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スポーツは平和の糸口になるか

こちらアメリカは、まだ7月3日。ツールドフランスの第三ステージを見ながらnoteを書く。

バスク地方から始まった今年のツールドフランスだが、今日レースはフランスに突入した。もちろんレースは初日から始まるのだが、やはりフランスに入ると「始まったな」と感じる。

連日ニュースで目にするフランスのデモの様子とは裏腹に、ペロトン(自転車競技の集団のこと)はぬるりとバスク地方からフランスに入国した。これが出来るのがヨーロッパのすごいところだ。

これをもし他の地域でやろうとすれば、選手たちがそれぞれパスポートを持ち列に並ぶことになる。
入国審査官の手際の良さで順位も変わってきそうだ。

話が反れたが、今日のステージで見るフランスの田舎は実に平和に見える。人々はツールドフランスの到着を歓迎し、歓声を送る。

このスポーツを愛する平和な国に何が起きているのだろう。

今回の暴徒化したデモのきっかけとなったのは、フランス警察による北アフリカ系の少年の銃殺事件だという。
この少年はいくつかの交通違反で警察に止められた後、警察官によって運転席で至近距離から銃撃された。

警察は当初、少年が「自動車を動かし、警官をひこうとした」としたと発表した。しかし、拡散された動画では、確かに少年は車を動かしているものの、警官は運転席の真横にいたため、明らかに「ひこうとした」という意思は認められない。
私も実際にその映像を見たが、確かに警官が身の危険を感じたとは考えにくい。

フランスでは警察による自動車への発砲は年間150件ほど起きているらしい。死者のほとんどは黒人かアラブ系だという。
根強い差別意識や日本以上に厳しいインフレ、高い失業率などの様々な社会問題も相まって市民の怒りに一気に火が付いた、という流れだ。

そもそも、フランスは国家権力に立ち向かう革命の国というイメージが強いが、今回ニュースで目にする市民の車を燃やす、店やレストランを襲うなどの行為は理解に苦しむ。
意義のある抗議活動から注目を奪い、ヘイトだけを生む卑劣な行為だと思う。

コロナが始まってすぐの頃、アメリカでは大きな抗議運動があった。
こちらも警察がアフリカ系アメリカ人の男の暴力行為に端を発し、Black Lives Matterという大きなデモ活動が米国全土だけでなく、全世界に広がった。

この時も全く同じことが起きた。
国を良くしよう、皆が安全に暮らせる社会にしようというデモだったはずが、店を襲い、商品を根こそぎ奪い取った。
初めのうちはルイ・ヴィトンなどの高級店が狙われたが、靴屋や薬局までも被害にあった。
路面店の窓はあっという間に板張りになり、駐車場にはバリケードが出来た。また、都市部では夜間の外出も禁止になった。

当時はコロナウイルスの蔓延で極力外出しないように、ということだったのでスーパーに行くのも週に一度あるかないかだったが、たまたま私たちが買い出しに行っているときに店が襲われたら、などと考えた。

混乱した世の中で人を信じるのは難しい。
今後、恐怖や不信感に苛まれたフランス国民が更なる人種差別や偏った政治に走ることのないよう心から願う。

7月3日 月曜日

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