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嫁様異聞

娘が帰ると静かになった。ヤレヤレ・・・となる。

猫たちも、接待を終えそれぞれ過ごしている。
ささみは娘のことが大好きで、来ればトトトト・・・と出てきて体を擦り付け甘える。
甘えるが膝に乗ったり抱っこされたりではなく、
「ささみが幼い子をあやして、遊んでやっている」
という感じになる。

帰る頃になると引き留めるように、コツンと頭を擦り付けてくる。
間を計り、娘が無事に帰れる時間調整をしているかのようだ。

娘は帰宅すれば必ず連絡を寄こすので、片付けて横になってもまだ寝られない。

そうだ、とYちゃんに改めて連絡し、
「Sさんとも仲良くやってるようだし、面白い話も聞いたし、色々とお騒がせしました」
と告げた。

それから少し経ったある休日。

「おかあさん、今からお邪魔していいですか?」
とYちゃんから連絡が来た。

丁度そうめんを茹でていたので、振舞おうと思った。ウチのそうめんのツユは特別美味しいものなのである。

「ちょっとお聞きしたいことがあるんです」
と改まった感じだった。なんだろうと緊張する。

間もなく夫婦が現れ、手土産のシュークリームを渡される。

「アンタたち、ご飯まだでしょ? そうめん食べて行かない?」
と言うと二人とも大きくうなずいた。いつもの調子である。

食べているのに失礼かと思ったが、
「聞きたいことって何?」
と言ってみる。

Yちゃんが
「この前Mちゃんが来たとき、面白い話を聞いたって言うので・・・」

えっ! あ、シマッタ・・・と思った。

「いえ、あのその、いや、別にどうという事もないけど、二人とも楽しくやっているそうよ」
と誤魔化すが、Yちゃんは期待した目で私を見るのだ。

「Sさん、どうかしたんですか?」
と畳みかけてくる。

「そうよねぇ、アンタたちにしたら、Sさんは年上であっても義弟だもんねぇ」

で、アイスを持って走る話をすると、二人で吹いていた。

「個人的に話した事ってないでしょ? ママのお葬式の時とかも」
「してないです、お喋りなひとではないですよね」
「そうだよね、だからアイス持って走る姿を想像するとおかしくてね」
「確かに、想像つきません」

笑っている。

息子は義妹のSちゃんから
「おにいさま」
なんてふざけて呼ばれ、草刈り機の使い方まで指南されたりしている。

Yちゃんの妹さんも新婚だが、息子に
「アンタSちゃん(義妹)の旦那さんと会った時、親しく話したりするの?」

年も近いし、地元も同じだし、男同士だし何かありそうだが
「別に特別な話はしないよ」
「やっぱりか、Yちゃんは義理の弟さんとはどうなのよ」
「私もしませんよ」
「なんて呼んでるの?」
「え、なんだろう・・・呼んだことないです。Sには〇とか、〇くんとか呼びなさいよって言われるんですが・・・」

この夫婦はグイグイ行くタイプではないが、義理のきょうだいとはそんなものだろうか。私だけがヘラヘラしているような気もする。

「Sさんにも意外な面があるんですねぇ」
と笑うYちゃんだが、いくら私でも
「半パンツ、半ケツで・・・」
とは言えないのであった。

それにしても面白がるYちゃんよ。
私とツボが似ているのだと嬉しがる姑であった。


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