恐るべきデビュー作

今日やっとこの本を読了できた。

AmazonでKindle本を買おうとするとプロモーションでやたらと出てくるので、嫌でも目にしていたし、アガサ・クリスティー賞受賞!この小説が熱い!みたいな何枚も熨斗がついたような本だったので、天邪鬼な私は「うーん、なんか人気あり過ぎて違う…」と拒絶反応を示していた。

セールになったところでようやく、レビューくらいは見るかと商品ページに飛ぶと「ロシアがウクライナと戦争している今だから読むべき」という趣旨の投稿を見て、何これ?ロシアの戦争の話なの?と興味を持った。

ロシアの経験した第二次世界大戦は私にとってほとんど未知の領域だった。

読み始めてからは、戦争孤児となった少女が厳しい訓練を経てスナイパーになり、激戦地に送られるというめちゃくちゃに重い題材にも関わらず、不思議とさらさら読めてしまう小説だった。
戦争の話は大抵「もう限界、苦しい」と息継ぎを挟みたくなるが、この本は現代人のそんな生温い気持ちより、この子がこの子なりの幸せを見つけるまで私は止まらない、といった妙な正義感を私に抱かせた。

あまりにもリアル過ぎる戦争描写、さらに想像も出来ないような戦争の醜さ・惨めさ、戦争が人をどう変えるか、数々の詳細な描写で、読み終える頃には著者は戦争経験者に違いない、と思っていた。

読み終えてすぐ著者の年齢を調べたのはそれを確かめるためだった。

なんと作者は37歳だという。正直今でも信じられない、戦争を経験していない世代が書けるような世界観ではないと思った。
それほど緻密でリアルで、想像し得る遥か外側の戦争を描いた大傑作だと思う。

更に驚くべきことは、『同志少女よ、敵を撃て』が長編デビュー作だという。
こんな天才がこの世にいようとは、天邪鬼な自分を恥じつつ、次回作も必ず読む!と決意を固めた。

8月12日 土曜


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