えるも

変な小説を書いています。 将棋大好き永遠の級位者。元の名前は、あなぐまです。 首都高…

えるも

変な小説を書いています。 将棋大好き永遠の級位者。元の名前は、あなぐまです。 首都高ジャンクションに住みたい。

マガジン

  • ハッピーアイスクリーム

    まあまあ長め、小説ハッピーアイスクリーム

  • 日常

    エッセイだよ

  • 小太郎と町子さんと私

    くらい話はなしだぜ。

  • 長めのお話

    note的にはちょい長めですが、一般的には短い小説

  • 短いお話

最近の記事

【小説】ハッピーアイスクリーム・⑦そんな人、いませんでした

 動画 タイトル 怪談つづき  20××年7月投稿    こんにちはー!  今日も前回に引き続き怖い話をしたいと思います。  僕はまったく霊感が無いんで、人から聞く専門なんです。  で、奇特にも直接お話してくれるという人が現れました。こういうのって、やっぱり体験したご本人が話すのがいちばんですから。 ―それでは今日はよろしくお願いします。 ―あ、どうも。あんまり自信がないんですけど。 (女性の声がする。姿は見えない) ―そんな深く考えなくていいですよ。これを見てくれる人ってそ

    • 【小説】ハッピーアイスクリーム・⑥ロイホにいる通り魔

         日曜日、朝の十時までぐっすり眠ってしまったシバタは、パソコンを持って駅前にあるロイヤルホストに行った。家にいたら、寝るか食べるかネットをつないでいるかになってしまう。前回喫茶まりもでまるで書けなかったことを考えると、どれくらいの進捗が望めるかはわからないが。  メニューを持ってきた女性に、シバタはその場でナポリタンスパゲティとドリンクバーを注文した。  隣の四人掛けテーブルには、飲み干されたグラス、椅子にムーミンのミーがプリントされた大きなトートバッグが置かれている。

      • 【小説】ハッピーアイスクリーム・⑤世界史教師と怪談とけしごむ

        「わかったよ」  いきなり片田さんが、頬杖をついていた葛飾の手を外しにかかった。黒板の上にかけられた時計を見ると、とっくに五時間目が終わったところで、もう教室には自分と片田さんしかいない。自分はまた眠っていたのだろうか。 「何が?」 「昨日の四限にハッピーアイスクリームって叫んでたのって、生徒の誰でもなかった」 「どういうこと?」  片田さんによると、あの日、あの時間に体育の授業はなかったという。 「なんでわかるの?」 「体育の西川に聞いたから」 「西川に?」 「手始めに隣の

        • 【小説】ハッピーアイスクリーム・④夢の男と記憶の男

           やってしまった。  カーテンの隙間に、矢のような光が見える。朝だ。昨日は結局まりもで全然書けなくて、コンビニでビールと明太子と春雨スープを買って帰った。一人の部屋でビールを飲みながら、残り少ない日数で雑に仕上げるくらいならこの原稿は次に回すという手もあるんだよな、とこの半月ほど繰り返したことを性懲りもなく唱えているうちに、眠ってしまった。  残りの十三日を、仕事意外すべてこの原稿に費やせば間に合うのはわかっている。それはもう、今までの経験でわかっているのだ。おそらくは残り十

        【小説】ハッピーアイスクリーム・⑦そんな人、いませんでした

        • 【小説】ハッピーアイスクリーム・⑥ロイホにいる通り魔

        • 【小説】ハッピーアイスクリーム・⑤世界史教師と怪談とけしごむ

        • 【小説】ハッピーアイスクリーム・④夢の男と記憶の男

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        • ハッピーアイスクリーム
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        記事

          【小説】ハッピーアイスクリーム・③こっくりさん、それから

           店からもらってきた売れ残りのハンバーグをレンジに入れて、温まるのを待っていたら、こういう無為な時間をつかって筋トレするんだよ、と帰りのバスの中で話していた女の人の言葉を思い出した。しかし、疲れているから電子レンジを使っているので、そんなことはしたくない。無為であるというのは同意するが。  一分にセットした残り時間が刻々と減って行く。口裂け女は一分間でどれくらいの距離を走れるのか。  それにしても、口裂け女はもはや歴史なのか。まあ、そうか。  口裂け女は、別格だった。怪談を聞

          【小説】ハッピーアイスクリーム・③こっくりさん、それから

          【小説】ハッピーアイスクリーム・②食べなきゃ、書けない

           喫茶まりものドアを開ける前にシバタが腕時計を見ると、ちょうどデジタル画面が変わって5時35分になった。  この店は駅から離れた住宅街にあるせいかいつも空いており、好き勝手に座ってくれというシステムなので、ドアに近い二人掛けのテーブルを選んだ。ひとつ離れた席では、女子高生が教科書を広げつつあまり集中していない様子で飲み物を飲んでいる。たしかここでバイトをしている子だ。シバタも何度かコーヒーを運んでもらったことがあるが、今は休憩時間なのか。  厨房から大学生くらいの男子がやって

          【小説】ハッピーアイスクリーム・②食べなきゃ、書けない

          痩せた未来にタイムワープとかできないですかね?

          さいきん、ふくらはぎを揉んでるんですけども、ぜんぜん足が桜島大根です。今日で16時間断食二日目なんですけども、まったく痩せません。調べてみたら、結果が出るのに一月かかるそうですがな。 気が遠くなって気絶します。 ところで皆さん、バナナダイエットって、覚えていますか? 覚えていますか、愛、とかいうアニメが昔あったな。 カービィダンスとか、タニタ食堂とか、B型自分の説明書とか。 どれもこれも、自分が書店で働いていたころに流行った本です。自分は実用書の担当をしていたんですが、

          痩せた未来にタイムワープとかできないですかね?

          【小説】 ハッピーアイスクリーム・①なぞのシャウト

           誰かに肩を叩かれたような気がして、窓際の後ろから二番目の席で眠っていた葛飾塔子は机に投げ出していた半身を起こした。  世界史教師は第一次世界大戦のころにスペイン風邪が大流行したという話をしている。  開け放たれた窓に顔を向けると、変に間延びした高い声が聞こえてきたが、何と言っているのかはわからない。葛飾は寝起きでこわばった身体を伸ばして窓の外を覗き込んだ。校庭の体育はたぶんテニスだと思うが、誰かが派手にボールを打ち上げでもして、今のかん高い声が出たのだろうか。目をとじて耳に

          【小説】 ハッピーアイスクリーム・①なぞのシャウト

          謎言語でかんがえている。

           千葉県生まれで、一瞬東京に住んでいたこともあるけれども、ほとんど千葉県住まいの自分なのだが、何か小難しいことを思考しようとして、なぜだか頭の中も発する言語も意味不明の関西弁になってしまう時がある。  たまたま好きな作家さんのほとんどが、大阪あたりの人で作中にも関西弁が出てくることが関係しているのだろうか?あー、大阪行ってたこ焼き食いたい。  そもそも芸人さんがこれだけテレビに出ているからには、どうしたって「そうなんや〜」などと似非関西弁が自然に口をついてしまうよね?

          謎言語でかんがえている。

          社長と天使の傘 町子さんと小太郎

          「傘は雨降りの、それも家の中にいては見失いそうな小雨降る日に買わなければならないという条例が出たって知ってましたか?」  大山たけこが、そんなことを言ったのは、さんさんと太陽が降り注いでいるかというとそれは成層圏あたりまでで地上はぜんぜん曇っている木曜日朝一番のお茶時間のことだった。 「なにそれ、俺そんなの知らないけど」  最近、早足で歩く人々の合間を猛烈にゆっくり歩くことで、逆に誰にも絶対にぶつからない技を生み出したという松岡が、限りなく薄そうなルイボスティーを飲み干した

          社長と天使の傘 町子さんと小太郎

          悪魔のピアノ

           先生の家には玄関を入ってすぐ左に部屋があって、いつもは大体閉まっている扉が、ときどき中をのぞいてごらんとばかりの細さでこっちを見ていることがあった。  そこにはダンボールとか洋服を入れるケースとか、とにかくいろんなものがごたごた積み上げられていて、なんだかリラックスできそうにない部屋だなと、僕は勝手な感想を持ったのだった。  それがこの前のレッスンのとき、またしても扉が開いていて、奥の壁に絵がかかっているのを見つけた。中が暗くてはっきりとはわからなかったけど、全体的に黒っ

          悪魔のピアノ

          見られる日記 町子さんと小太郎

           私の日記を盗み読みしている人がいるようなので、その人に向けて嘘の日記を書くことにした。    某月某日 やけに姿勢の良い人と見合いをしたが、私はくねくねした人が好きなのだ。  これは先週の木曜日に書いた日記だ。わざと誰でもとれる場所に放置した。開け放った窓際とか、鍵のかかっていないポストの中とか、庭に植えてあるいちじくの木の枝にかけておいたら、さっそく、町でそれらしき人に出くわした。その人は話している間中、首と手首をくねくねと回していたのだ。これは犯人に違いないと思った私

          見られる日記 町子さんと小太郎

          夢の顔

           小川康平は、彼がいつも通勤に使っている乗換駅にいる夢を見ていた。光の加減から午後二時ころではないかと思うが、ホームには人がほとんどいない。ベンチに一組の男と女が座っている。具合が悪くなった女性を男が助けたところのようだったが、小川が二人の前を通り過ぎると、男は彼を見てなぜか怯えたような顔をした。そこで目が覚めた。    次の日の夢でも同じ駅にいた。改札を抜けると、昨日の二人がエレベーターの前に並んで立っている。女はすっかり元気になったらしく、男と親しげに話していた。小川があ

          これから行く町 怪談ウエイトレス 

           昼休みの公園は、たいていほとんどのベンチがふさがっているから、噴水の前の、いちばん好きな場所が空いていたのはラッキーだった。  サンドイッチとおにぎりを食べ終えた野木は、鞄を開けて思わず、あれっと声を出してしまった。  読みかけの本が入っていない。  朝、家を出る前に机から手に取ったのは覚えているが、鞄に入れたかどうかまで思い出せない。電車の中で読もうと思っていたのだけれど、今朝はいつもより混んでいて身動きも取れなかった。  仕方がない。野木は本をあきらめて、かわりに

          これから行く町 怪談ウエイトレス 

          いやだな、と思う人はいると思う。

          さいきんずうっと、わーって思って、いろんなことが頭のなかグルグルしてて、これは前に「あなぐま」ってアカウントで書いてたけど唐突にnote辞めちまったときと同じ症状で、このままだとまたnote辞めることになりそうだがそれはすごく嫌だ、 noteって、8ヶ月も赤字なのだとかさっき知って、そんな気はしていた、だって広告無しでどうやってんだ?と思っていたら有料記事が収入源だそうだ、私には無理だたまにお金あったら読みたいのに、って思う人がいるけど、 生きてるうちに今書いてる小説ぜっ

          いやだな、と思う人はいると思う。

          【小説】 声 (後編)

           マンションに戻ると、エレベーターに故障中の貼り紙がついていたのでスズキは五階までゆっくり足を交互に振り上げてきつさを考えないように歩いていたが、上りきった瞬間、春野さんがそこにいたような気がしたのは、酸素が不足していたせいかもしれない。だって、そんなわけはないから。スズキはずっと前に好きだったひこにゃんのキーホルダーがついた鍵を玄関の鍵穴にさしこんだ。マンションといっても、狭めの八畳に一口コンロしかないキッチンのついたおもちゃのような部屋だが、未だにそこに自分が日々存在する

          【小説】 声 (後編)