えるも

変な小説を書いています。 将棋大好き永遠の級位者。元の名前は、あなぐまです。 首都高…

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変な小説を書いています。 将棋大好き永遠の級位者。元の名前は、あなぐまです。 首都高ジャンクションに住みたい。

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  • 短いお話

  • 小太郎と町子さんと私

    くらい話はなしだぜ。

  • 日常

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  • ハッピーアイスクリーム

    まあまあ長め、小説ハッピーアイスクリーム

  • 長めのお話

    note的にはちょい長めですが、一般的には短い小説

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地下鉄調達人

地下鉄に乗っていた。 それらしき人を見かけたので、このときとばかりに眠りこけることにした。 それらしき人、というのは地下鉄町調達人のことである。 地下鉄調達人は、…

えるも
8か月前
19

6月のカレンダー

 リビングの鏡の上に、誰にもらったのか覚えていないカレンダーがかけてあるんですけど。  今月のね、6月をめくったらびっくりしちゃいましてね。  え?  カレンダ…

えるも
4日前
9

セキセイインコさん来まして、ご飯食べなくて心配し初めて食べたご飯の殻をっとっておいたりしまして、猫ぽんのことを思い出しつつ「世界で一番可愛いよ」と語彙も少なく、なぜかトイレがぶっ壊れ、喘息が出始めて、名人戦が終わって傷心しそれでも豊島さんをずっと応援し、腰痛にきりきりダンス。

えるも
4日前
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「三人で漕ごう」 町子さんと小太郎

 三人乗り自転車で、サイクリングにでかける。  小太郎は学校があるから漕ぐのは私と町子さんだけだ。私が先頭に乗り、町子さんが真ん中、三番目は空席のまま海沿いの道…

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8日前
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長いやつ

誰だったか、有名な作家さんが短い小説しか書けなくて悩んでいた時に、とにかく千枚書いてみれば、と言われて書いてみたら案外書けて、それから長いやつのほうが向いてるな…

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9日前
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かさなるもの

 その人のところは、再生回数も登録数もさしたるものではなかった。 しかし、話は非常におもしろく、金山はよく聞きに行ったものだ。都合、十五分ほどの怪談話というほど…

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9日前
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【小説】ハッピーアイスクリーム・⑩ 最終回

動画 タイトル 怪談その後  こんにちはー。  いや、この前は怖かったですよねえ。Mさんはともかくとして、いちばん怖かったのはゲストさんでしたよ。  話の途中で急…

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11日前
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【小説】ハッピーアイスクリーム・⑨最後の一人が殺せない

   残り七日になった。  有給の残りをすべてそこに当て、午後からも休みをもらった。  シバタはスマホをデスクの引出しに残し、社屋を出た。この三日で合わせて六時間…

えるも
11日前
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その日の気分で好き勝手な読み方でどうぞ。

 長いやつを(小説『ハッピーアイスクリーム』)、アップしとります。  とりとめのない話で、たいへん読みにくいのではないかと思います。まあ、原稿用紙二百に届かない…

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12日前
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【小説】ハッピーアイスクリーム・⑧主語というやつは

   ちょっと買い出しに行ってくると店長が言い残して出かけてから、もう四十分以上経っている。  店じまいした後で新作メニューを作っていることは、時給を倍にしても…

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12日前
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【小説】ハッピーアイスクリーム・⑦そんな人、いませんでした

 動画 タイトル 怪談つづき  20××年7月投稿    こんにちはー!  今日も前回に引き続き怖い話をしたいと思います。  僕はまったく霊感が無いんで、人から聞く…

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2週間前
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【小説】ハッピーアイスクリーム・⑥ロイホにいる通り魔

   日曜日、朝の十時までぐっすり眠ってしまったシバタは、パソコンを持って駅前にあるロイヤルホストに行った。家にいたら、寝るか食べるかネットをつないでいるかにな…

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2週間前
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【小説】ハッピーアイスクリーム・⑤世界史教師と怪談とけしごむ

「わかったよ」  いきなり片田さんが、頬杖をついていた葛飾の手を外しにかかった。黒板の上にかけられた時計を見ると、とっくに五時間目が終わったところで、もう教室に…

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2週間前
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【小説】ハッピーアイスクリーム・④夢の男と記憶の男

 やってしまった。  カーテンの隙間に、矢のような光が見える。朝だ。昨日は結局まりもで全然書けなくて、コンビニでビールと明太子と春雨スープを買って帰った。一人の…

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2週間前
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【小説】ハッピーアイスクリーム・③こっくりさん、それから

 店からもらってきた売れ残りのハンバーグをレンジに入れて、温まるのを待っていたら、こういう無為な時間をつかって筋トレするんだよ、と帰りのバスの中で話していた女の…

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3週間前
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【小説】ハッピーアイスクリーム・②食べなきゃ、書けない

 喫茶まりものドアを開ける前にシバタが腕時計を見ると、ちょうどデジタル画面が変わって5時35分になった。  この店は駅から離れた住宅街にあるせいかいつも空いてお…

えるも
3週間前
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地下鉄調達人

地下鉄調達人

地下鉄に乗っていた。
それらしき人を見かけたので、このときとばかりに眠りこけることにした。
それらしき人、というのは地下鉄町調達人のことである。

地下鉄調達人は、うわさでは地下鉄なのに黒いサングラスをしてるとか、夏でもマフラーを巻いているとか、シークレットブーツを履いているとかいうが、自分の周りにほんとうに調達された人がいないので定かではない。

調達人は、地下鉄で眠りこけている人をさらって、地

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6月のカレンダー

6月のカレンダー

 リビングの鏡の上に、誰にもらったのか覚えていないカレンダーがかけてあるんですけど。

 今月のね、6月をめくったらびっくりしちゃいましてね。

 え?

 カレンダーって、最初に全部めくってみるもんなんですか?
 まあ、もらいものだしね…。

 6月はね、シルクハットをかぶった男が蝙蝠傘をさしているんですよ。

 男の顔は帽子のつばに隠れてしかとは見えないんですが、目を凝らすと黒い瞳と高い鼻が見

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セキセイインコさん来まして、ご飯食べなくて心配し初めて食べたご飯の殻をっとっておいたりしまして、猫ぽんのことを思い出しつつ「世界で一番可愛いよ」と語彙も少なく、なぜかトイレがぶっ壊れ、喘息が出始めて、名人戦が終わって傷心しそれでも豊島さんをずっと応援し、腰痛にきりきりダンス。

「三人で漕ごう」 町子さんと小太郎

「三人で漕ごう」 町子さんと小太郎

 三人乗り自転車で、サイクリングにでかける。
 小太郎は学校があるから漕ぐのは私と町子さんだけだ。私が先頭に乗り、町子さんが真ん中、三番目は空席のまま海沿いの道を走る。

 太陽が照りつけているので、こげ茶色のサングラスをかけて髪の毛を一本残らずピンで留めた。こうしておかないと、ほどけたところから海に吸い込まれて海草にされてしまう。 

 できるだけゆっくり漕ごうと思っていたのに、後ろで町子さんが

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長いやつ

長いやつ

誰だったか、有名な作家さんが短い小説しか書けなくて悩んでいた時に、とにかく千枚書いてみれば、と言われて書いてみたら案外書けて、それから長いやつのほうが向いてるなって思ったという話を聞いたことがあります。

自分にとっての長いやつは、いつも公募の基準にあわせていたので到底千枚には及ばないんですが、ここ二年ほど、書いても書いても進まない小説がありまして、試しにそれをふたつに分割して書くことにしたら、ア

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かさなるもの

かさなるもの

 その人のところは、再生回数も登録数もさしたるものではなかった。 しかし、話は非常におもしろく、金山はよく聞きに行ったものだ。都合、十五分ほどの怪談話というほど怪奇なことは起こるでもないが。とりあえず、そう銘打たれている。
 
 残酷だったり、悲痛だったり、陰湿だったりするところのまずない、しかしいつでも薄曇りのするわかりづらい話だが、おもしろい。と、金山には思えた。
 
 はじめて見に行った時に

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【小説】ハッピーアイスクリーム・⑩ 最終回

【小説】ハッピーアイスクリーム・⑩ 最終回

動画 タイトル 怪談その後

 こんにちはー。
 いや、この前は怖かったですよねえ。Mさんはともかくとして、いちばん怖かったのはゲストさんでしたよ。
 話の途中で急に黙ったと思ったら、何も言わずに帰っちゃったんですから。トイレかなあと思って待っていたんですけど、いつまで経っても戻ってこないから見に行ったら本当に帰っちゃってたんですよね。
 あとで本人から連絡がきまして、あの話、嘘が混じってたとか言

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【小説】ハッピーアイスクリーム・⑨最後の一人が殺せない

【小説】ハッピーアイスクリーム・⑨最後の一人が殺せない

 

 残り七日になった。
 有給の残りをすべてそこに当て、午後からも休みをもらった。
 シバタはスマホをデスクの引出しに残し、社屋を出た。この三日で合わせて六時間くらいしか寝ていないというのに、最後の章はちっとも進まず、ただ机の前でぼんやりするばかりなので、タイマーを五分おきにかけてみたが、音が鳴る度に驚くだけだ。
 駅までもう少しなのにもうこれ以上立っていられないくらい眠たくて、シバタはそこか

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その日の気分で好き勝手な読み方でどうぞ。

その日の気分で好き勝手な読み方でどうぞ。

 長いやつを(小説『ハッピーアイスクリーム』)、アップしとります。

 とりとめのない話で、たいへん読みにくいのではないかと思います。まあ、原稿用紙二百に届かないので、印刷されたら中編という長さのもんです。

 作品冒頭でもしつこく言及してますけども、内容的には、どっから読んでも大概問題ないようです。自分の小説は、いつもそんな感じです。続きは読まなくても問題ないし、多少の「?」はあったとしても真ん

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【小説】ハッピーアイスクリーム・⑧主語というやつは

【小説】ハッピーアイスクリーム・⑧主語というやつは

 

 ちょっと買い出しに行ってくると店長が言い残して出かけてから、もう四十分以上経っている。
 店じまいした後で新作メニューを作っていることは、時給を倍にしてもらったから構わないのだけれど、せっかくのハヤシライスを味見してくれる人がいないのでは意味がない。
 スマホを持っているだけでほとんど見ない店長なので、先に帰りますと書置きでも残そうかと考えながら後片付けをしていると、ドアノブが回されるがち

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【小説】ハッピーアイスクリーム・⑦そんな人、いませんでした

【小説】ハッピーアイスクリーム・⑦そんな人、いませんでした

 動画 タイトル 怪談つづき  20××年7月投稿
 
 こんにちはー!
 今日も前回に引き続き怖い話をしたいと思います。
 僕はまったく霊感が無いんで、人から聞く専門なんです。
 で、奇特にも直接お話してくれるという人が現れました。こういうのって、やっぱり体験したご本人が話すのがいちばんですから。
―それでは今日はよろしくお願いします。
―あ、どうも。あんまり自信がないんですけど。
(女性の声が

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【小説】ハッピーアイスクリーム・⑥ロイホにいる通り魔

【小説】ハッピーアイスクリーム・⑥ロイホにいる通り魔

 

 日曜日、朝の十時までぐっすり眠ってしまったシバタは、パソコンを持って駅前にあるロイヤルホストに行った。家にいたら、寝るか食べるかネットをつないでいるかになってしまう。前回喫茶まりもでまるで書けなかったことを考えると、どれくらいの進捗が望めるかはわからないが。
 メニューを持ってきた女性に、シバタはその場でナポリタンスパゲティとドリンクバーを注文した。
 隣の四人掛けテーブルには、飲み干され

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【小説】ハッピーアイスクリーム・⑤世界史教師と怪談とけしごむ

【小説】ハッピーアイスクリーム・⑤世界史教師と怪談とけしごむ

「わかったよ」
 いきなり片田さんが、頬杖をついていた葛飾の手を外しにかかった。黒板の上にかけられた時計を見ると、とっくに五時間目が終わったところで、もう教室には自分と片田さんしかいない。自分はまた眠っていたのだろうか。
「何が?」
「昨日の四限にハッピーアイスクリームって叫んでたのって、生徒の誰でもなかった」
「どういうこと?」
 片田さんによると、あの日、あの時間に体育の授業はなかったという。

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【小説】ハッピーアイスクリーム・④夢の男と記憶の男

【小説】ハッピーアイスクリーム・④夢の男と記憶の男

 やってしまった。
 カーテンの隙間に、矢のような光が見える。朝だ。昨日は結局まりもで全然書けなくて、コンビニでビールと明太子と春雨スープを買って帰った。一人の部屋でビールを飲みながら、残り少ない日数で雑に仕上げるくらいならこの原稿は次に回すという手もあるんだよな、とこの半月ほど繰り返したことを性懲りもなく唱えているうちに、眠ってしまった。
 残りの十三日を、仕事意外すべてこの原稿に費やせば間に合

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【小説】ハッピーアイスクリーム・③こっくりさん、それから

【小説】ハッピーアイスクリーム・③こっくりさん、それから

 店からもらってきた売れ残りのハンバーグをレンジに入れて、温まるのを待っていたら、こういう無為な時間をつかって筋トレするんだよ、と帰りのバスの中で話していた女の人の言葉を思い出した。しかし、疲れているから電子レンジを使っているので、そんなことはしたくない。無為であるというのは同意するが。
 一分にセットした残り時間が刻々と減って行く。口裂け女は一分間でどれくらいの距離を走れるのか。
 それにしても

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【小説】ハッピーアイスクリーム・②食べなきゃ、書けない

【小説】ハッピーアイスクリーム・②食べなきゃ、書けない

 喫茶まりものドアを開ける前にシバタが腕時計を見ると、ちょうどデジタル画面が変わって5時35分になった。
 この店は駅から離れた住宅街にあるせいかいつも空いており、好き勝手に座ってくれというシステムなので、ドアに近い二人掛けのテーブルを選んだ。ひとつ離れた席では、女子高生が教科書を広げつつあまり集中していない様子で飲み物を飲んでいる。たしかここでバイトをしている子だ。シバタも何度かコーヒーを運んで

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