方針に沿って決定する。
・「父母が協議上の離婚をするときは、父母が協議をすることができない事情がある旨を申述したなどの一定の例外的な事情がない限り、」との箇所は、冒頭で「協議上の離婚をするとき」といいつつ直後に「協議をすることができない」と述べており、趣旨が不明。
・【乙案】は「子の監護について必要な事項の定めをすることを父母の協議上の離婚の要件としていない」ことで様々なトラブルが生じている現状を放置するものであり、「促進する」のみでは不十分。
・(注1)については、子の監護に要する費用の分担をしない旨の定めは、当事者間で合意があるなら有効としてよいと考える。また、「協議離婚をするために取り決める必要がある事項の範囲」については、(1)「監護時間および監護費用の分担の全部とする考え方」を支持する。一度決定しても当事者間の協議で柔軟に変更すればよく、一部のみしか定めないことは将来的なトラブルのリスクにつながる。
・(注2)については、「父母の真意に基づく定めがされているか、定めの内容が子の最善の利益に反するものでないか(できる限り子の意見又は心情を把握するよう努めた上で、子の意見又は心情に配慮されているかを含む。)について確認するものとするとの考え方」には同意するが、確認の方法や公平性に留意すべきである。また、子の監護に要する費用の分担に限らず、監護時間についても債務名義として法的効力を持つようにするため、共同監護計画全体について家庭裁判所の許可を得ることを離婚の要件にすべきである。
・(注3)は【乙案】を前提としたものであり、議論の対象としない。
⑵養育費に関する定めの実効性向上 ・共同親権・共同監護であれば、監護費用は基本的にそれぞれの親が自ら負担すればよいので、養育費徴収の必要性がかなり低減されると思われる。それにより、子の貧困リスクや、養育費の徴収業者に子供のための費用をピンハネされる被害も軽減される。
・養育費算定表は、その算定根拠を明確にするとともに、よりサステナブルな金額設定に見直すべきである。
・少なくとも、他方親に有責行為やDV等がない中で、純粋に自らの希望で別居・離婚をした一方親は、養育費・婚姻費用を請求できないようにすべきである。自らは夫婦の同居義務に反しながら、生計扶助だけ相手に要求できるのはあまりにも不合理である。
・寧ろ、アの「債務名義を裁判手続によらずに容易に作成することができる新たな仕組み」や、イの「債務者の総財産についての一般先取特権」は、“他方の親に子を会わせない親”への間接強制に対して導入すべきである。

⑶法定養育費制度の新設
・概ね反対である。
仮に法定養育費制度を新設するならば、共同親権・共同監護制度の導入が絶対不可欠であり、また適用が認められる要件・期間・金額はきわめて限定的な範囲に留めるべきと考える。
・「補足説明」で想定されているような、「父母の離婚後に、その一方が親権者と定められて子と同居してその養育をしているが、当該一方(同居親)の収入が乏しく、他の一方には十分な収入があるような場面」はきわめて一般的なケースであり、現行法のもとでこの範囲に法定養育費を認めようものなら、収入の少ない親が子供を連れて別居を開始する動機を強く誘発し、本邦の家族制度の崩壊を招くことが容易に想定されるため、断固反対する。
・寧ろ優先すべきなのは、緩やかな要件の下で簡易な手続きにより、“他方の親に子を会わせない親”への間接強制請求が行えるようにすることである。
・(注4)については、養育費の権利行使主体は子とすべきである。そのうえで、本来子供のためである筈の資金を同居親が自らの遊興のために費消してしまう事態を防ぐ為には、共同親権制度のもと、同居親が不適切な用途に費消しようとした際に、別居親が自らの親権行使によってそれを差し止めることができるようにすべきである。養育費の負担者は、自らの負担した費用が真に子の利益となる用途に使用されているかをモニタリング、コントロールできて然るべきであり、それが養育費・婚姻費用を目当てとした離婚・別居の抑止にも繋がる筈である。

3 離婚等以外の場面における監護者等の定め
・第2で上述したとおり、「監護者」の概念・指定制度自体を廃止すべきである。
・また、別居したとしても父母が子の養育について権利義務を負うことを継続するためにも、共同監護計画を作成しなければいけない規律を設けるべきである。それが作成されるまでは、暫定的に夫婦間で監護を均等に分担することとする。
・(注1)については、自らが望んで一方的に別居を開始した場合や有責行為を行った場合、また離婚準備期間に入った後においては、婚姻費用の請求権はないことを明確にすべきである。
・子の連れ去り(実子誘拐)や不法な子の引き渡し拒否については、刑法にて他の誘拐事件と同様の適正な対処ができるような規律を設けるべきである。

4 家庭裁判所が定める場合の考慮要素
・(1)については、上述したとおり、「監護者」という概念自体を廃止すべきである。
・(2)は、監護分担(現行制度でいう「親子交流」)は、父母が平等な養育機会を得ることを基本とすべきである。
なお、仮に親権制限がなされた親であったとしても、子の利益を害するとする重大な事情が認められない限り、直接の接触が可能な監護時間(現行制度でいう「直接交流」)を保障すべきである。
・(注1)については、「子の生活及び監護の状況に関する要素については、父母の一方が他の一方に無断で子を連れて別居した場面においては、このような行為が「不当な連れ去り」であるとして、当該別居から現在までの状況を考慮すべきではないとする考え方」を支持する。
「そのような別居は「DVや虐待からの避難」である」と断定する根拠は一切なく、客観的な証拠を以て真に子への虐待ありと判断された場合のみ別居期間の状況も考慮要素に含めるとすべきである。
・(注2)については、親同士の関係は考慮すべきでないが、仮に考慮するとするなら、高葛藤であればあるほど交流(監護分担)時間は均等に設定すべきである。
・(注3)の考え方に反対する。寧ろ明確化すべきは、親子交流を制限する旨の定めをする際の判断基準である。

第4 親以外の第三者による子の監護及び交流に関する規律の新設
1 第三者による子の監護
・第2にて上述したとおり、「監護者」という概念自体を廃止すべきであり、親以外の第三者にも適用する必要は無い。
・ただし、祖父母や、別居後に父母のパートナー・再婚相手といった親権を有さない親以外の第三者と子が共に暮らすことはよくあり、法的権限を与えないと不都合があるケースも考え得るため、第三者に対しても限定的な法的権限を与えることのできる規律は設けてよい。

2 親以外の第三者と子との交流
・⑴については、子はさまざまな人間関係の中で成長していくものであるから、特段制限すべき事情がない限り、親以外の第三者が子との交流を認める規律を設けるべきである。
・⑵については、⑴の協議が整わない場合は家庭裁判所が決定せざるを得ないと考える。

第5 子の監護に関する事項
1 相手方の住所の調査に関する規律 ・緊急避難に当たらない子の連れ去り(配偶者の同意無き子の居所変更)を行った場合には親権を喪失する、刑事罰を科す等の規律を設けたうえで、相手方の住所の調査に関する規律を設けるべきである。
逆に、連れ去りに対する規律がない現状が維持されるのであれば、住所調査に関する規律のみ設けるべきではない。
・子の連れ去り事案では、住民票住所を変更せず転居し、居所を隠蔽する行為が横行しているため、当該父母及び子が従前同居していた地を管轄する家庭裁判所においても審判又は調停の申立てをすることができるようにすべきである。
・一方で、住所調査の必要性を可能な限り抑えるため、合意による別居の手続きを保障する手続きも規律した方がよい。

2 収入に関する情報の開示義務 ・収入に関する情報開示の義務化の前に、養育費、婚姻費用等といった債務名義の正当性・公平性を精査すべきである。
・(注1)については、DVからの退避(但し、“DVを主張した者勝ち”という現在の実態が是正される前提)等已むを得ない理由なく、単に自らの希望で別居を開始した者に対して、婚姻費用(子の生活費に相当する部分も含む)を認めるべきではない。また、離婚準備段階に入った場合も認めるべきではない。

3 親子交流に関する裁判手続の見直し
⑴調停成立前や審判の前の段階の手続
・アの考え方を支持する。
親子関係に何ら問題の無いのであれば、疎外された親の請求により、家庭裁判所は速やかに平等な監護時間を確保する命令を出すといった暫定的措置に関する規律を設けるべきである。
・イについては、家庭裁判所の人的リソース確保の観点からも、調査官による当該交流の状況観察は、特別な懸念がある場合に【必要に応じて】実施すればよいと考える。
上記【自身の事例】のように、同居親が正当な理由なく面会交流を拒否していた場合は、試行的面会交流と称して行われる家庭裁判所調査官によるマジックミラー越しの観察は何ら必要性がなく、禁止すべきである。
・また、家庭裁判所の裁判官・調査官には、子が父母双方から平等な養育を得る機会を維持・確保する責務を負わせる規律を設けるべきである。
・(注1)は、現行規律の維持に反対する。また、当事者間の協議が難しいケースは少なくない為、一定の強制力を有する命令を家庭裁判所は出すべきである。
・(注2)は、「子の最善の利益を考慮しなければならないとの考え方」自体に異論はないが、リソース確保の観点からも、「子の最善の利益」の判断基準は予めできる限り定めておくことで、家庭裁判所の裁量余地は限定すべきである。
・(注3)は、イで上述した通り、調査官が関与する場合を限定すべきである。
(2)成立した調停又は審判の実現に関する手続等
・親子交流に関する調停や審判等の実効性を向上させる方策(執行手続に関する方策を含む。)は、直ちに講ずるべきである。裁判所での合意の遵守という至極当然のことを、きちんと規律で担保すべきである。
・具体的には、調停・審判の際に強制に関する規定も定めておくことで、成立した調停・審判の内容を不当に履行しない場合、直ちに家庭裁判所が強い強制力(直接強制や親権資格剥奪など)を伴った命令を下せるようにすべきである。
・そのうえで、履行勧告や面会交流調停の制度は廃止すべきである。
上記【自身の事例】の通り、現状、面会交流の履行勧告は任意の履行を促すのみに留まり、無意味であるどころか、家庭裁判所の人的資源を費やしているとともに、一度履行勧告を行わなければ面会交流調停や間接強制申立てには移行できない事となっている為に、実態として履行勧告制度が速やかな親子交流実現を阻むための障害となっている。また面会交流調停に至っては、審判が下されるまで1年程度要することもあるなど、親子間の精神的つながりを分断するに十分な時間稼ぎの手段となっている。
・現行制度では唯一の強制手段である間接強制も、申立要件がそもそも厳しいうえに、仮に裁判所で認められたとしても一般的な相場金額は低く、確実な履行を担保するほどの実効性はない(多少の強制金を払ってでも子を会わせない、という選択が現実的に成り立つ)。
・その一方で、養育費・婚姻費用については、調停・審判自体が債務名義となり、直ちに差押え可能となるなど、執行力のバランスが一切吊り合っていないことが、親子断絶と養育費不払いの問題を不必要に助長している現実がある。
・上記で提案したような実効性ある措置が講じられなければ、本諮問の背景ともなっている国家による親子分断への国際的批判はますます強まるばかりであろう。

4 養育費、婚姻費用の分担及び扶養義務に係る金銭債権についての民事執行に係る規律
・原則共同養育・共同監護が実現されない限り、あるいは、親子交流と金銭債権との間で執行力のバランスを著しく欠いている現状が改善されない限り、これ以上金銭債権の執行力を強化したり、手続を緩和すべきではない。
・仮に現行の“連れ去り得”システムが継続されるならば、金銭債権のみ執行力を強化することは、連れ去り・面会交流拒否、即ち子と別居親の人権を侵害する行為をより一層誘引するだけである。

5 家庭裁判所の手続に関するその他の規律の見直し
・(1)は、どのような問題意識のもとで記載されているのかが不明。「補足説明」には、「現行家事事件手続法においては、濫用的な申立てがされた場合に対応するための規律が既に整備されているところであるが、試案第1から第8までの規律の見直しをすることで、仮にこのような既存の仕組みのみでは対応することができなくなるのであれば、別途、新たな仕組みを検討する必要があるとの指摘がある」とあるが、具体的にどのような事態を懸念しているのか、依然として判然としない。
・一先ず現行法の下では、同居親による一方的な面会交流時間の短縮・中止要請や、根拠なきDV・虐待の濫用的主張は、却下するべきと考える。
・(2)自体に特に異論はないが、優先すべきは、「子への暴力や虐待が疑われる場合」の判断基準を予めできる限り規律しておくことで、現在の「(たとえ事実無根であっても)DV被害を訴えたもの勝ち」の状況を是正することである。
・また、「配偶者からの暴力」と「父母による虐待」はある程度区別して扱うべきである。配偶者間暴力(その被害が捏造される事例も少なくない)の加害者と子の関係はいたって良好で、子が加害者との関係継続を望む場合でも、両者が混同されることによって子が片親に会えなくなる懸念があり、子の利益に反するためである。

第6 養子制度に関する規律の見直し
1 成立要件としての家庭裁判所の許可の要否 ・児童の権利条約で「児童の養子縁組が権限のある当局によってのみ認められることを確保する」と定められている以上、【甲案③】の選択肢しか取り得ない。
また、実父母の承諾や、子が自分で意志決定できるような一定の年齢に達していることも要件とすべきである。
・ただし、実父母が子の養育について権利義務を有する共同親権・共同監護を今後の基本的な在り方とするならば、未成年普通養子縁組という制度自体がこれに馴染まない。

第7 財産分与制度に関する規律の見直し
1 財産分与に関する規律の見直し ・本諮問は、離婚後の子の養育のあり方を対象としている中、具体的な規律案もなく、夫婦間の財産分与制度に関する事項を答申に含めるべきではない。
・ただし、子の利益の観点からは、父母が同居中に住んでいた家に、子が住み続けることができるといった規律を設けることは検討すべきである。
・仮に財産分与の目的や法的性質を民法上明確に規定するのであれば、「清算的要素」のみを認め、合理的説明の困難な「扶養的要素」「損害賠償(慰謝料)の要素」は除外すべきである。
「補足説明」に、「財産分与の一要素である離婚後の扶養の要素が軽視されがちであり、そのために財産分与が少額にとどまるなどの弊害が生じている」とあるが、「既に親族関係にない元配偶者に対する扶養義務を観念することが難しい」という見解がすべてである。
離婚後に自活できないのであれば、単に国の生活保護を受けるか、離婚を諦めればよい(当然、離婚を請求されるような有責行為は慎しむ必要がある)。

2 財産分与の期間制限に関する規律の見直し
・本諮問は、離婚後の子の養育のあり方を対象としている中、夫婦間の財産分与制度に関する事項を答申に含めるべきではない。
・離婚後の法律関係は早期確定が必要であるにもかかわらず、財産分与の期間制限を延長すべき理由、および【3年】【5年】という期間の妥当性の検討が不十分である。
・「補足説明」には、「離婚前後の様々な事情によって2年以内に財産分与を請求することができなかった場合に、分与が請求できないことから、結果的に経済的に困窮するに至っている者がいる」とあるが、「様々な事情」について具体的に説明すべきである。
2年という相応の期間が与えられていながら、その間に財産分与を請求する機会が全くないケースというのはどのようなものか、また期間制限延長以外の救済措置がないのかが不明である。権利の上に胡坐をかく者が救済されないのはどの法律でも同じことであり、徒に離婚後の法律関係確定を間延びさせるべきではない。

3 財産に関する情報の開示義務に関する規律 仮に改正後も現行の”連れ去り得”の状態が変わらないとすれば、民事執行力のみ強化しても、婚姻費用・養育費獲得を目的とした制度悪用をますます助長するだけである。したがって、子の養育の新たな規律の全容が定まっていない状況で、これを答申に含めるべきでない。

第8 その他
・(注1)については、民法第754条は削除すべきである。「補足説明」にも記載の通り、司法の場において同条が適用される場面は実質的にないといえ、必要のない条文である。
・【自身の事例】でも、子の監護分担に係る別居時の合意は配偶者から反故にされているが、そうした事態を防ぐためにも、特に婚姻関係が破綻している場合には、有効な契約関係が必要であると考える。
・(注2)については、その改正後の規律が改正前に一定の身分行為等をした者にも、改正後の規律を適用することが必須である。そうでなければ、これまで現行法の瑕疵によって不当に分断されてきた多くの親子が救済されずに居続ける事になる。

以上

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