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桃の思い出 (2017年07月31日元ブログより転載)

昨日のこと。息子夫婦が福島で「桃狩り」をしてきて
「本当に美味しくて」
と嫁さんがコーフンぎみに言いながら、お土産に届けてくれた。果物も高くて、それは致し方ないが、なかなかの贅沢品となった昨今とてもありがたい。
福島の桃!!! 食べる前から美味しそう!!! 箱はずっしりと重い。だけど
「明後日くらいがいいって」
というお預けを喰っております(笑)。で、過去に別ブログに書いていた桃の思い出など、回顧して、一部加筆修正したものを転載します。


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夏の果物が盛りである。毎年この時期、北海道の従姉から届くのが大きなメロンだ。鼻息荒く喰いつきたいが、メモが入っている。

「食べごろは○月〇日ごろです。 つるが黄色くなって萎れてきたら食べごろです。食べる2時間くらい前に冷蔵庫に入れてください」

待てをされた犬状態だが、私は犬よりナンボかマシだと思うのでその日を待とうではないか。そんな中、今度はフルーツ王国山梨の友達から桃が届いた。
桃!!! キャーε=ε=(ノ≧∇≦)キャー

桃は大好きなのだが、メロンとともに買うのに勇気がいる。いかにも美味しそうな大きな桃が、スーパーにずらりと並ぶ時期だが、一個いくらでは、なかなか手を出す勇気がない。沢山買っても、アタリはずれも大きい。
いつも、お盆のころにソッと1.2度買うだけであった。

昔、夏になると隣町からリヤカーを引いたオバちゃんが桃を売りに来た。
私にとっての
「美味しい桃」
の原点はまさに、そのオバちゃんが捥いで来たものであった。どの程度の頻度だったか忘れたが、伯母はそういう人が来ると、滅多に断ることはせず、ささやかでも何か買う。
(私の母が病弱だったため、私は幼少期、子のいない伯父伯母に育てられた)

伯母自身も家庭菜園でいろいろな野菜を丁寧に作ってはいたが、植えてある果物は柿だけだった。なので、果物は買うのである。

伯母は自分の用がない時は必ず
「休んでお茶ッコ飲んでいがいん」
と声をかける。

夏の盛りでもあった。リヤカーのオバちゃんはすっかり馴染みで、それでもだらしなく馴れ馴れしくなることは一切なく、ちんまりと縁台や勝手口に腰を下ろし、汗を拭く。

伯母はお茶だけでなく、冷たいカルピスや、麦茶、その時煮ていたモノや、「こないだ、アンダがら買ったの漬けてみだがら、食べでけらいん」
と、色のいい茄子漬けを勧めるのが常であった。

「美味しいごどー」
「んだすか?」

そうしながら伯母は、冷蔵庫に桃を収め、その中からひとつを洗い、皮をむいて出してくれた。
冷えていなくても甘みが抜群で、汁のしたたる桃。

夏の贅沢であった。

私にはいいところばかり。
そして伯母は切りながら、半端に残った部分を更に切ってその欠片を食べていた。

幼心に申し訳ないと思いつつ、その美味しさに独り占めしていた私。

(そんな私も、もうずっと前から子供たちには伯母と同じことをしている。大人になるとはこういうことかもしれない)

「このワラスは、あんだの桃が一番うめって語るのよ」
「あらー、んで、また、美味しいどご採ってくるがらね」

当時の彼女たちは今の私よりもずっと若かったが、今の私よりずっと老けて見えた。

年が過ぎ、
「リヤカーのおばちゃん、車にぶつかられで入院したんだずよ」
と聞いた。車がさもさも迷惑そうに、リヤカーや人を押しのける時代になって行った。

しばらくしてオバちゃんがリヤカーを引いて何もなかったような顔で現れた。私は、
「良かった」と安堵したが、それからまたしばらくして
「リヤカーのおばちゃん、亡くなったと」
と聞いた。

また、車に轢かれたと、後で知った。私の衝撃は大きかった。まだ40過ぎたくらいの若さだった。

「オバちゃんはどこからリヤカー引いてくるの」
と伯母に聞いたことがある。

「隣町だけどねー、朝早くに畑さ行って、野菜だの果物だの摘んで、リヤカーさ載せて引いてくるからねー」

私は子供心に、オバちゃんの人生を思ったものだった。

今般届いた桃はとても甘くて美味しくて、私は当時の幼児にあっという間にタイムスリップした。

昨日は夜半から胃の調子が悪い。昼に食べた辛いラーメンが良くなかったようだ。
夫に
「大丈夫か?」
と聞かれた。
「今日は水分だけ摂って過ごそうと思ってる」
そして私は、コソコソと桃を二個剥いて、
「美味しいなあ」
と歓声を上げるのであった。

この記事を読み返し、

「伯母は切りながら、半端に残った部分を更に切ってその欠片を食べていた。幼心に申し訳ないと思いつつ、その美味しさに独り占めしていた私。」

「そんな私も、もうずっと前から伯母と同じことをしている。大人になるとはこういうことかもしれない。」

なんて、よく書けるわな( ̄▽ ̄;)。

ささみがさっきから、そんな私をじっと見ているのが若干気になる・・・(笑)。


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