見出し画像

トランプ大統領とディナーをとりながら二人だけで話をしている時…「そのような歴史的な時期に、初の国賓として招かれることは本当に光栄なことです」と仰っていました。

「そのような歴史的な時期に、初の国賓として招かれることは本当に光栄なことです」と仰っていました。
2019年07月08日
以下は月刊誌Hanada8月号に、安倍総理、大いに語る、朝日新聞と無責任野党に問う、と題して掲載された、安倍晋三首相と櫻井よしこさんの特別対談記事からである。
歴史的瞬間を国民が共有
櫻井 
新元号「令和」の決定に続き、上皇陛下の御退位と今上陛下の御即位がつつがなく執り行われました。
わずか三年足らずの準備期間でこれだけの国民的行事の成功を収めるのは、並大抵の内閣では成し遂げられなかったことではないかと感じています。
この間、実に様々な御苦労や心配りがあったのではないかと思います。

安倍 
三年前の夏に、上皇陛下がお気持ちを述べられた時から大変な責任と重圧を感じてきました。
つつがなく歴史的な御退位と御即位、そして新元号の制定を執り行わなければならない。
そのために、内閣をあげて万全の準備を進めて参りました。 新元号が公表される四月一日が近づくにつれて、緊張感がより一層高まり、ある種の重苦しい空気が内閣や官邸を覆っていました。 
お陰様で「令和」を多くの国民から評価、歓迎していただき、肩の荷が下りてホッとしました。
菅官房長官も同じ思いだったと思います。

櫻井 
国民の七割、八割が新元号を高く評価しているといった世論調査も見られましたね。
安倍 
特に、次の時代を担う若い人たちにそうした傾向が顕著に見られることは大変嬉しく思います。
グローバル化か進めば進むほど、「私たちは何者なのか」という自らのアイデンティティに、より多くの人たちが思いを巡らせるようになったのではないでしょうか。 
同時に、これまで守り続けてきたもの、大切なものは何かと、悠久の歴史のなかで培ってきた伝統や文化にも目を向け、考える機会が増えたのではないか。
そのなかで、私たちが長年保守し続けてきた元号に対しても、多くの国民に今回、「やはり守り続けてよかった」と思っていただけたと感じております。

櫻井 
情報漏洩には、相当神経を尖らせておられましたね。
安倍 
それに対して、「やりすぎではないか」といった批判も受けました。
しかし、なぜ私たちがこれほど厳秘を徹底したのかと言いますと、新元号とともに我々は時を刻んでいくわけですから、その決定の瞬間は国民の皆さんで共有することが重要ではないか、と考えたからなのです。 
「新しい元号は令和です」と菅官房長官が発表する瞬間を、国民がテレビやインターネットを通じてともに過ごす。
それによって、「私たちの新しい時代が幕をあける」との思いを共有する。
これはとても大切なことだと思います。
様々な批判がいまもありますが、国民の皆さんがあの歴史的な瞬間をともに過ごせたことは大変良かったと思っています。

安倍総理は聖徳太子?
櫻井 
わずかな準備期間でこれだけの国民的行事を成功させたことに対して、メディアは「できて当たり前」とでも言わんばかりで、評価する報道が皆無なのは不思議でなりません。
安倍 
メディアから評価されないことには慣れていますから(笑)。
もちろん私と菅官房長官だけではなく、新元号制定に向けて多くの方々にご尽力いただきました。
皆さんそれぞれの分野で、役人は役人人生をかけて、元号考案者は学者生命をかけて取り組んで下さった。

櫻井 
「令和」が日本の長い元号の歴史で初めて漢籍から離れ、日本の国書である『万葉集』を典拠としたことで、日本の歴史への深い興味をもう一度、呼び起こすことを期待しています。       
『万葉集』の編纂は、聖徳太子亡きあとに始まり、聖武天皇の崩御後、完結したとされています。
民族の生き方として、中華の道ではなく大和の道を選んだ歴代天皇の時代を通して編纂されたことになります。
こうした歴史を「令和」は想い起こさせてくれました。
大袈裟でなく、安倍総理が聖徳太子を含めて、天智、天武、聖武各天皇の群像と重なって見えました(笑)。

安倍 
いえいえ、恐れ多い(笑)。
『万葉集』は、一千二百年あまり前に編纂された日本最古の歌集であるとともに、天皇や皇族、貴族だけでなく、
防人や農民まで、幅広い階層の人々が詠んだ歌が収められ、わが国の豊かな国民文化と長い伝統を象徴する国書であり、世界でも稀に見る歌集です。

櫻井 
四千五百首の歌のなかには、名もなき庶民の歌も数多く見られます。
まさに全国民の歌が収められていると言っても過言ではありません。

安倍 
詠み人知らずの歌ですね。
皇族や貴族といった特権階級だけでなく、農民も防人も、多くの方が歌を詠むことができた、その教養の高さにも驚かされます。

櫻井 
日本がどれほど素晴らしい国であるか、と改めて強く感じさせられますね。
安倍 
そうしたことを言うと、よく「傲慢になれと言っているのか」などと批判する人がいるのですが、大間違いですね。
自分たちのアイデンティティに、静かな誇りを持つことはとても大切なことです。
たとえば海外に出て行った時、「日本人として恥ずかしくない行動をとる」といった考えや気概を育むことにも繋がっていくと思うのです。


トランプ大統領も緊張
櫻井
「令和」という新しい時代の幕開けに、初の国賓としてトランプ大統領夫妻を迎えました。
トランプ大統領も、日本の皇室や元号の歴史を安倍総理から聞かれて驚かれたのではないでしょうか。
そうしたお話を、トランプさんにされたことはありますか。

安倍 
はい。
日本の皇室の伝統、とりわけ万世一系であるということを説明しましたら、大変感銘を受けていました。
また、トランプ大統領とディナーをとりながら二人だけで話をしている時、二百二年ぶりとなった上皇陛下の御退位と今上陛下の御即位について説明しますと、「そのような歴史的な時期に、初の国賓として招かれることは本当に光栄なことです」と仰っていました。

櫻井 
宮中晩餐会の席で、天皇皇后両陛下とお会いになられましたね。
安倍 
あの時、トランプ大統領としては珍しく緊張した面持ちで臨んでいましたね。
櫻井 
トランプさんが緊張! 
日本の深い歴史が、自ずと強い力を生み出しているのではないでしょうか。

安倍 
トランプ大統領は、伝統や文化の尊さに敬意を表する感性をもっています。
大相撲の観戦も、彼が以前から強く望んでおられたのです。格闘技がお好きだということで、間近で見ていただき、また多くの観衆と一緒に見たほうが大相撲ならではの一体感を感じられるのではないかと考えて、升席にあのような席を設けました。
警備関係者の方には大変な苦労をかけてしまったのですが。

桜井 
実は、私もノンフィクション作家の門田隆将さんに招かれて、金美齢さんらと一緒に千秋楽を観覧しました。
安倍総理とトランプさんが国技館に入ってこられた時、観客がみな総立ちで割れんばかりの拍手を送り、国技館は歓声に包まれましたね。

安倍 
どのような雰囲気で迎えられるのか正直、心配していたのですが、皆さん礼儀正しく、温かく迎えて下さいました。
櫻井 
私の席が通路の傍で、ちょうど安倍総理とトランプさんの横顔が真正面に見える位置でした。
見るとトランプさんの表情は真剣そのもので、笑みもなく終始食い入るようにご覧になっていましたね。
「この方、本当に格闘技がお好きなんだな」と思いました。


高安と栃ノ心の取り組みで
安倍 
トランプ大統領は、「力士が立合前に何度も仕切り直しを繰り返すのはなぜなのか? どのような意味があるのか?」「行司はどのような役割なのか?」など、事細かく熱心に質問してこられる。
相撲協会の八角理事長(元横綱北勝海)に解説していただきましたが、高安と栃ノ心の取り組みでどちらが勝つたか微妙な一番があり、「シンゾー、どっちが勝ったんだ? どっちだ? どっちだ?」と身を乗り出して盛んに訊いてくる。
「ドナルド、ちょっと待ってくれ」と言ったんですが(笑)、非常に興奮した様子でしたね。 
終わったあとも、「古式豊かな伝統を守りつつ、真剣に戦い合い、なおかつ取り組み終了後も過剰な演出もない。勝った力士も負けた力士も淡々として、礼儀正しくお互いを称え合っている。日本らしい相撲は本当に素晴らしかった」と私に何度も仰っていました。 
国技館を去る際、偶然にも通路傍の席で櫻井さんたちをお見かけしたので、トランプ大統領にご紹介したんですよね。
ネットで「トランプ大統領が一般の方と握手」と出ていましたが、別のサイトでは「一般の方ではないのでは?」とのコメントも見られましたね(笑)。

櫻井 
トランプさんは非常に気さくな方で驚きました。
表彰式で優勝力士に「米国大統領杯」を贈呈する際、トランプさんが賜杯を渡し終えた時に、横でトランプさんをサポートした相撲協会の方の肩を彼がポンッと叩きましたね。
あの気遣いは素晴らしいなと思いました。

安倍 
よく誤解されているのですが、トランプ大統領はとても気遣いをされる優しい方なんです。
ほとんど知られていませんが、ゴルフ場で昼食を取っている際でも、食事や飲み物を運んでくれる従業員の方一人ひとりに「ありがとう」「元気?」「調子はどう?」と必ず声をかけます。 
彼の保有するゴルフ場では、スタッフ皆さんにファーストネームで呼びかけ、スタッフも「プレジデント」とか「ドナルド」と気さくに応じていました。
すごくいい雰囲気で、こちらも温かい気持ちになりました。

櫻井 
四月にワシントンを訪問された際、安倍総理は首脳会談を終え、ホワイトハウスでメラニア夫人の誕生日を祝う夕食会に参加されました。
あの時、トランプさんがメラニア夫人に「今日の君の誕生日をどのように祝いたい?」と訊いたら、彼女が「シンソーとアキエの二人ほど私が一緒に過ごしたいと思う人はいない」と答えたという記事を読みました。
今回の訪日でも六本木の炉端焼き店で、メラニア夫人に「結婚して良かっただろ。こんな素晴らしい日本に来られるなんて」と語りかける場面もあったという報道もありました。
トランプさんの優しい人柄が伝わってくるエピソードです。
安倍 
気配りもしますし、本質的に優しい方なんだと思いますね。喜びも素直に表現されますよ。
訪日翌日には通算五回目のゴルフを行ったんですが、プロゴルファーの青木功さんにも参加していただきました。
青木さんは一九八〇年の全米オープンで、帝王と称されたジヤック・ニクラスと死闘を演じたことでも知られ、トランプ大統領もその時のことが強く印象に残っていた。
ラウンドの途中、その青木さんから、トランプ大統領がドライバーを借りて打ったら飛距離がすごく出たんです。
そのことを素直に喜び、非常に上機嫌でしたね。

この稿続く。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?