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渡り鳥ペリカンの神秘

少し前に夫とハイキングに行ってきた。行き帰り1時間強の散歩程度のハイキングコースだが、太平洋が一望できる景勝地で何度訪れても感動がある。

そこでペリカンが群れで飛んでいるところを見て、ふと思ったことがある。ペリカンはこの辺ではよく見る鳥なのでなんら珍しくはないが、あのサイズの鳥が群れを成して飛んでいる姿は迫力があり、何度見ても目で追ってしまう。

この辺りにいるアメリカシロペリカンは渡り鳥である。
冬はこの辺り、つまりカリフォルニア州やメキシコで過ごすが、夏になると米国北部やカナダに渡って繁殖するという。

そこで、私はふと思った。
渡り鳥はどうやって渡る時期を決めているのか?
また決まった渡る時期をどのように共有しているのか?

もし私がペリカンだったら朝起きるのが苦手だから毎年取り残されるに違いない。
ペリカンは気づいたら誰もいない、なんてことにならないのか?

そんな話を夫としながら帰路に着いた。

それから1か月、その答えをこの本で知ることになった。
ちょうど昨日読んでいたところに答えがあった。

この本はノーベル生理学・医学賞を受賞したオーストリア人動物行動学者、コンラート・ローレンツ博士によって書かれた本で、彼が飼っていた(放し飼いにしていた)無数の動物を中心に彼の研究結果が淡々と、しかし動物愛に溢れた温かい言葉で書かれている。

社会生活をする高等な動物たちでは、生理的気分を伝達する発信器官も受信器官もともに、人間よりはるかによく発達し、特殊化しているのである。

「ソロモンの指輪」

人間は言葉でコミュニケーションをするようになったために動物と比べて「察する」という能力が衰えてしまった、という。

動物は言葉が話せない分、どんな僅かな合図も見逃さず、これから群れの中で何が起きるのかを本能的に理解している。

ペリカンにおいて「渡りますよ」の合図が何なのか私にはわからないが、何か特別な鳴き声なのか、特別な飛び方なのか、きっと何かあるのだろう。
よって、ねぼすけペリカンも取り残されることはないし、ちゃんと北へ南へ群れと共に渡っていく。

私が以前間借りをさせてもらっていたお宅にはプードルとマルチーズのミックス犬がいた。真っ白でアンバランスに足が長く、全くもって言うことを聞かない犬だったが、賢かった。
彼女は自分が散歩に行くのか、家の人が出かけていくのかを正確に見分けたし、餌を変えると前の餌に戻せという抗議で何日も新しい餌には手をつけなかったりした。

このように特に犬においては、犬と暮らしたことのある人なら、犬は「何かを積極的に伝えようとしてくる」ということを理解できると思う。
種を越えて人間に何かを伝えようとしてくるということは、犬が自分を人間だと思っているのか、私たちのことを犬だと思っているのか。

この本では何十ページにも渡って博士の飼っていったコクマルガラスの生態について書かれているが、彼らは「一緒に飛ぼう」という鳴き声と「一緒に家に帰ろう」という鳴き声を使い分けるという。

どちらも「一緒に飛ぼう」でも良さそうなところだが、誰に教えられる訳でもなく、生まれた時からちゃんと知っている。

数日前、頭上にカラスが飛び立ち「カー」と大声で鳴いた。
今までそんなことは考えたことがなかったが、この本に出会った今、「何て言ったんだろう?」と考えずにはいられない。

6月27日 火曜日

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